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九十九の願い事⑰

Auteur: 佐藤紗良
last update Dernière mise à jour: 2025-05-15 20:00:21

「それ以上ツルツルになったら、ゆで卵になっちゃうじゃんか。佐加江君、もっと自信を持ちなって」

「でも……。桐生さん、青藍の好みって知ってます? 僕、なんにも知らなくて」

桐生の子供たちは皆、真っ白な仔狐なのだが、よく見るとずいぶんと性格が違うようだ。そわそわと忙しない子もいれば、それを気にせず桐生が座る椅子の下で眠っている子もいる。桐生の膝にいる仔狐は他の四匹と比べ、ひと回りもふた回りも小さく、生まれて間もないようだった。

「俺も知らないよ。鬼君んち、うちの隣なんだけどね。真面目っていうか純情っていうか……。いつも死神しか訪ねて来ないから、浮いた話も出てきやしない」

「シニガミさんとデキてるんですか?」

「デキてない。仕事のパートナー」

「パートナーいるんだ」

しょぼくれる佐加江に、桐生は棗椰子の実を勧めた。甘くねっとりとしていて、餡子のよう味わいだった。

「ねぇ、佐加江君って天然?」

「天然に気づいてたら、天然じゃないですよ。僕は違います」

「ぷは! 確かに。この子、このあいだ熱があったじゃない? 佐加江君に言われた通り、冷たい川の水で濡らした手拭い首に巻いて、脇の下ひやしたら熱が下がったんだ。うちの子で熱が出たの初めてだったから天狐もうろたえて、俺を探し回ってたってわけ。だからすごいんだよ、佐加江君は」

桐生に褒められ、お面の下の佐加江の頬がポッと熱くなった。

「ーー保育士なんです」

「保育士? 佐加江君、保育園の先生なの?!」

「はい。子供が大好きで、憧れの仕事だったんです」

「憧れの仕事に就けるなんて、すごい! こっちの世界にも保育園できたらいいのにな。そうしたら、天狐とたっくさんデートできる」

ネズの実を食べながら、桐生が懐かしそうに笑っていた。

「俺が村にいた頃にさ、佐加江君と同じ名前のお姉さんが近所にいて、その人もすごく優しい人だったな」

「僕と
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