Semua Bab 今さら私を愛しているなんてもう遅い: Bab 11 - Bab 20

未央はただ足を怪我しているだけで、一方の雪乃は下手をすれば命に関わるからだ。だから救急車に乗った後、横になったのは雪乃のほうで、骨折しているであろう未央は座る形になったのだ。しかし、この時未央はまったく意に介していない様子で、彼女は端のほうにもたれかかり、目をつぶって静かにしていて、誰にも構いたくなかった。夫と息子の二人は未央の目の前に座っていた。二人は何か話したいようだったが、未央が全く相手したくない態度なので、気まずい雰囲気が流れていた。後から来た看護師は変な空気に気づいたが、彼女も特に余計なことは考えず、未央に体の調子はどうか尋ねていた。「すみません。足は恐らく骨折しているかと思います。先にご家族に連絡なさってください」失礼にならないように未央は目を開けて看護師に返事をした。「大丈夫です。私一人でなんとかできますから」博人は冷たい目つきになった。「未央、一体何を意地を張ってんだ？」理玖も眉をひそめて彼女の発言には非があるという顔つきをしていた。ママは本当にわがままだ！看護師は不思議そうに「あのう、お知り合い同士ですか？」と尋ねた。博人「俺は彼女の夫です」理玖「僕は息子だよ」看護師は悪気なく「てっきりお二人はあちらにいる女性のご家族かと思ってました」と言った。そう言い終わると、もともと微妙だった空気がさらに変な空気になってしまった。看護師はちらりと横目で雪乃を見て、何か言いたげにしていた。浮気相手ということなのか。雪乃は背中に棘が刺さっているかのように、居心地が悪くなってきた。彼女はもぞもぞと体を動かして起き上がろうとしたが、それを博人に止められた。彼は優しい声で「体調が悪いんだから横になってて、すぐに病院に到着するから」となだめた。雪乃は目を真っ赤にさせて、かなりのショックを受けている様子だった。「だけど、そちらの看護師さんにきちんと説明したくて。彼女が思ってるようなことはなくて、私……けほけほ……」「雪乃さん、何も説明しなくていいよ。パパが言ってたみたいに、心が汚れてる人は何を見たって歪んで見えてるんだ！」理玖は何がなんでも雪乃を守りたいようだ。「ママ、早く雪乃さんのためにも説明してよ。雪乃さんが他人から誤解されちゃってもいいの？」ササッ――看護師はもうこの茶番を見て

博人は長いため息をついたが、口調を和らげた。「分かったから、そんな意地を張るなって。今日のことは俺が間違ってた、謝るよ。今後はお前を絶対に一人放置しっぱなしになんかしないから」彼は口調を柔らかくして、数歩前へ進み、未央の隣に腰をおろした。未央は驚いていた。記憶によれば、博人は今日はじめて自分の非を認めて彼女に謝ってきたのだ。ただ……彼らの未来はもうない。未央は無表情で、まるで何も聞こえなかったかのように、片手でギブスの端を軽く押してマッサージし痛みを和らげようとしてみた。博人はとても虚しく感じていた。綿に一発入れたかのように何の手ごたえも得られなかったからだ。脳裏には昔のことが蘇った。あの頃の未央はいつも彼の傍についていて、その瞳は彼への信頼と愛慕で満たされていた。彼らは一体いつから今のように変わってしまったのだろうか？博人の心臓はドクンと少し乱れた。今すぐ何かしておかないと、大切なものが彼の人生から消えていくような感覚を覚えた。「まだ痛むの？」博人は突然床に膝をつき、驚いた様子の未央に見つめられる中、両手で彼女の足をマッサージしはじめた。この時、彼は彼女の誕生日が終わったら、全ての思いを打ち明けようと決心した。昔彼らの始まりがどうであったかはどうでもいい。これからの未来を共に仲良く過ごしていこうと。彼女が雪乃のことを嫌っているというなら、彼は今後できるだけ雪乃には会わないようにすればいい。未央は瞼を下に向け、自分の前に跪いて真剣な様子でマッサージをする男を見つめた。結婚して7年。彼女が妊娠中、つわりがひどくてご飯もろくに食べられず、睡眠も取れなかった時、出産時の痛みで滝のように冷や汗をかいていた時、その全てにおいて博人から関心を向けられたり世話をしてもらったことなどない。そして今、彼女がここを去る決心をしたとたんに、遅れて彼からの優しさを受けている。なんて皮肉なことだろうか。未央の心は少しずつ、少しずつ冷たくなっていった。しかし、いつの間にか眠気に襲われて、ゆっくりと目を閉じ眠りについた。博人が顔をあげると、未央の穏やかな寝顔が見えた。薄暗い光りが彼女の冷ややかな顔にうっすらとかかり、柔らかい表情に見せてくれた。ただこの瞬間だけが、以前のように大人しく話

個室の中には異常なまでに気まずい空気が漂っていた。当の未央はというと、まるで自分には関係ないといった様子で、静かな水面のように平然と松葉杖をついて、ゆっくりと隅の方へ座った。昔からの慣れで、博人は必ずみんなの中心に座るのだ。それがこの日は……彼は足を止め、少し迷ってから、結局未央の横に腰をおろした。雪乃はそれを見て、顔をいくらか青くさせ、歯ぎしりし唇を噛んで彼の後に続いた。「前から奥さんに一度会ってみたかったんです。でも、博人があなたは人見知りだからって、ずっと会わせてくれなかったんですよ」晴樹は個室の中の気まずさに我慢できず話始めて、静けさを破った。彼がそう言うと、周りも次々に口を揃えた。「そうなんですよ。奥さん、とてもお綺麗な方だったんですね。だから博人のやつ、家にずっと閉じ込めておいたわけだ」 この時、敦が頭をポンポンと叩き、突然口を開いた。「思い出した。なんだか奥さんには見覚えがあるなと思ったら、以前一度会ったことがありますよね」するとその場にいた全員の視線が彼に集中し、博人も敦のほうへ顔を傾け、眉を少しひそめた。そしてすぐ。敦は頭を掻いて説明した。「たぶん2、3年前だな。ある日、博人が夜すごく酔っぱらってしまって、俺もどうしようもなくてさ、誰かに連絡して博人を連れて帰ってもらわないといけなくて。それで奥さんが迎えに来たんだよ」そう言いながら、彼は少し羨ましそうな顔をしていた。「あの時、博人のやつ何が何でも帰ろうとしなくて、奥さんはずっと粘り強く優しく諭してたんだ。水を飲ませたり、顔を拭いてあげたりして、すごく世話してくれてたんだぞ。あの時は俺も羨ましくてしかたなかったな。俺もいつかこんなに優しくて気遣いのある奥さんがほしいなって」博人は驚いて、横にいる未央のほうを見た。どうして彼はこのことも覚えていないのだろうか。脳裏にここ数年、未央が彼にしてくれたことがよぎった。彼女がしてくれた一つ一つ、細かいところまで非常に気遣いがあった。博人の瞳は少し暗くなり、心の底はざわつき始めた。未央は無表情だった。敦が言っていたことは覚えている。あの日はちょうど生理が来たせいで体に全く力が入らなかった。それでも自分を奮い立たせて一晩中彼のお世話をし、翌日は体調を悪化させて倒れてしまった

西嶋知恵（にしじま ともえ）は両手を胸の前に組み、粗捜しをするような目つきで未央をじろじろと見つめていた。博人が眉間にしわをきつく寄せて、視線を下に落とすと未央は無感情に淡々とした様子だった。まるでもう西嶋家からのいじめには慣れてしまっているようだった。彼は我慢できず口を開いた。「おばさん、未央の格好はとても素敵じゃないですか」この時、博人がはじめて未央をかばうような言葉を口にしたのだ。知恵はそれに驚いて、声を詰まらせ気まずそうに笑った。彼女は弱い者いじめしかできないのだ。この博人という西嶋家の跡取り息子の前で、大きな口は叩けない。この時、部屋の中から威厳のあるよく通った冷たい女の声が聞こえてきた。「こんな玄関先で立って何をしているの？こっちに来て座りなさい」それは西嶋容子（にしじま ようこ）だ。彼女は博人の母親で、年季の入った木製の大きなひじ掛け椅子に座り、すごいオーラを放っている。彼女は不機嫌そうに未央を睨みつけ、その口調からは嫌悪と不満が溢れんばかりだった。「理玖ちゃんが教えてくれたわよ。ご飯も作ってくれないし、バイオリンの練習にも付き合ってくれないって。あなたそれでよく母親なんかやってられるわね？」容子は最初から未央という嫁にはとても不満を持っていた。もし、彼女が妊娠なんてしなければ、彼女は絶対にこの結婚には同意しなかったのだ。彼女の理想の嫁は、きっと西嶋家と同等レベルの名家の令嬢だったのだ。それが、未央という没落してしまった家出身の女になってしまって許せなかったのだ。未央は瞼を下に向け、平然と言った。「理玖は私が作る料理が好きではないので。それに、バイオリンの練習の時も私が隣にいると邪魔になるらしいですから、私が付き合ったほうがよっぽど練習になんかなりませんよ」彼女の口調は非常に淡々としていた。以前であれば、この義母のご機嫌取りをしていたのだ。それも博人の面子を立ててのことだった。しかし、今はもうすぐ去る身なので、彼女はどう思われようがどうでもよかった。容子はまさか未央が大人しく反省する色を見せず、このように歯向かってくるとは思ってもいなかった。彼女の顔には瞬時に怒りの色が表れ、指先で強くテーブルを叩き、ものすごい剣幕で「そういうことなの。なら、西嶋家にはこのような嫁は役に立たないわね、そ

博人は心が苦しくなり、かすれた声で尋ねた。「どうしてそんなことを言うんだ？」理玖は指で数えながら言った。「ママはお稽古に付き合ってくれないでしょ、幼稚園から帰ってきても全然僕のことを気にしない。それにママが編んでくれたセーターを捨てちゃったんだ」博人は彼の頭を撫でて、小さな声で慰めた。「考えすぎだよ。お母さんは俺たちにまだ少し腹を立てているんだ。怒りが収まったらすぐ良くなるさ」「ふん、ママって本当に怒りん坊なんだよね」理玖は唇をすぼめて続けて尋ねた。「じゃ、どうしたら怒らなくなる？」博人は少し考えて言った。「明日の夜は母さんの誕生日だろ。理玖が何か誕生日プレゼントを作ってあげたらいいんじゃないか」理玖は分かったような分かっていないような様子で尋ねた。「そうしたら、前のママが帰ってくる？」博人は頷いた。彼が未央に準備しているのは、今まで経験したことのない花火大会だ。その時には誕生日パーティーと一緒に彼女にプロポーズするのだ。彼は、彼女がこれをずっと心待ちにしていたと知っていた。理玖は瞳をキラキラと輝かせ、気持ちに火をつけ、ベッドに駆けあがって横になった。「分かったよ、パパ、おやすみなさい」翌日の朝。一家三人は一緒に朝食を囲み、雰囲気は珍しく和気あいあいとしていた。理玖もなかなか上機嫌のようで、鼻歌を口ずさみながら、真っ白な紙に絵を描いていた。未央はなんともなしにそれをちらりと見た。そこには二人の大人と一人の子供が描かれていた。幸せそうな一家三人の絵だ。理玖は彼女の目線に気づき、急いで体でそれを覆い隠し、怒って言った。「見ちゃダメだよ！」未央はすぐに視線をそこから外し、朝食を済ませると出かけて行った。今日は彼女が虹陽市から離れる二日前だ。だから昔の友人に最後のお別れをする日なのだ。日が西に傾くと、都市全体が黄金色の光りに照らされた。未央は友人の中の最後の一人と別れを済ませると、無意識に理玖が通う幼稚園の前まで来ていた。今日は何かの活動があったようで、入り口には多くの人が集まっていた。「理玖君のお母さん、今到着されたんですか。早くお入りください」警備員が彼女を見つけて親切に彼女を呼んだ。未央が小さな講堂に入ると、雪乃がステージの上に立っていて、スポットライトに照らされ、ちょうど