「ずるい。一度言ったことは取り消せないんだから、もう否定はなしよ」透子は返した。「彼らが食事するのは彼らの勝手。友達の成功を祝うだけで、前に藤堂さんが言ったこととは何の関係もないわ」親友の言葉を聞き、理恵は眉を上げた。今、翼に連絡しづらいのが残念だ。でなければ直接聞きに行って、透子がどう否定するか見てやるのに。透子から新しいボイスメッセージが届く。「本当に、変な想像はやめて。早く仕事に行きなさい。夜、時間があったら一緒にご飯食べよう」理恵はボイスメッセージを聞き、もちろん遠慮なく、二、三品料理名を挙げて、先に作って待っているよう頼んだ。彼女は携帯を置いて仕事の準備をしようとしたが、ちょうどメッセージが届いた。ちらりと見ると、なんと兄からだった。兄の聡からだ。【透子に、俺が証拠探しを手伝ったって言ったか?】理恵はからかうように文字を打った。【あら、そんなに手柄を立てたいの?私が忘れちゃうとでも思った?】最上階、社長室。聡は携帯を手に取って返信を見た。そのあからさまな揶揄とからかいに、思わず唇を引き結んだ。すぐに電話をかける。妹が出ると、彼はぶっきらぼうな口調で言った。「手柄を立てたいだなんて、何だそれは。あれは元々俺がやったことだ。お前ときたら、俺の手柄を横取りするどころか、透子には俺が悪者のままじゃないか」「私たち、実の兄妹でしょ!手柄を横取りだなんて、せいぜいご飯をご馳走になるくらいじゃない」理恵は足を組んで言った。そして、わざとこう続けた。「透子が私に感謝して、夜、手料理を振る舞ってくれるの。私の大好きなスペアリブと鰻よ」聡は言葉を失った……その食事は、自分に感謝するためのものじゃないのか?「食べてばっかりいると、太って嫁に行けなくなるぞ」聡は言った。「ちぇっ、ひどい言い草。どうせ自分が食べられないからって、やきもち焼いてるだけでしょ」理恵は言い返した。こんな手に負えない妹を相手に、聡はもう電話を切りたくなっていた。だが、からかい終えた相手は、わざとらしく慈悲深げにこう言った。「この妹が、夜、ご飯に連れて行ってあげようか?」「お前がご馳走になるんだろう。招待されるべきなのは俺の方だ」聡は彼女を正した。「ううん、これは透子の手料理よ。当然、お兄ち
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