離婚翌日、消えた10億円と双子妊娠を告げぬ妻ーエリート御曹司社長の後悔ー のすべてのチャプター: チャプター 151 - チャプター 160

172 チャプター

154.葛藤と嘘

華side別荘に帰ると、子どもたちはご飯を食べ終えるとすぐに、疲れ果ててしまったのかお風呂も入らずにそのまま眠ってしまった。見知らぬ土地と、見知らぬ大人に囲まれて緊張するのも無理はない。静まり返ったリビングで一人、ハーブティーの甘い香りに包まれながら、今日の瑛斗との会話を思い出す。『三上と玲が会っているかもしれないということは知っているのか?』瑛斗の言葉が私の頭の中を何度も反響する。「護さんと玲が会っている?そんなわけないじゃない」誰にも聞こえないような小さな声で私はそう呟いた。(護さんは、瑛斗のことをひどく憎んでいる。今日だって、子どもたちのことがあったとはいえ、引き取りを瑛斗が行くことを認めなければ場所を教えないと言われたことを知れば、きっとものすごい剣幕で激怒するだろう。そんなに憎い相手の妻である玲と、護さんが会うはずがない。)瑛斗の言葉は、私と護さんの関係を壊そうとするための策略に思えた。そして、万が一、玲と会っていたとしても、それは私が瑛斗と玲との間にあったツライ過去を思い出させないための護さんなりの優しさだと思った。「瑛斗は、護さんのことを悪者にしようとしているの?私が幸せになるのが憎いの?」今までならそう思って怒りを感じていた。しかし、子どもたちに「何かあったら助ける」と言って、本当に長野まで駆けつけてくれたことを思うと、彼に悪意があるようには思えなかった。そして、あの時、子どもたちに向けられた瞳にはたしかに愛情が宿っている気がした。そのことが私の心を深く揺さぶっていた。そんな時、護さんから電話がきた。「もしもし、華ちゃん?今、仕事終わったよ。今日は何をしていた?」「護さん、お仕事おつかれさまです。今日は……家でゆっくりしていたわ」私は、咄嗟に今日の出来事を隠し護さんと話をした。
last update最終更新日 : 2025-08-31
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157.護さんのお父様の死の真相

華side「妊娠中は、三上くんから大変な状況だと聞いて心配していた。……心配していたと言いながら、自分の近くで華を守ってやれなかった。華にはなんと言っていいか……」父は、私を強く抱きしめ言葉を詰まらせた。その声は震え、深い後悔と愛情が伝わってきて私の胸は熱くなった。私は、父の背中に手を回し、涙をこらえていた。「いえ、こちらこそご迷惑をおかけしました。お父様が私のことを考え、この別荘を用意して下さったおかげで、今があります。ありがとうございます。三上先生も、妊娠から今に至るまで、サポートしてくださって、感謝の気持ちでいっぱいです」「そうか、三上くんが。……もしかして三上くんとは交際しているのか」『今に至るまで』という言葉が引っかかったようで、父は私の顔をまじまじと見つめてから尋ねてきた。その問いかけに、私は少し照れながら答えた。「……はい。公私ともによくしてもらっています」一瞬、父は考え込むように指を顎にあてて黙り込んだ。その表情は、何かを深く思案しているようにも見えた。しかし、私が不思議がっているのを察したのか、すぐに表情を緩めて私の方を向いて笑顔で返してきた。「そうか。三上くんのお父さんも神宮寺家に仕えてくれてね。三上家には、随分昔から世話になって
last update最終更新日 : 2025-09-02
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158.護さんのお父様の死の真相②

華side「三上君がまだ小学校低学年の時だったかな。車とトラックが衝突してね。トラックの方に過失があったんだが、車に乗っていた三上君の父上が犠牲になってしまったんだ」「そう、だったんですね……」父の言葉は、私の心を深く揺さぶった。私が妊娠中にトラックや乗用車に命を狙われていた時、護さんに話をしたら、彼は血相を変えて心配してくれた。そして、それ以降、外に出る時は送り迎えをしてくれるようになった。それは、幼い頃にトラックとの交通事故で父を亡くした護さんだからこその特別な心配と配慮だったのだろう。彼の行動のすべてに、深い愛情と、過去の痛みが込められていたのだと初めて知った。「まだ幼い三上くんから父親を奪ってしまったことが、申し訳なくてね。三上君が大学を卒業するまで神宮寺家で支援をすることと、何年先でもいいから、将来、医師になったら神宮寺家の専属医にすることを三上くんの母親と約束したんだ。そして、大学を卒業して、そのまま神宮寺家の専属医になった。長い付き合いだよ」父はそう言うと、俯いて下を向き、昔を懐かしんでいるようだった。その表情は、深い後悔と、護さんへの複雑な思いが入り混じっているように見えた。護さんが初めて専属医として我が家を訪れた時、まだ大学を卒業したばかりで若かった。それまで仕えていてくれた先生もまだ40代だったので、なぜ急に変わったのか、特別な事情でもあったのかと不思議に思っていたが、そんな経緯があったことに私は驚きを隠
last update最終更新日 : 2025-09-02
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