警備隊長の口から語られたのは、衝撃の事実だった。あの日、確かに何者かに救助を要請されたが、指定された浜辺に向かっても誰もいなかったこと。そして、その救助を求めてきたのは、紫苑ではない、別の女性だったということ……慎也は、心臓を強く掴まれたような衝撃を受けた。何かに突き動かされるように、彼は無意識に懐からスマートフォンを取り出し、画面に映る一葉の写真を警備隊長へと突きつけた。「あんたに救助を頼んだのは……この女か?」警備隊長は、一葉の写真を見るなり、こくと頷いた。「はい、この方です。息を呑むほどの美人でしたから、はっきりと覚えております!」その断言に、慎也は一瞬、思考が停止した。……やがて、彼の口から乾いた笑いが漏れた。どうりで。どうりで、一葉にあの温もりを感じたわけだ。どうりで……どうりで……意識が朦朧とする中で聞いたあの声が、彼女の言葉とあれほど重なって聞こえたわけだ。……まさか、彼女だったとはな!常に氷のように冷え切っていた彼の心に、今、確かな熱が灯る。だが、その温もりに浸る間もなく、自分が紫苑にしてやられていたという事実が、彼の思考を急速に冷却していく。慎也の瞳から温度が消え、ぞっとするほど冷酷な光が宿った。雲都……一葉が病院に駆けつけた時、祖母の紗江子はすでに救急処置室を出て、一般病棟に移されていた。執事の話によれば、紗江子は、言吾と紫苑に子供ができたというニュースを見て、心臓発作を起こしたらしい。一葉は、体の脇で固く拳を握りしめた。私のせいだ。私がいつまでもあいつを断ち切れずにいたから、おばあちゃんがこんなニュースで心を乱し、倒れることになってしまったのだ!私の……私のせい……!自責の念に押しつぶされそうになり、思わず自分の頬を張り飛ばしたくなる衝動に駆られた、その時だった。紗江子が目を覚ました。一葉を誰よりも可愛がり、その心を深く理解している紗江子には、孫娘が何を考えているかなどお見通しだった。一葉の苦しげな目を見ただけで、彼女が発作の原因を自分にあると責めていることをすぐに悟った。確かに、あのニュースを見てかっとなり、あのクズ男をどうしてくれようかと思ったあまりの発作だったが、愛しい孫娘にそんな顔をさせるわけにはいかない。紗江子は何かを思いつくと、か細い手で孫娘の手を握
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