Semua Bab ザ・ラストゲーム・オブ・ 辻女ヴァンパイアーズ: Bab 91 - Bab 100

129 Bab

13-4.レイカ、女バスな人んちを泊まり歩く

 いたたたたた。お腹こわした。ミワちゃん特製雑草スムージー飲み過ぎちゃった。あれ、ミワちゃんの布団、もぬけの殻。そーいえば、もぬけって何かな、セミかなんかのこと? 〈もぬけとは、脱皮した皮をいう。また、魂の抜け去った身体や死骸のたとえにも……〉 って、ウチまた何言ってんの? 今まさに急行が到着しそうって時に。えっとー、どっちですかね。ん? 先の廊下誰か横切ったよーな。ミワちゃん? いやいや、それどころじゃない。このままじゃ急行乗り損ねちゃうよ。 やっと見つけた。お便所らしきところ。なにここ。これがお便所なの? そっか、こういうの雪隠っていうんだよね。〈古来雪隠とは〉 って、もう。今よくない? 蘊蓄。 間に合った。よかったー。水が冷たいね。ひんやりする。井戸水なんだろーな。格子窓の外にヤツデ。こういう大きめの葉っぱに、上から血がボタボタボタって滴るシーン、よくある。カメラが上にゆっくり移動すると屋根の上に毛むくじゃらの怪物が和服の美人を抱えてて、その白い首筋から血がーーーー。怖いねー。ぞくぞくするねー。「ごきげんよう」 ヒッーーーーーーーッヒ。大丈夫だった。出したばっかだから。なんとかこらえた。で、だ・れ・な・の、ウチに今声かけたのは? おばけ? ゆーれー?「中村先生のお部屋はどちらでしょうか?」 ヒッーーーーーーーッヒ。 ごめんなさい、もうしません。他のもの食べれなくなるほど、お腹いっぱいスムージー飲んだりしませんから。どうか、どうか、おゆるしください。「あたし、迷っちゃって。ずっと前に部屋に来るように言われたのに」 あれ、よく見ると足がある。青洲女学館のセーラー服着てるし、ゆーれーじゃない。この制服、ママがいたころの青洲女学校時代のだ。もう作ってないはずだから結構レアなやつ。でもなんで? てか、すごくきれいな人。見惚れるってこんな感じ?「どうしても中村先生のお部屋に行けなくって、あたし方向音痴だから」「あ、そうなの?」「あなた、ご存じ?」「えっと、多分、その廊下を右に行っ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-21
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13-5.レイカ、女バスな人んちを泊まり歩く

  帰りにミワちゃんから渡された手提げ袋の中身。麦茶のポット3本分のスムージー。冷凍庫で保存してね、飲む分だけ解凍することって言われた。一本は帰ってきて全部飲んじゃったけど、2本は冷凍庫にしまってある。それから、ミッフィーの封筒に入ったミワちゃんからの手紙。「レイカのママからの預かりものです。どうか、ミワを許してください」 ハンカチにくるまれてたのは、ママのガラケー。遺品の中に見つからなかったやつ。このガラケーから送信されたママからの音声メッセージはママが死んで何日か後に届いた。例の、「レイカへ。ニーニーのことはよろしくお願いします」 ってやつ。位置調べたらN市からの送信で、その時ウチはまだN市にいたから、ママが天国に行く途中で会いに来てくれたのかなって。 もう一度、ママのガラケーの送信済みメッセージを聞いてみた。そしたら覚えていたのと全然違った。「レイカ、次の言葉をよく聞いてね。 ママのレイカは、とってもいい子。 ニーニーのことを思い出しなさい。 すぐに辻沢に戻って、ミワさんに会いなさい」 一語一語を区切るようなママの言葉。そうなんだ。このメッセージを聞いて、ウチはそれまで霧に覆われたようだった頭の中が晴れだして、記憶のカナタにあったものが少しずつ呼び戻されて来た。その時、最初に女バスの仲間たちのこと思い出したのはうれしかったな。で、今やっと思い出したのが、ママはウチに大事なこと言う時いつもこの言葉を使ってたこと。「ママのレイカは、とってもいい子」 それを聞くと、ウチはいい子にしなきゃ、ママの言いつけ守らなきゃってなった。 ガラケーの中には、もう一つ、下書きのメッセージが残ってた。作成日付はママの死んだ日になってる。「レイカへ。時間がありません。もうすぐママはあの人たちに殺されるでしょう。レイカにお願いがあります。かわいそうな女の子たちを助けてあげてください。レイカなら、きっとできるはず。なぜならレイカは、宮木野と志野婦二人の血を引く、辻沢最強の、ヴァンパイアだからーーーーー雑音ーーーーーーピー」 何を言っちゃってるの? ママ。
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13-6.レイカ、女バスな人んちを泊まり歩く

 ミワちゃんとは連絡がとれなくなっちゃった。ナナミに電話したら、うちおいでって。ありがたい。聞きたいことが山ほどあるし。とりあえず、PKし(パンツ変え)て、スムージー一本持ってナナミんちへ。 ナナミんちは山椒農家。山間の山椒畑の道を歩いてたら、木ノ芽のいい香りがしてて、山椒の実がなってていい匂い。だめだね。ほんわかしちゃって、足が前に進まないっての。もう、ここでいいや。ナナミんちなんて行かなくて、ここで野宿しようなんて、フツーは思わないでしょうけど。決まり、今日はここで野宿。「レイカ。何してんだ」「あ。ナナミ。こんちわ」 ナナミのダッドキャップ姿、似合いスギ。「もう夜だし。遅いから来てみりゃ、案のジョーだよ。いいから、車に乗れ」 かっこいーね、この農作業用軽トラ。運転席に屋根がない。「山椒で酔っぱらいやがって。山椒の木、抱っこしてて気持ちいかったか?」「うん、とっても」「刺、痛くなかった?」「全然」 御邪魔しまーす。ナナミんち藁ぶき屋根ですっごい農家って感じするね。「おー、あんた、辻王のところの」はい、レイカさんです。ナナミのおにーさんですよね。ママのお葬式でお見かけしましたかも。全然覚えてませんが、その節はどーも。今晩はお世話になりますのでー。「あんたのおかーさんはホンに美人だった。惜しい人をなくしたよ。お、ちょっと目みせてみ」 まーた、ママの話ですか?「なるほど。大変だね、あんたも」 なんなの? ったく、男どもはどいつもこいつも。「ウチの部屋こっち」 古い日本家屋の匂いする。いいな、こういう家って。わー囲炉裏だー。周り鏡いっぱい置いてある。そういえばスリコギセットもあっちこっちに。よっこらしょ。畳なんて久しぶりー。日本人でよかった感。そっだ、これ冷蔵庫に入れといてもらえる?「これ、ミワの」「そー」 スムージー。これないともうウチ、生きてらんない。それはおーげさだね。「しかし、こんなに。ミワ、仕上げ間に合わなかったのか」 家じゅうが山椒の匂いって、ここは極楽浄土か?
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13-7.レイカ、女バスな人んちを泊まり歩く

 ナナミが言うには、宮木野と与一の二人のヴァンパイアは戦国時代の終わりに辻沢に突然現れたんだって。ふーん。「与一って誰?」「言い伝えの宮木野と志野婦が双子ってのは真実なんだけど、志野婦の本当の名前は与一といって、男なんだ。二人は辻沢の人たちと不襲の契約を交わし、その証に自分たちの弱点を教えた。それが、山椒と過ぎ越しの唄」なんか聞いたことある歌の題名。「辻沢の人は、スギコギの唄って言ってるな」 パパの唄だ。「山椒の木にはヴァンパイアが寄り付かないっていう誤伝が広まって、辻沢は山椒の特産地になったわけ」 逆っしょ、寄っていきますよ、ぐいぐい。「まあ、和むからいいんだよ」 なるほどね。で、ナナミはなんでそんなこと知ってるかっていうと、「うちもヴァンパイアの家系。屋号は五カ辻。ウチはヴァンパイアじゃないけどね」 六辻家。辻の字のつく屋号の家。うちの辻王、ミワちゃんとこの辻一、町長のとこの辻まん、ナナミのとこの五カ辻、あとロ乃辻と棒辻っていうのがあって、それらが二人の血筋の証し。つまりヴァンパイアの家系ってこと。「思い出したか?」「うん。昨日やっと」「まったく。ママハイ仕込みは」「ほっとけや」「六辻家の中でも、レイカのところにはセーヘキがあって」 セーヘキ?「辻沢のヴァンパイアの間では特殊な性質のことをセーヘキっていう」「ひょっとして、それって、ザ・デイ・ウォーカー?」「何だそれ」「太陽の下でも平気な吸血鬼のことだよ。『ブレイド』のウイズリー・スナイプスがそうなんだ。弱点なしの最強の吸血鬼」「何? 漫画の話? レイカ、オタクだったの?」「まさか」 ちがうよ。あはは。「今ちょっと目の色が変わってたよ。きもかった」 やばい。女バスでオタクばれるの、致命傷(冷汗)。「ま、いいや。それが辻王のセーヘキ。あんたの家のだよ」 よっしゃ! ザ・デイ・ウォーカー、レイカ! って喜んでいいものなのかどーか。「ナナミのトコロは、セーヘキないの?」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-24
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13-8.レイカ、女バスな人んちを泊まり歩く

「少し飲むだけで止めてくれるってこと?」「そう。二口、三口で止める。レイカのママがお兄さんの餌を続けられたってのも同じ理由だと思うよ」 餌って? ミワちゃんもそんなこと言ってたけど。(「そう。おじーちゃんが、『乳なぞ餌がやればよい』って」)「宮木野と与一が辻沢村の人たちと交わした契約は、人を襲わない代りに眠りの邪魔はしてくれるなだった」(〈これで、ミッションレベル13をクリアです。次はいよいよ、妓鬼討伐ステージです。スレイヤー!〉) スレイヤーって、マジ契約違反。「でも、生きて行く上でどうしても血が必要なのがヴァンパイア」 ウチは、今のところ血は必要なさそうだけど。のど乾いたな。血の話してるからかな?「双子が生まれたら、片方だけがヴァンパイアなのは思い出した?」 えっとー。「なんで、片方だけなんだと思う?」〈ファイナルアンサー?〉 黙ってろよ、テメーは。「わかんない」「餌になるんだ、片方が。今なら余裕があるから一族の誰かが餌になれるけど、昔は食うものもままならなかったから産み落とされてすぐに捨てられたり放置されることが多かった。だからヴァンパイアの兄弟をヴァンパイアでない姉妹や兄弟が餌となって支える」「最低保障ってやつ?」〈最低保証とは人間が基本的に生活してゆくべき程度を保証する行政制度を言い……〉 うっさいよ。声出してしゃべんな。「レイカ。そいつ黙らせてくれない? さっきから」「え?」 ずっと声出てた? ナナミ、そんなに睨まなくても。「ごめん。なんかウチもコントロールできなくて」「そいつは、面倒なもんだ」 あ、作左衛門さん。こんばんはー(小声)。 ずりずり、さあドーゾお隣へ(無声)。 お、すまないね(無声)。「なりたてのヴァンパイアは、誰もがそーいうのに付きまとわれてな。オレも25でヴァンパイアになってしばらくそいつに苦しめられたよ。周りの者から、若造がじじーのようなことを言うなって言われてな」「なんでこんなのが
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-25
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13-9.レイカ、女バスな人んちを泊まり歩く

 山椒畑の外までナナミに送ってもらった。結局スムージー飲まなかった。帰りしなナナミに冷蔵庫からスムージーを出してもらった時、「それ大事に飲め、レイカの命綱だから」 って言うから、「ミワちゃんのスムージーが?」 って言ったら、「このママハイ! お前、今それ以外口に出来ないの気付いてないだろ」 そういわれて見れば。「辻沢のヴァンパイアはヴァンパイア因子をもって生れて来るけれど、生まれた時は普通の赤ちゃんだ。でも、成長途中で他人の血を一定量摂取すると因子が発現してヴァンパイアになるっていわれている。実はな、それはミワの母乳だ。ミワはずっと前からレイカに母乳を飲ませて、少しずつヴァンパイアに仕上げて行った。レイカの場合は血の代わりにミワの母乳を使ったってわけ。だからお前にはそれが必要なんだよ」(「お乳って何からできてるか知ってる?」)(「え? しんない」)(「血だよ。血から必要な成分だけ抽出してニューボーに貯めとくんだって」)「じゃあ、ミワちゃんがくれた、ジュースの数々は」「そういうこと」「でも、なんでミワちゃんはウチをヴァンパイアにしようとしたんだろ?」「さあな。ウチが聞いてるのは、ミワはレイカのママに、レイカのことをよろしくって言われてたってこと」 なんで何にも言ってくれなかったの? ミワちゃん。非道いよ。 お日様がまぶしい。って、ちょっと待って痛いよ、これは。ひりひりすんだけど、日光。ウチ、ザ・デイ・ウォーカーじゃなかったの? 大じょーぶだよね、ウチ燃え出したりしないよね。三宅酒店の角あたりでボワッとかって。  日陰選んで何とか家に帰ってきましたよ。オツカレサマ。あ、前園のオバサンだ。真っ赤なオープンカーでお出かけですか? おはよーございます。いいお天気でよかったですねーて言ったら、あら、今日は曇りよ。とかって、やっぱ、マズイっしょ。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-26
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14.ヒビキはプロジェクトの進捗を確認する

 例の仕上がり具合が気になるからセンプクさんに連絡取ろうと思ったけど通じない。スオウさんに連絡入れたら、うちおいでってことになった。 で、こんにちは。「いらっしゃい。あがって」「バイパスからずっと山椒畑の中を通って来たけど、全部スオウさんとこの土地でしょ」「そうだよ。昔はここから名曳川までうちの土地だったらしいけど」「すごいね。さすが大地主だね」「いまはもう没落しちゃってね」「そんなことないでしょ。これだけ土地あれば」「いやいや、ほとんど借金の担保になってるから」 たしか、スオウさんのご両親、スオウさんが中学生の時亡くなったんだったな。苦労したんだろうな。「そう言えば、この間ココロが来てくれたよ」「みんなのところ回ってるみたいね。スオウさん返事した?」「しなかった。襲うでしょ」「そんなことないよ。ココロなんだよ」 この家、築何年ぐらいたってるのかな。年期入ってるね、このブットい柱。庄屋様のお屋敷って感じ。おー畳の部屋だ。あれ? 広縁で浴衣着てくつろいでるのセンプクさんじゃない。どうしてここに?「ちょっと家であって逃げてきてるんだ」「やっほー、カリーン」 あい変わらずだな。とりあえずスオウさんと話そうか。どうやって切り出そう。「あー、レイカはあとちょっとだけど、使えないことはないよ。それ聞きに来たんでしょ」 この人たち勘働きがいいんだよね。昔からそう。丸々見透かされてる感じがして居心地悪かったんだよね、女バスの頃は。「レイカは知ってるの? 自分がその」「ヴァンパイアってこと? 知ってるよ。いろいろ思い出したみたい」「そうなんだ。で、どんな感じ?」「昨日の感じだと、9割出来かな。あと一押しってとこ」「確認する方法はあるの?」「一番簡単なのは血の匂いを嗅がせることかな。すぐ本性現すから、その時の鏡の映り具合を見て。まったく見えなくなれば完成」 本性現すって、それってこっちの命が危ないってことじゃないの?「セーブできるの、あいつ?
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15-1.レイカはメンバにヒビキと会いに行く

 御仕度中。(ヒビキ)カリンと(ユサ)セイラから呼び出されたから。体育館裏に。じゃなくて、モールの駐車場に来てって。よかったよ、ヴァンパイアでも鏡映るって。本性現した時だけ映んなくなるんだって。〈保護色のごときものか。肉食獣が獲物を狙った時に対象の視界から消えてなくなるような〉あー、うっさい。あんた少し黙ってくんない? トリマ、メイクできてよかった。でも、ネイルだけはちょっと困ってる。なっが、この爪。尖ってるし。これじゃ、せっかく買った新製品、キラキラ黒曜石ブラックもすぐなくなっちゃうね。困るな。ヴァンパイア用のネイルって売ってんのかな。今何時? あー、いよいよこのスマフォだめだね。ガラケー、ガラケー。 モール遠かった。カリンの紫キャベツは。あった。タンクトップの肩が見えているのはセイラ。ゴッ、ゴゴッ。来たよ。セイラ驚かしちゃった? ゴメンゴメン。ウイィ。車の窓、もちっと開けてくれないと話しづらい。「レイカ、ウチら友だちだよね」なに! そぃう展開?「ウチらのこと、襲わないでよ」何だ、そぃうことか。「襲うわけないじゃん」後ろ、失礼します。あれ? バスケのボールがゴロンって。もっふもふのシートカバーは? 「血だらけだったから、捨てた」そ、なんだ。カリンがバックミラーで何かを探すようにしてから、こっち向いて、「大丈夫なのかな」こっち見てたセイラが、わざわざバックミラーをのぞいてからまたこっち見て、「うーん。わかんない」なに? このアウェー感。「カリンたち、いつから気付いてたの?」「レイカがヴァンパイアってこと?」「『R』ゲットした日あたりかな」そういえば「この人たち」とかって言ってた。「でもこの間はまだ鏡に映ってた」「じゃあ、青墓の杜でカレー☆パンマン被せたのは?」「映んないかもって」「あの時は助かった。カーミラ・亜種一撃だった」「そうそう」そうそう、じゃないしょ。「レイカ。ヴァンパイアになるってどんな気
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-28
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15-2.レイカはメンバにヒビキと会いに行く

 そのすぐが来たみたい。 駐車場の街灯の下で、バスケのユニフォーム姿の女の子が何かを追いかけてる。シオネだよね、アレ。「来たよ。行こう」「うん。セイラが懐中電灯持つね。ゴマスリ、黒ごまでお願い」「レイカもおいで。うしろのボール持ってきて」 三人で街灯のところへ。 シオネのユニホーム芝生だらけだ。どんだけ野山を駆け回ってるんだろ。さすが野生児シオネだよ。  シオネが追いかけてたのリスだった。やたらすばしっこくて、今のシオネには捕まえられそうでない。「シオネは、相変わらずココロザシが高いよ」セイラの声、震えてる。「動作鈍くなってるっていうのに、高い目標に挑むんだ」セイラが、タンクトップの肩紐をずらして、シオネに近付いてゆく。「シオネ」セイラが呼ぶと、それまでリスしか眼中にないようだったシオネが、おもむろに振り向いてこちらに近づいてきた。そしてセイラの前まで来ると立ち止まった。シオネの髪の毛、パッサパサ。「セイラ。シオネだぜ。オレたち友だちだよな」「うん。そうだよ」シオネが少し膝を曲げてセイラの肩に頭を傾ける。役場の駐車場を思い出したよ。ん? 何してんの? カリン。スリコギ構えて。セイラが、ウチにコイコイって。近付くと、シオネから体育館の匂いした。お日様が窓から射しこんで体育館の床を温めたときのほのぼのとした匂い。シオネが目をつむってるの、セイラの首筋に牙をくいこませてるの、音をたてて血を啜ってるの。全部が一気に分かった。セイラ痛くない?「シオネっぽいとこ見てあげてくれる? そのボール、セイラの後ろから頭越しに投げてみて」言われた通りにボール投げた。それをシオネが両手を上げて受けたからびっくりした。うお! すごい反射神経。さすが、シオネだよ。「すごいでしょ。この体勢で、しかも両目閉じたまんまなんだよ」うちは、両手をあげてボールをつかんだシオネの横に立ってみた。シオネの腕の筋肉はホントに昔のまんま。男子とまではいかないけれど、強そうな張りのある筋肉。こんなとこにも芝生ついてる。脇の下までって、ヘッドスライ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-29
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15-3.レイカはメンバにヒビキと会いに行く

 ウチらは二人を残して紫キャベツに戻って待ってた。しばらくしてセイラがシオネを置いて戻ってきた。 「ウチらね、こうやってシオネやココロに血をあげてるの」 そうだったんだ。 「怖くないの?」 セイラの首、血がついてるよ。 「友だちだもん。それに、ネズミやカエルとか襲ったりしないで、少しは人間らしい生活して欲しいもん。……死んじゃってるのに、可笑しいよね」 セイラ泣き笑いしてる。オカシクないよ。それと、セイラの首、血がついてる。 駐車場にシオネのユニホーム姿はもうなかった。 「シオネ、どこに行ったの?」 「戻るところ? シオネには戻るところがないの、家が火事になったから」 ウチ、それ知らなかった。 「空き家とか、森の中の暗いところとか探して隠れてる。でも、どうにもならない時は土に潜ってるみたい」 「シオネの髪の毛、パサパサだったのって」 「あ、あれは、もともとだよ」 「リンスとかしないでいつも洗いっぱなしだったじゃん」 そうだった。試合相手から辻女のトロール人形って言われてた。 「一度、死んじゃうと、その後は何をしても体は変わらないって」 そうなの? 「レイカはどう思った?」 セイラ息が苦しそう。それと首に血がついてる。 「なんか、悲しかった」 セイラは血がついてる。 「それだけ?」 「ウチ、じっと見ていられなかったから」 セイラの血が気になって。 「セイラだってそうだったよ。でも何回も何回も、ミルク、あ、ごめん。セイラたち、これのことミルクタイムって言ってるんだ」 「ココロもシオネも、ウチらにすがってくる感じが、赤ちゃんみたいなんだ」 カリン照れてる。わかるよ、ゾンビの姿してても二人にとってははそうなんだね。それなら二人は、ココロとシオネのおかーさんじゃん。ウチも欲しいな。セイラの血。なーんかあちーな。この車はよ。話題変えよ。 「なんで金髪にしたの?」 「これ? これは、セイラだってすぐわかるように」 「声をかけても、通りすぎちゃうことあるから、どうしたらすぐ気付いて
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-30
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