All Chapters of 愛のために我が子を失った悲劇の王妃に憑依したみたいです。推しの息子と二人で幸せに暮らすため、夫はヒロインに差しあげます!: Chapter 21 - Chapter 30

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ローランドの怒り

 そんな馬鹿な…… でも、もしもアデリナがこのまま離婚を考えていて実際にそうなったらこの国はどうなる? 軍事力豊かなアデリナの母国マレハユガ大帝国の加護を失ったら? ……いや、その前に私はアデリナと離婚したいのだろうか? 国を守る為にあの帝国との多少強引な政略結婚の条件を飲み込んだ。 アデリナは自分のプライドのために、何でも言うことを聞く、都合の良い結婚相手が欲しかったのだろう。 あの結婚式の日、確かにアデリナを一生愛すると神の前で誓いを立てた。 彼女を大切にすると。 だから……私の中でアデリナとの離婚は一度も想像した事がない。 だが、愛すると誓いながら結局今日まで愛せなかった。 でも、離婚はしない。 そう……離婚はしないんだ。 そんな選択肢、この婚姻を決めた時点で私にはない。 ◇ ある日、王宮内にある中庭で、そこに面した向こう側の廊下を歩くあの女を偶然見かけた。 「あははは、ホイットニーって、あの時そんな風に思ってたの?」 「ええ、そうですよ。 アデリナ様があの夜におやつを爆食するんですもの。 てっきり…おめでたかと。」 「もう〜そんな訳ないでしょ? 私とローランドだよ?ナイナイ。 やめて〜今だって夜は別々よ? もう一生ないって」 どうやら私がいない場所でアデリナは、私の事を呼び捨てにしているようだ。 体調不良でずっと部屋に引き篭もっていると聞いていたが、どこが…… だが、紛れもなくアデリナを久しぶりに見かけた瞬間だった。 これまではいつもの下らない演技だとばかり思っていたが、この時ばかりはアデリナが本当に私を避けているのだと実感した。 「アデリナはどこに行く気だ?」 「&hel
last updateLast Updated : 2025-06-27
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ローランドの怒り

 図書室でアデリナは国法が載った本を開いていた。 彼女は本気で離婚を考えてる。その為の現実的な計画を立てている。 それが嫌でも目に見えてしまった。 また、チリっと胸の奥に怒りが湧く。 でも今度は違う。もっと大きな怒り。 何に対して私は怒ってるんだ?  ……分からない。  「ほお。………私に自ら罰金を払うと? それで私と離婚をすると?」  ついに耐え切れなくなった私は、アデリナの座る椅子の隣に立っていた。 先に私の存在に気づいたホイットニーは、無言でランドルフの横に並び、子ウサギの様に震えていた。 肝心のアデリナは、血相を変えて私を見上げている。 仮病を使い、全く私の前に現れなくなった性悪妻。 始めは私の怒りを察したかのように取り繕ってくる。だが。 「陛下、私たち、離婚しましょうか?」 ………まだ言うのか! 具合が悪いと引きこもっても、一度も看病に訪れない私を責める事もせず。 あれ以降、何かが欲しいと強請る事も、私の体にベタベタ触ってくる事もなく。 貴方にはもう全く興味ありませんと言った顔で、爽やかに別れを提案してくるアデリナ。 しかも離婚しても加護を継続するよう交渉するから心配するな、だって? 考えれば何とも良い条件だった。 性悪妻との縁も切れ、彼女の我儘に振り回される事もなくなる。 冷静に考えれば何とも有難い申し入れ。 なのに、私の頭を支配したのは全く別の考え。 何でそんな風に簡単に言える………! あの日結婚式で永遠の誓いを立てたのは、私だけではなかったはずだ……! 一生お互いを慈しみ大切にすると言う誓いを破棄するのか……!
last updateLast Updated : 2025-06-28
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ステータスオープン!アデリナにまさかのチート能力が?

 こいつ〜何でそこまで離婚を嫌がるわけ? 図書室で繰り広げられた離婚交渉。 条件は悪くないのに、ローランドは頑なに離婚しないと言って聞かなかった。 眉間には思いっきり皺を寄せるし、唇はへの字に曲げるもんだから、せっかくのイケメン顔が崩れてブスになってる。 子供か! うん、落ち着け私。所詮こいつは小説の中の住人。 しかも実際の私よりは年下。 私がこれ以上怒る必要はない。 結局こうなってる原因は、アデリナの信用問題でもある。 これまでのアデリナの不器用な行動が、ローランドの信用を失っているせいだ。 嫌だけど下から行ってみる? このまま離婚できないとこっちも困るし。 「確かに私の事が信用できないのは分かりますが陛下、こう見えて私は約束は必ず守る女です。(私はね!)」 「約束を破ってるのはお前だ、アデリナ。」  目を合わそうともしない。 まだ怒りが燻ってるような態度でローランドは向こう側を向いた。 「ん……?約束、とは?」 何か私の知らない約束をアデリナとしてんの? 「結婚式で誓いを立てただろう。」 「…ああ。(私じゃなくて本物のアデリナがね?)」  「あれは神への誓いだ。それを破る事は神を冒涜する事だ。」 …神とか知らんわ!私無宗教です〜! それに誓いを立てたのは私じゃなくて本物のアデリナだからね! 「で、でも私は悪い妻ですし……?」 「分かってるなら変えろ。」 「ホホホ…人が簡単に変わるとか無理ですよ?(もう中身別人だけどね!)」 「以前は自分が悪さをしている事すら無自覚だったじゃないか。 それに気づいたんだ。今からだって変わる事はできるはずだ。」 「オホホホ……またまた〜(だからもう
last updateLast Updated : 2025-06-28
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ステータスオープン!アデリナにまさかのチート能力が?

 え?病気?ローランドって何か病気なの? 「衛兵、侍医を呼べ!」 廊下側で待機する二、三人の衛兵にランドルフは素早く命令した。 「い、生きてる?」 「…生きておりますとも!」 ちょっとお怒り気味のランドルフに睨まれてしまう。 「陛下、一体どうしちゃったの?」 「分かりません…ですがここ最近、激務が重なっていましたので…疲労かも知れません。」 「仕事頑張りすぎって事?」 「…………」 お前に答える義理はないといった感じにランドルフは私からローランドを引き離した。 何にせよ、こんな展開知らない。 いやあったのかもしれないけど、いちいち詳細まで覚えてない。 もしも本当のアデリナだったらこんな時にどうしたんだろうか。 ちゃんと呼吸はしているみたい。 だが顔色は悪い。 医者じゃないから分からないけど、こんな時ゲームみたいにウィンドウがあって、ステータスとか色々見れたら便利なのにと思う。 「ステータスオープン…! なーんてね。ははは」 妙な事を口走る私をランドルフがあのローランドと同じ、害虫を見る様な顔で見てる。 失礼な人おおお。ま、私が悪い… だがその瞬間、ブオォンという音が響いた。 うっそ!何か出た! 私の目の前に現れたのは、タブレットほどの大きさの、淡い水色をしたウィンドウ画面だった! 何か文字が書いてある。 やった!これもしかしてチート能力的なあれ? この世界が素人作品の小説だから何でもある感じ? まさかアデリナに隠された能力が! 「陛下!陛下……!」 他の人には見えてないみたい。ローランドとランドルフの周りに兵が集まってくる。 ホイットニーさえも、私の前の変な画面
last updateLast Updated : 2025-06-29
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ステータスオープン!アデリナにまさかのチート能力が?

 ウィンドウの言っている事が正しいなら、とにかくあの男は鉄分が足りてない。 てわけで王宮の調理場にやって来た。 仕方ないなあ!全く世話が焼ける。 しょぼいステータス機能ではあったが、お陰でローランドが倒れた原因は分かった。 それによれば、今すぐ命の危機という感じではないみたい。 でも一国の王が自分の自己管理もできないようじゃ、この先の未来が心配だよ。 あの後ローランドはランドルフ達の手で、寝室に運ばれて行った。 「アデリナ様…一体何をなさるのですか?」 後ろから私について来たホイットニーが、不安そうに尋ねてくる。 「んーーーローランドが栄養不足で貧血になってるみたいだから、何か鉄分が取れそうな料理を作ってあげようかなって。」 「あ、アデリナ様が自ら料理を!?」 だだっ広くて、高そうな調理器具や豪華な照明が吊り下げられている調理場。 見渡す限り材料は色々ありそうだった。 野菜はにんにくに、かぼちゃ、ピーマン、人参? あれは、フランスパン? 豚肉か牛肉かな? 包丁にまな板、何か調味料、salt…塩? 結構何でも揃ってる。 見た目は日本で使ってる野菜とかに姿形がそっくりだけど。 「ステータスオープン! この中で鉄分が多い食べ物は?」 [鉄分多め▷濃緑草] お、何とか出た。 「他には……?」 [鉄分多め▷ブヒ獣]  「…ほ、他には?」 [鉄分多め▷ンモー獣]  相変わらずしょぼい情報だけど、これで何か作れそう。 後からもう一度ここへ来て、シェフに交渉しておこう。 だけど……この国の食べ物のネーミングのセンスと言ったら! 「ブヒ獣?って豚……?ブヒブヒ鳴くから? ンモ
last updateLast Updated : 2025-06-29
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ステータスオープン!アデリナにまさかのチート能力が?

 ◇◇◇ 寝込んだローランドの脈を見た医者は、かなり深刻そうな顔で言った。 「陛下は何か深刻な病かもしれません。」 「そんな…!」とランドルフ含むお偉いさん方が落胆し、鼻を啜っている。 まるで末期患者でも見てるかのように、絶望感を漂わせている彼らの背後で、私は思う。 だ〜か〜ら〜!ただの貧血だって! 栄養不足なの! ローランドは仕事が忙しくて、単にご飯食べてなかったんだって。 要するに栄養取って休めって事よ。 それから医者達が解散して部屋を出ると、私はローランドがぐっすりと寝ているベッドに近付いた。 端正な顔立ちをした男が、眠り姫のように横たわっている。 そんな私を見て、またランドルフが妙な顔をしていた。 だからこの男も本当に失礼だよね! 「何のつもりですか?王妃陛下。」 「何のつもりも何も……私はへいかの妻です。心配するのは当たり前でしょ?」 私に言わせてもらえれば、ローランドはついこの前までは全くの赤の他人だった。 本当はどうだっていい。 なのに何でだろう。 どこか片隅でローランドの事を見過ごせない自分がいる。 憑依してから今まで気にしてなかったけど、もしかして本物のアデリナの思念がどこかに残っているのかも知れない。 ローランドを愛するアデリナの想いが。   「何のつもりだ?」 「何にも?」 こいつら(主にローランドとランドルフ)〜は人の顔を見ればすぐ「何のつもりだ」って連呼するけど合言葉か何かですか? あれからローランドは、翌朝には目を覚ましていた。 幸いにも、昨日よりは随分と顔色がいい。 相変わらず自分が正しいと信じきっている、あのヤブ医者が不吉な事を言って部屋を去った後。 今朝早くに調理場を借りて作った料理を、ローランドがいる寝室に運んでもらった。 濃緑草は見た
last updateLast Updated : 2025-06-29
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ステータスオープン!アデリナにまさかのチート能力が?

 「さあ、毒なんか入ってないから食べて下さいよ。」 「…要らない。」 「また倒れますよ?」 「原因が分からないのに、何でも口に入れるのは憚られる。」 「だから栄養不足で貧血ですって。」 聞けばローランドは、今朝からまだ何も口にしてないと言っていた。 「お前の何の根拠もない話を信じられるか。 とにかくお前の施しは受けない。」 「じゃあ他のシェフに作らせます。 それなら食べますよね?」 「…要らないと言っているだろう。 お前の指図は受けない。私は忙しいんだ、仕事に戻る。」 そう言ってローランドは、無理やり布団から這い出ようとする。 ほーう。そう来たか。 この…社畜体質が………!! ローランドって実は一番、異世界転生するタイプじゃない? ついに我慢できなくなり、私は勢いよく椅子を立ち上がった。 「ねえ!陛下。貴方、王ですよね? ……王が! 突然倒れるってよっぽどの事じゃないんですか? 国の一大事じゃないんですか? 皆がどれだけ心配したか分かってるんですか! なのにまた無理をして仕事に戻ると? へ〜え、大層ご立派ですね。もしかしてドMですか? だけどそれは貴方を支えている者達にとっては、非常〜に迷惑な事だと私は思います。 だってこのまま貴方が過労死したら? この国はどうなるんですか? 王が倒れたら誰が国民を守るの? 確かに仕事は大事でしょう…… でも王に、貴方の代わりになれる人なんていないんでしょう? ならもっと自分の事も大切にしたらどうですか! 今貴方がやるべき事は、しっかりご飯を食べて体を休める事です!」 …とか偉そうに言ってみたりして。
last updateLast Updated : 2025-06-30
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ステータスオープン!アデリナにまさかのチート能力が?

 ◇◇ あれからローランドはまた少し眠り、その後仕事に復帰したという。 ローランドって本当に真面目な王様なんだ。 ちょっと評価上げとく? とりあえずまた倒れられても困るから、専属のシェフと交渉して、なるべく鉄分が多く摂れる料理を作ってもらう事にした。 ま、3食バランス良くね。  それから私も、アデリナに憑依してからローランドにやれと口を酸っぱくして言われていた仕事をやる事に。 ローランドが中々認めてくれなくて簡単に離婚できないし、暇だしね。 王妃の仕事ってまあ簡単ではある。 だって私が自ら肉体労働する訳でも、忙しく動き回るわけでもない。 ただ人に指示して、割り当てられた予算を使うだけ。 偉い貴族やどこかの国の王族を迎える時に出すお茶の種類とか、銘柄とか。 どんな茶器を使うかとか。 どんなスイーツをお出しするか、とか。 プレゼントは何にするか、とかね。 とりあえず、その都度お客様の好きな物を把握して、準備する事にした。 あと、何より自分が王妃として豪華に着飾るのも大事な仕事だった。 そこは無難に王族専用のデザイナーに任せておく。 あとは自分もそのティーパーティとやらに参加して、適当に相槌打ってウフフ、オホホホ言いながらお茶を飲んで、おいしいスイーツでも食べておけばいい。 皆アデリナが性悪だって知ってるから、多少マナーがおかしくても、話題が分からなくても誰も何も言ってこない。 何て楽な仕事なの………!これで給料(生活費)貰えるんだから最高じゃない?  それから自分の住む王妃宮の管理。 早い話、痛んできた建物の修繕や、古くなった壁を新しく塗り替えるなど、その具体的な指示である。 「王妃陛下、そのような仕事は私共にお任せ下さい!」 これまでアデリナの代わりに全ての業務を引き受けていた、アラフォーくらいの侍女長が慌てて私を引き止めるけど。
last updateLast Updated : 2025-06-30
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ステータスオープン!アデリナにまさかのチート能力が?

 あとは離婚後の悠々自適な生活のために、この小説の世界も勉強する事にした。  一番のネックになってる、クブルク国の情勢とか、周辺国との関係とか。 調べると確かに状況は芳しくなかった。 本当にクブルクは弱小国で、軍事力、国防力といったものが他国と比べてかなり劣っている。 確かに、アデリナの母国の加護がなければ、簡単に侵略されてしまうだろう。  とにかく。何かこう、円満にローランドを納得させるような、決定打がないかな。 とりあえず母国の父親に離婚と加護継続について手紙を送っといたけど(母国の言葉は自然と書けるという不思議)。 まあ私にとっては全く知らない人なんだけどね。 今日は天気が良かった。 見栄えが良くなってきた庭園で、午後からのティータイムをホイットニーと一緒に楽しむ事に。  「アデリナ様、お疲れでは? そろそろ休憩をされませんか?」 「そうね。せっかくのティータイムに勉強なんて……」 結局はテーブルの上で本を片手に勉強していると、ホイットニーが紅茶とお茶菓子を大きなワゴンに乗せて運んできた。 この王宮で作られるタルトやケーキは、どれも美味しくて最高!  「また離婚について勉強か?」  出た…………!! 「ローランド!あ、じゃない、陛下!?」 そう。あの日以降。 午後になると、こうやってローランドが度々ティータイムに顔を出しに来るようになってしまったのだ! 本当に何なの?仕事は?暇なの? 「……また今朝も食事に来なかったな。 一体いつまで続けるつもりだ?」 相変わらず不貞腐れたような顔をして、背後には似たような態度のランドルフを伴っている。 今日も無駄にイケメンな顔と、完璧なスタイルが眩しい。 本日のファッションは黒がベースか。
last updateLast Updated : 2025-07-01
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ローランドの変化

 クブルクは小国ながら300年以上続く国。 秘訣は近隣国から王族の姫を娶り、その国との提携を図る事である。 それに従い、王族同士で政略結婚をした私の両親はお互いを愛しておらず、互いを労るという心など持っていなかった。 父は愚王ではなかったが、口煩い母の事が嫌いで、いつも新しい愛人を作っては何か嫌なことがあれば、そこに逃げるような人だった。 また母もそんな父が嫌いで、ストレスを買い物で発散させ、高価なドレスや宝石を買い漁り散財するような人だった。  常日頃から互いを疎む夫婦。 国民の前でだけ仮面をつける。  まだ幼い頃の私が熱を出しても、二人は顔さえ見に現れなかった。 私の世話をしてくれたのは、いつも年老いた侍従長と乳母だけ。 病弱だった私の看病を巡り、父と母はよく喧嘩をしていた。 「なぜ私がローランドの看病を? あの子の世話は乳母に任せてある。」 冷たい瞳が私にそっくりな父が、私が寝ているベッドの側で乱暴に言い放つ。 「あら?だったら私だってローランドの世話をする義理はないわ。 ちゃんと後継者を産むという自分の仕事はしたのよ! だからあの子の看病まで私がする必要ないでしょう!」 美しい、水色に近い銀髪の髪を持つ母の目は、息子ではなくまるで道具を見ているようだった。 愛のない夫婦の間にできた私は、当然のようにどちらにも愛情を向けて貰えなかった。 ……寂しい。 苦しい。 悲しい。 虚しい。 誰か愛して。 誰か私を愛して……… ◇◇◇ 図書室で倒れた後。  意識が朦朧としていた私を、ふと覗き込んでいる影に気づいた。 ………アデリナ? 「ホイットニー、冷えピタ…&helli
last updateLast Updated : 2025-07-01
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