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第69話

Author: 連衣の水調
連絡が取れないと分かった夜、静華は夕食を取る気にもなれず、そのままベッドに横になった。

どれほど時間が経ったのか分からない。

意識が朦朧とする中、ベッドの縁がわずかに沈んだ感覚に気づいた。

「誰……?」

目を見開き、無意識で手を伸ばすと、骨ばった大きな手に触れた。

次の瞬間、その手ががっちりと彼女の手を握り返した。

相手の声が嘲るように響く。

「森、お前ってそんなに欲求不満か?ただ隣に座っただけで、すぐに擦り寄ってきやがって」

静華は一瞬呆けたが、すぐに手を引っ込めた。

驚いた顔で声を漏らす。

「……え……野崎?なんでここに?」

「なんでって?」

胤道は眉をひそめ、手を伸ばして彼女の顎を乱暴に掴んだ。

身体をかがめ、危うい光を宿した瞳で睨みつけてくる。

「この別荘に、俺以外の誰が入れる?……まさかお前、俺に隠れて男でも引き入れたんじゃないだろうな?」

静華は顔をしかめて、痛みに耐えながら言った。

「望月と一緒にいるんじゃなかったの?どうして急に戻ってきたの?」

彼女は、今夜に胤道が来るなんて、夢にも思っていなかった。

しかも――

「……お酒、飲んだでしょ」

彼の体からは強いアルコールの匂いが漂っていた。

それが彼女の嗅覚を鈍らせ、誰が隣に来たのか分からなかった。

だから、手を伸ばして確かめようとしたのだ。

「酒でも飲まなきゃ、お前への嫌悪感なんて抑えきれないよ」

胤道は冷たく鼻で笑う。

そしてスーツの上着を脱ぎながら言った。

「さっさと済ませて、りんのところに戻る」

彼が覆いかぶさってくる。

静華の指先が震え、反射的に叫んだ。

「やめて!しないで!」

胤道の身体がピタリと止まった。

顔が見えないのに、張り詰めた空気が彼の怒気を伝えてくる。

「口ではやめてって言いながら、電話では来てって……欲しがりながら拒むってか?お前のその駆け引き、マジで吐き気がする」

「私は、付き合って欲しかったわけじゃない」

静華は顔を真っ白にして、それでも落ち着いた声で言った。

「ただ、いつになったら母を帰国させてくれるのか……それを聞きたかっただけ」

その一言に、胤道の瞳が一気に陰った。

興が冷めた。彼は気だるげにベッドの縁に座り、タバコに火をつけた。

吐き出された煙は、部屋にこもった空気と混ざり合い、静華の咳を誘
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