その声が響いた瞬間、病室の中にいた全員の視線が一斉にドアの方へ向いた。そこにいたのは、ギプスで固定された足を椅子に乗せ、車椅子に腰かけた聖人だった。 髪は以前よりも白くなり、顔には深く刻まれた皺がいくつも増えていた。 その目には、後悔と罪の意識が宿っていた。 じっと、佳奈のことを見つめていた。結翔が真っ先に彼の前に立ちはだかった。「佳奈には……あんたみたいな父親はいない。自分の私生児の面倒でも見てろ」実の息子からの厳しい拒絶にも、聖人は怒ることなく、ただ、低い声で懇願した。「ただ……佳奈の顔が見たいだけだ。彼女が俺を認めるかどうかは、どうでもいい。ほんの少しでいい、姿を見せてほしい……」「何だよ、まだ生きてるかどうか見に来たのか?美桜が何をしたか分かってるのか? 佳奈が少しでも気を抜いてたら、今ごろ母子ともにサメの餌になってたんだぞ!」「結翔、お父さんが悪かった。まさか美桜が、そこまでのことをするなんて…… 俺の目が節穴だった。だから、お願いだ。せめて、謝らせてくれ……」その言葉に、病室の後ろから冷たい声が響いた。「必要ないです。私たちの間に、話すことなんてありません。遠山さん、覚えておいてください。私の父は、清司ただ一人です。勝手に名乗らないでください」佳奈の冷たく、誇り高い表情を見た聖人は、そこに若き日の美智子の面影を重ねた。 その姿に、ますます胸を痛めながら言った。「佳奈……ごめん。俺の全財産を君に渡す。それを結婚の持参金にしてくれ。憎まれても構わない、償わせてくれ……」その瞬間、智哉が佳奈をぐっと腕の中に抱き寄せた。彼の目には怒りの色が宿っていた。「遠山叔父さん、もし佳奈が美桜に焼き殺されてたら、 その持参金で命が戻るとでも思ってるんですか?」「彼女は、あの船の上で、手足を縛られ、暴力を受け、火に包まれそうになったんですよ。子どもを身ごもっている状態で。あなたもその引き金を引いた一人だ。『すまない』の一言で済ませるつもりですか?もしあなたが手を貸していなければ、美桜が脱獄することもなかった。 佳奈がこんな目に遭うことも、あの子を失いかけることもなかった。 この責任……逃がしません。誰であろうと」聖人は、泣きながら智哉の腕を取った。「智哉
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