「松本さんの言うことは気にしなくていい。二人の子供たちのことを考えて。綾、子供たちは父親がいなくても生きていけるが、母親なしでは生きられないんだ」「誠也、私が北条先生を助けたの」誠也は一瞬、言葉を失った。「9年前のあの夜、私があなたと出逢った日北条先生にも会った。私があの時彼を助けていなければ、こんなことにはならなかったかもしれない。誠也、北条先生が打ち明けてくれるまで私はずっと、これはあなたによってもたらされた災難だと思っていた。でも本当は、私があの夜、無知な親切心を働かせたせいで、起こした発端なの......」誠也は充血した目で綾を見つめた。「そんなことはない。要の言うことや、松本さんの言うことは気にするな。綾、お前はお前だ。二人の子供の母親なんだ。戻らなきゃ。子供たちのそばに......」「もう戻れない」綾は首を振り、笑った。「誠也、結婚式は予定通り行われなければならない。北条先生が死んで、計画が成功して初めて、私たちの子供たちは安全になる。分かるでしょ?」誠也の呼吸が速くなった。彼が理解できないはずがない。しかし、綾が危険を冒すのを黙って見ていることなど、彼にどうしてできるだろうか?「誠也、爆発したあの日、あなたが私に聞いたこと、覚えている?」誠也は彼女を見て、胸が締め付けられるような痛みを感じた。「まだ恨んでいるかって?あなたはそう聞いたわね」綾は彼の目を見て、優しく微笑んだ。その目には安堵の色が浮かんでいた。「もう恨んでいない」それを聞いて、誠也の呼吸が止まり、涙がこぼれ落ちた。「時間がもうない。もう行かなきゃ」誠也は首を振った。「綾、頼む、一緒に来てくれ」綾は首を振り、安人を宥めるように優しい声で言った。「誠也、本当は分かってるでしょ?私はもうあなたとは一緒に行けないのよ」誠也は固まった。「誠也、よく聞いて。一度この道を選んだ以上、たとえ這ってでも進まなければならない。あなたのちょっとした判断ミスが、数え切れないほどの仲間の努力を無駄にするかもしれない。松本さんは、私が計画外の存在だと言ってたけど、今となっては、その計画外の存在がいてちょうど良かったのかもしれない」綾は唇を噛み締め、目を伏せてため息をついた。「もし今回、本当に戻れなかったとしても、子供たちは私を誇りに思って
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