就職のために海外から日本に帰国したのだが、日本社会に根強く残る女性と男性の社会的地位の差に以前から疑問を持っていた。海外では、個人の能力や実績が重視され性別や結婚の有無で判断されることは少なかったからだ。そして、この会社の出来事はその疑問をさらに強めるものだった。仲の良い人事部の採用担当者からは、「独身は出世に不利になる」とはっきり言われていたし、他の企業に勤める友人たちに話を聞いても、「日系企業はまだまだ男女の格差が大きい」という答えが返ってくるばかりだった。結婚は個人の自由だ。誰かと人生を共に歩みたいと思う人もいれば、一人で生きていくことを選ぶ人もいる。どちらの生き方も尊重されるべきで、結婚していないことが仕事の評価や昇進に影響を与えるなどあってはならないことだ。しかし、現実は違った。多くの企業で独身者は肩身が狭い。特別仲がいいわけでもない上司に独身と分かると結婚の心配をされる。だからこそ片井さんのような生き方は、多くの人にとって「理解できないもの」「かわいそうなもの」として映ってしまうのだ。私は結婚に特に興味はない。仕事で評価されて出世することが一番の目標だ。評価されるためには実績が必要で働き続けたかった。結婚して、妊娠・出産・子育てをする時間がもったいない。私は自分の人生を、自分のために時間を使いたかった。そんな時にふと思ったのが啓介との結婚だった。啓介も結婚願望がない独身主義者で意気投合し交際に発展した。自身で起業し経営者として忙しい生活を送っている。仕事での成功を収めた今も事業拡大のために精力的に活動する姿はとてもかっこよく自慢の彼氏だ。啓介も仕事が第一で、自分の時間や金銭面など『自由』を求めている。結婚して縛られる生活は嫌らしい。また子どもも好きだがたまに会うのと育てるものは別物だと冷静に捉えており仕事中心の生活をしたいため考えられないらしい。「結婚は恋愛の墓場」という言葉があるように、結婚することで自由や個性が失われパートナーに束縛されるのではないかという恐れがあり、私も同じイメージを持っていた。しかし、片井さんの件で私は初めて「結婚」を自分の人生の選択肢の一つとして真剣に考えるようになったのだ。結婚すれば社会的な信用が得られる。家族を持つことで一人前と認められる。それは、私にとって不本意ながらもキャリアを築く上で有利に働く可能性
Dernière mise à jour : 2025-06-04 Read More