翌朝。目が覚めて一番に、ベッドの下に脱ぎ散らかされた服が視界に飛び込んできて、一瞬にして血の気が引いた。自分の身体の状態は、誤魔化しようがない。昨夜、私から吹っ飛んだものすべてが、一気に戻ってくる。脳裏に蘇る、一部始終の記憶――。いくら酔ってたからって……なんてことをしたの、私……。激しい自己嫌悪で、二日酔いとは関係のない頭痛がする。どうしよう。ほんと、どうしよう。ズキズキと痛む頭を抱え、無意識にきゅうっと身を縮めた時。「……起きた?」背後から気怠げな声をかけられて、ギクッとして硬直した。反応してしまった以上、無視も寝てるフリもできない。「は、はいっ。……おはよう、ございます……」振り返ることもできず、朝の挨拶も尻すぼみになる。「おはよ」氷室さんは、普段と変わらない抑揚の乏しい声で、さらっと返してくれた。ギシッとベッドが軋んで、彼が上体を起こしたのがわかった。彼の動きに合わせて、身体にかかっている布団が持ち上がる。「ひゃっ……」私は彼に背を向けたまま、なにも身に着けていない身体を隠そうとして、さらに小さく身を縮めて……。「今日、何番?」欠伸交じりに問いかけられて、そおっと肩越しに振り返る。そして、上半身裸のまま寝乱れた髪を掻き上げる、壮絶セクシーな彼に心臓が飛び跳ね、勢いよく正面に向き直った。「? 八巻さん?」私の態度が不審だったのか、訝し気な声が続く。「お、同じです。氷室さんと。遅番……」ディスパッチャーの仕事は、二十四時間三百六十五日、四交替のシフト制勤務だ。指導してもらっている立場の私は、よほどのことがない限り、彼と同じシフトで組まれている。「そ」自分で聞いておいて、氷室さんはそれほど関心を持った様子ではない。と言うか、今までもそうだったのに。もしかして、存在自体無視されてたんだろうか……。地味に落ち込む私に構わず、氷室さんはもう一度ベッドを軋ませた。ベッドから降りたのか、先ほどよりも大きく布団が持ち上がって、私はビクッと身体を強張らせる。「八時か……。先、シャワーもらう。俺、一度家に帰るから」そう言いながら、ベッドの足元を通り過ぎ、シャワールームの方にスタスタと歩いていく彼は、ボクサーパンツ一丁という姿。「は、はいっ……」私は頭から布団を被って視界を遮断して、くぐもった声で返した。
Last Updated : 2026-02-02 Read more