また、いかにも気遣うような顔をしてみせる。結局、すべてはこの男の手のひらの上だ。……書斎では、田島の顔が赤黒く腫れ上がっていた。昨夜はあれだけ飲まされたというのに、気を抜くこともできず、朝一番でここへ来ていた。願乃に会わせてもらえるのを待ち続けていたが、使用人は「まだお休みです」と繰り返すばかり。そうして落ち着かないまま待ち続けた末に現れたのが――あの氷室だった。起きてきたのは九時過ぎ。決して早くはない。どこか気だるげな様子なのに、顔色はやけに艶やかで、まるで何か最先端のケアでも受けたかのようだった。田島は見た目こそ年配だが、実際には彰人とそれほど歳は離れていない。それでも今は縮こまって書斎に立ち尽くしている。時折、そっとハンカチを取り出しては汗を拭う。一方の彰人は何もしていない。ただそこに座り、幼い息子に数字を教えているだけだ。ゆっくりと、焦らず、淡々と――まるで弱火で煮込むように、人をじわじわと追い詰める。最初こそ、田島の胸の内では罵声が渦巻いていた。やがて、せめて話でもできればと思うようになり――最後には、ただ解放してほしいと願うだけになっていた。夕方になっても放置されたまま。丸一日、完全に干されたあとで、ようやく彰人が微かに笑った。「今日はもういい。戻っていいよ。後で願乃には、来ていたと伝えておく」田島は再び汗を拭いながら、慎重に口を開く。「氷室社長……あの、仕事の件ですが……」彰人は穏やかに笑う。「それは願乃の判断に任せるよ。今の俺はメディアには役職もないし、仮に関わるにしても一人じゃどうにもならない。孤立無援ってやつだ……」軽く肩をすくめ、ため息をひとつ。「もうとっくに退いてるからね。会社でも発言力はないし……ここでも、願乃には頭が上がらない」そうして謙遜すればするほど、田島の背中には冷や汗が流れ落ちていく。――理解した。この男は自分を手駒にしようとしている。一日立たせ続けたのは、その試しだ。やり口は昔と変わらない。徹底的に追い詰めて、最後に一言で縛る。だが、選択肢などない。従うか――潰されるか。彰人の復帰はもはや既定路線。彼には使える人間が必要で、その白羽の矢が自分に立っただけだ。田島は表情を整え、ハンカチをしまう仕草
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