実際、彼女が嫌っているのだ。特に朝、目を覚ました瞬間――彼の大きな腕に包まれ、その体から漂う淡い匂いを感じたとき、自然と結婚していたあの頃のことを思い出してしまう。あの頃がどれほど幸せだったかを思い出すたびに、今の自分がどれだけ怒りを抱いているかを思い知らされる。全てを掌握しているのは、いつだって胤道だ。全てを終わらせたのも彼自身なのに、こんなやり方で彼女を侮辱するなんて。ところが、胤道はまったく怒りもせず、さっさとベッドから降りた。やっとこれで一息つけるかと思った瞬間、彼が突然彼女の掛け布団を捲り上げ、何の前触れもなく服を脱がせ始めた。突然の冷気に襲われ、静華は思わず悲鳴を上げる。必死で胸元を守りながら叫んだ。「何をするつもりなの!?」彼女はこんな状態なのに、まだ手を出すつもりなのか?また肋骨を折らないと気が済まないのか?「やめて!お願いだからやめて!触らないで!」静華の顔は真っ青になり、無理な動きで痛みが走り、目には涙が浮かんだ。胤道は彼女が痛みに震える様子を見て、すぐに両手を押さえつけた。「何を騒いでる!こんな状態で暴れるな!誰がお前を触るか!体を拭いてやるだけだ!」体を拭く――?静華はほとんど裸同然だ。見えなくても、自分の姿がどんな状態かはわかる。羞恥に頬が真っ赤に染まる。「いらない!体を拭くなら専用の介護士がいるでしょ!それが無理でも、看護師を呼べばいい!あなたに頼むなんて絶対にイヤ!」「今さら誰が介護士を呼べるって言うんだ?看護師だって暇じゃないんだぞ」胤道は不満げに言い返した。本当は、誰にも静華の体を見せたくなかった。たとえ女であっても。「こっちだって好きでやってるんじゃない。俺の手は数十億円の契約を交わすためのもので、お前の世話をするためのものじゃない。それに、お前の体なんて――見たことも触ったこともない部分なんてもうないだろ?」静華の唇が震えた。何も言い返せず、ただ屈辱に顔を背けた。胤道はタオルを取り、慎重に静華の体を拭き始めた。その間、静華は神経を張り詰めていたが、終わった直後すぐに布団をかぶり、ようやく安堵の吐息を漏らす。安堵したのは静華だけではない。胤道も、同じだった。彼には理解できなかった。干からびたような体な
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