恒は困った顔で言った。「急に電話してきて、住む場所を探してくれっていう方が無理難題なんだぞ。とりあえず、ここで我慢してくれよ!」「そんなの知ったことじゃない!」遥は歯を食いしばった。「ホテルに泊まれるように手配して。プレジデンシャルスイートがいい!」「いいのか?今のあなたの注目度なら、五つ星ホテルにしないとな。そしたら1泊40万円以上はするぞ。お金はあるのか?」それを言われ、遥は言葉に詰まった。「少し我慢しろよ」恒は言った。「もう清掃業者を手配した。午後には清掃に来てもらえるから、そしたら少しは快適に過ごせるはずだ」そんなふうにあしらわれた遥は恒を睨みつけた。しかし、恒は怯む様子もなく、彼女の肩をポンと叩いて言った。「一時的なものだ。気分転換だと思えよ。どうせこの2日間は何も予定がないんだろう?ちょうどいい休養だと思えばいいじゃないか。それじゃあ、俺は用事があるから、もう行くな」恒は振り返りもせずに出て行った。遥はこの家を見て、その場で怒鳴り散らしたくなった。しかし、美弥がいたので、歯を食いしばって我慢した。美弥は彼女を慰めた。「桜井さん、大丈夫ですよ。あなたはこんなに素晴らしい人なんですから、これはほんの一時的なものです。とりあえず座って休んでください。荷物の整理は私がやりますから」遥は美弥を見て、目を閉じ、優しい口調で言った。「美弥、ありがとう。まさか最後そばに居てくれたのはあなただけだったなんて」美弥は胸が痛んだ。自分の憧れのアイドルがこんな目に遭っているなんて、世の中は不公平だと思った。「桜井さん、彼らがあなたをこんな風に扱うなんて、酷すぎます!私はあなたを信じています。優秀な人は必ず認められますので、きっと立ち直れるはずです!」遥は笑った。「そうだといいんだけど」「きっと出来ますよ!」美弥は腕を振りかざして遥を励ました。「桜井さん、自分を信じてください」しかし、遥には、今、美弥の無謀な言葉に付き合う気力はなかった。彼女は時計を見て言った。「ちょっと出かける用事があるから、先に家で片付けしておいてくれる?」「はい」それから、遥はスーツケースを引いて出て行った。スーツケースの中には、宝石がぎっしり詰まっていた。彼女は二宮家へ向かったのだ。千鶴は最近のコンクールで人気が爆発し、二宮家
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