少しも感じないなんて、嘘だ。人の心は肉でできている。澄佳も例外ではなかった。ましてや、さっき手にした熱々のトッポギが、灰色に冷え切っていた胸の奥をじんわりと温めてくる。もう以前とは違う。あの出来事を経て、しかも楓人が間に挟まっている以上、翔雅に対してあの頃のような気持ちを抱くことは難しい。だが、穏やかに向き合うことならできる。澄佳がためらっている間に、彼女はすでに男に導かれて車へと乗せられていた。車内は思ったとおり暖かい。乗り込んだ途端、コートを脱ぎたくなるほどで、マフラーもほどいた。澄佳は両手でトッポギの箱を抱えたまま翔雅を見やり、「どうして急に来たの?その怪我で運転して大丈夫なの?」と問う。翔雅は深い目差しを向けて、「心配してくれるのか」と静かに言う。澄佳は俯いて、楊枝でトッポギを突きながら小さく口に運ぶ。答えるつもりはないのが明らかだった。翔雅は慌てず、彼女の手から箱を受け取り、食べ終えたところで一切れ刺して差し出した。澄佳はしばらく見下ろしていたが、結局口に含んだ。食べさせ合う——それは親密さを示す行為。もちろん承知していたが、共に歩むと決めた以上は拒む理由もなく、素直に受け入れ、小さな口で食んだ。味は驚くほど良く、どこで買ったのかとさえ思う。食べながら、二人はぽつりぽつりと会話を重ねる。翔雅が「子どもたちはもう寝たのか」と尋ねれば、澄佳は「ええ、もうとっくに」と答える。彼が来なければ、自分も眠りについていたはずだ。翔雅の視線は、玉のように白い頬に吸い寄せられる。胸の奥がくすぐられるようで、思わず夜の散歩に誘いたくなった。二人だけの時間を……だが澄佳が望む「仲直り」には、恋人同士の甘やかな逢瀬は含まれていない。彼女は小さな声で、「もう遅いし、外は寒いわ。それに怪我もまだ治ってないでしょう。お正月が終わったら、子どもたちも一緒に温泉宿へ行きましょう」と提案する。穏やかな声音、玉のように澄んだ物腰。翔雅は貪るように見つめ、澄佳の落ち着きに強く惹かれる。かつて、二人が若く血気盛んだった頃は、刃を交えるように火花を散らした。その日々も面白かったが、今は年を重ね、子どもたちにも恵まれた。静かで、温和な時間の方がいいのかもしれない。温かなひとときを過ごし、澄佳が「そろそろ帰りたい」と言っ
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