早坂美羽(はやさか みわ)が個室の扉を開けようとしたその瞬間、「初恋の破壊力」について語り合う男たちの声が耳に飛び込んできた。「悠翔、さっき全員話したんだから、次はお前の番な。逃げんなよ?」その名前を聞いたとたん、美羽の手が扉の前で止まった。神崎悠翔(かんざき ゆうと)はしばらく黙っていたが、やがてグラスの酒を一口含み、アルコールの香りをまとった低い声で話し始めた。「俺、心臓の近くにあの子の名前のタトゥーを入れてる。今でも消してない。ライダースには血の跡が残ってる。初めて彼女とヤった時についたもので、ずっと大事にしてる。今付き合ってる子は、あの子の代わりなんだ」その一言一言が、美羽の耳に突き刺さり、心に雷が落ちたような衝撃を与えた。血の気が引き、体中が氷のように冷たくなる。まさか、自分が悠翔の「初恋の代わり」だったなんて……室内は一瞬の静寂の後、男たちの熱狂的な歓声に包まれた。「すげぇな、マジで!」「さすが悠翔!一発でキメるなんて、ほんとロマンチスト!」「そういえば、和泉優奈(いずみ ゆうな)がもうすぐ帰国するって聞いたぞ。もしまだお前のこと忘れてなかったら、すぐにより戻せるんじゃないか?でも今の彼女のこと、どうすんだよ?お前の妹の親友だろ?うまく処理しないと、妹の人間関係めちゃくちゃになるぞ?」悠翔は少し考え込んだが、それ以上何も答えなかった。部屋の中から誰かが出てこようとしたのを見て、美羽は我に返り、真っ青な顔で階段を降りていった。外は土砂降りの雨。美羽は感覚を失ったように、雨の中をただ歩き出した。冷たい雨粒が頬に打ちつけ、流れる涙と混ざり合って頬を伝い落ちていく。ぼんやりとした視界の中、頭の中を巡るのはさっき聞いたあの言葉たち。記憶が次第に蘇ってくる。悠翔は親友の兄で、四つ年上。彼と初めて出会ったのは高校時代、親友と一緒にチンピラに絡まれていた路地裏だった。どうしようもなく追い詰められていたとき、悠翔はバイクに乗って現れ、すらりとした手でヘルメットを外しながら静かに言った。「うちの妹に手出してんの、お前らか?」ヘルメットを外した瞬間に見えたその顔に、美羽の心臓は激しく鼓動を打った。「うちの兄、信じられないくらいイケメンだから」と親友が言っていたのを思い出した。でも、実際に見
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