月子は、自分のことで火花を散らしている忍と彩乃の二人を宥めながら、ふと取り分けられた美味しそうな料理を見て驚いた。隼人が細かく取り分けていたのだ。いつの間にこんなことを?あのクールな隼人が、こんな細やかな気配りをするなんて?忍も驚きを隠せない様子で、まるで新大陸をしたように言った。「……マジかよ、なんだその良妻賢母ぷりは」隼人は何も言わずにいた。忍は口笛を吹きながら言った。「俺にもやってくれよ、俺にも……お願い」隼人は忍を睨みつけて、「黙ってろ」と言った。そして、皆の前でさらに別の料理をも月子に取り分けてあげた。さっきの料理も、隼人は月子に「早く食べなさい」と促した。月子は操られたように、言われるがまま料理を平らげ、ついでにドリンクも少し飲んだ。食べ始めると、月子は自分がどれだけお腹が空いていたかようやく気がついた。そして、慎吾の料理の腕前は本当に素晴らしいと改めて思った。まさか隼人に世話を焼かれるなんて、全く予想していなかった月子は、少し遅れて「……ありがとうございます」と言った。忍は見ていられないといった様子で言った。「おいおい、隼人、月子さんと彩乃はいつでもどこでも抱き合ってキスをするほど仲がいいのに。お前は俺に料理の取り分けをするのも嫌なのかよ、俺たち本当に友達か?」それを言われ隼人は仕方なく、忍に煮物を取ってやった。「これで勘弁してやるか」忍は満足そうに食べ始めた。この光景を見て、月子はあの夜麻雀をしていた時のことを思い出した。隼人はたくさんの出前を取っていたが、彼の好きなものはあまり注文していなかった。そして、誰かに食べたいものを聞くでもなく、黙々と注文していたのだ。なぜなら、それぞれの好みを、彼は既に覚えていたからだ。隼人は、いつも本当に気配りが細やかなのだ。彩乃は驚きを隠せない。昨日会った時は、隼人は終始お高く留まっていて、宏でさえもビクビクするほどの威厳を放っていた。しかし今、目の前にいる彼はあまりにも生活感に溢れていて、そのギャップに彩乃はまるで別人を見ているようだった。忍の図々しい甘えにも、隼人は応じるなんて。忍があんなに当然のように振る舞っているということは、きっと隼人はいつも彼に世話を焼いているんだろう……口数の少ない隼人なのに、周りの人たちをちゃんと気
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