千景は部屋の中を見回しながら、静かに探索を始めた。足元のゴミやがらくたを、時折蹴り飛ばしつつ進んでいく。家具はすでにすべて運び出されており、もしもブレスレットが家具の中に入っていたのなら、とっくに持ち去られているはずだった。でも、もし本当にそこにあったのなら、それはそもそも安全とは言えなかった。若子の両親が蘭に盗まれることを心配していたのなら、もっとずっと見つかりにくい場所に隠していたはずだ。千景は壁をコンコンと指で叩きながら、何か手がかりを探す。「冴島さん、本当にブレスレットがあったとして......父さんと母さんが家に隠したと思う?」若子の問いかけに、千景は少しも迷わず答えた。「もしそれが本当に高価なものなら、他人には預けないはずだ。家の中に適当に置くのも危ないし、君の叔母さんが盗んで博打に使うのを恐れてたなら、なおさら慎重になる。だから......きっとどこか、誰にも気づかれないような場所に隠したんだと思う。君の両親って、そういう慎重な人だったんじゃないか?」「うん......そうだね」若子は両親の顔を思い出し、鼻の奥がつんとした。「ふたりとも、すごく真面目で、慎重で......何に対しても全力だった。仕事も生活も、大切にしてた。でも、どうして......神様はあんな仕打ちを......」俯いた若子のもとに、千景が歩み寄ってくる足音が聞こえた。両手のひらは埃まみれ。彼は彼女の前でしゃがみこみ、見上げながら言った。「君の両親は、きっと天国から、君のこと見守ってるよ」「そうだといいな。もし天国があるなら......行けてるといいな」若子はそうつぶやいて、静かに窓の外を見つめた。千景は立ち上がると、再び部屋の中を探し始めた。若子はそっと息子を抱きしめ、頬にやさしくキスを落とす。「暁......おじいちゃんとおばあちゃんも、きっと空の上で、君のことを見守ってくれてるよ」「おじいちゃん、おばあちゃん!」小さな声で、子どもがはっきりと呼んだ。若子は驚きとともに、思わず微笑んだ。「暁」幼い声が、胸の痛みをすっと和らげてくれた気がした。「そう、ふたりは暁の大切なおじいちゃんとおばあちゃん。ちゃんと覚えててね」暁の目はつぶらで澄んでいて、まるで黒くて小さな葡萄のようだった。その純粋な輝きに、若子は思
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