車は陽光団地まで順調に進んだ。理恵は以前、顔認証を登録していたため、スムーズに入ることができた。それに、彼女はカードキーも、透子の部屋の暗証番号も知っていた。暗証番号を入力してドアを開け、彼女は呼びかけた。「透子」返事はない。リビングに目をやると、誰もいなかった。キッチンへ行き、ベランダを見渡し、それから主寝室のドアのそばへ向かった。鍵はかかっていなかった。理恵はためらわずにドアを開けたが、部屋の中にも人の気配はなかった。透子の布団はきちんと畳まれており、昼寝をした様子は全くない。理恵は立ち止まり、眉をひそめた。透子が行きそうな場所を考えながら、彼女は電話をかけ続けた。外出したとしても、電話に出ないしメッセージも返さないなんて。まさか、スマホの電池が切れた?でも、透子は几帳面な性格だから、バッテリー切れで出かけるはずがない……やはり電話は通じない。理恵は通話を切り、その表情は曇った。女の勘は生まれつき鋭いものだ。理恵は階下へ降り、管理室で防犯カメラを確認しようと考えた。しかし、防犯カメラを確認するのは時間がかかりすぎる。理恵は傍らで待ちながら、ふとあることに気づいた。まさか、蓮司が未練を断ち切れずに、透子を連れ去ったのでは?昨日、旭日テクノロジーで大騒ぎして、警備員に引きずり出されたばかりだ。彼には前歴が多すぎる。そう思うと、彼女はスマホを取り出して蓮司に電話をかけた。しかし、最初の二回は話し中だった。それが、理恵をさらに不安にさせた。ようやく三度目の電話が繋がると、理恵が問いかけるより先に、相手が口を開いた。「何か情報があったのか?」「何の情報?」理恵は戸惑いながら聞き返した。電話の向こうの相手は、彼女の声を聞いて二秒ほど黙った。一方、理恵はその言葉の意味を自分なりに解釈し、問い詰めた。「透子を連れ去ったのはあなたでしょう?だから、私に情報が入ったか聞いたの?!」理恵は怒りに任せて早口で言った。「新井、拉致は犯罪よ!新井家が後ろ盾だからって、何でも許されると思ってるの?!」蓮司は呆れて言った。「昼間から何を取り乱したことを言ってる。拉致などしていない」彼は特効薬を探すためにひっきりなしに電話をかけており、うっかり相手の名前を確認せずに、理恵の電話に出てしまったのだ。この女だ
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