豪華な部屋の中。女は泣きじゃくりながら肩を震わせ、ひたすら許しを請うていたが、男の冷酷な態度に一切の慈悲はなかった。むしろ、それはまるで怒りをぶつけるかのように、ますます激しさを増していた。やがて、海青が低く呻き声を漏らし、ようやく女の泣き声が止まった。室内には二人の荒い息遣いだけが残った。少しして、詩緒は彼の肩から手を放し、目を赤くしながら甘えるように言った。「もう、ほんとにひどいんだから......もうちょっとでダメになるところだったのよ」海青は笑いながら彼女の首筋にキスを落とした。「先に誘ったのは君のほうだろ?」詩緒はそのキスにくすぐったそうに身をよじり、笑いながら逃げた。「もう、やっぱりひどい!」海青は彼女の艶やかな様子を見つめながら喉を鳴らし、次の行動に出ようとした。だがそのとき、外から鐘の音が響いた。「ゴォン――」古びた重々しい音が、まるで金槌で心臓を打ちつけられたように、海青の胸に激しく突き刺さった。その身がピクリと硬直し、理由のわからない不安が津波のように押し寄せる。頭の中でブワンと轟音が鳴り響き、死の気配が肌にまとわりつくようだった。なんだこれは......海青は反射的に胸を押さえ、大きく息を吸い込み始めた。顔はみるみるうちに青ざめ、額には冷たい汗が滲み出る。「海青さん、どうしたの!?」詩緒は慌てて声を上げた。海青は頭を振り、彼女を押しのけて身を起こした。「......大丈夫だ」そのとき、古びたブラインドの隙間から月明かりが差し込み、彼の視線の先には、窓の外に広がる真っ赤なもみじの木々があった。思わず脳裏に浮かんだのは、秋帆の姿だった。胸騒ぎが拭えない。まさか、秋帆に何か......?だがすでに、二人の関係は取り返しのつかないところまで来ていた。今さら彼女のことなど、気にする必要があるのか?海青は皮肉げに笑い、頭を振ってその考えを振り払おうとしたが、なぜか心臓の鼓動はますます激しくなっていく。くそっ。彼はついにその不安に屈し、服を着ながら秋帆に電話をかけ始めた。「海青さん、こんな時間にどこ行くの?」詩緒は不満げに彼の手を掴んだ。「急用を思い出したんだ。先に休んでて」詩緒はすぐに察した。彼が向かう先は秋帆だ、
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