All Chapters of バケモノが愛したこの世界: Chapter 11 - Chapter 20

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神性付与保持者

「神性付与?」 聞いた事のない単語に訝しむレイ。  だがハッタリで無い事だけは確かだ。  何せ先程までと明らかに重圧が違う。「裏の界隈じゃ有名だぜ?神に選ばれた方々から賜る特別な加護、それが神性付与だ。俺は偉大なるルエル様より賜ったのさ!」 確かにレイは裏社会に精通している訳では無い。  しかし、仮にも今まで生き抜く為に裏も利用してきた。  いわゆる善良な一般市民とは違うという自覚はある。  その自分すらも知らないという事は、余程重要な意味合いを持つのであろうという事は容易に想像が出来た。「これを使うのも随分と久しぶりだ!それこそ人間相手に使わねぇからな!以前使ったのは同じ神性付与保持者と小競り合いした時以来か!」 こんな力を振るう人間が、他にも居るというのか。  目の前に居るだけでも鳥肌が止まらない。  しかしこちらも時間が無い。  相手の能力が分からない以上危険ではあるが、対応するよりも速く決着をつける。  そう結論付け、一気に間合いを詰めたレイだが……「ぐっ……!」  ベルリに近付いた途端、体が一気に何倍も重くなった。  気のせいでは無い、確実に重くなっている。  事実、持ち上げられなくなった剣先は地面に沈み、足の接地面は徐々にひび割れて来ている。「これは、重力魔法!?」  超高度な重力魔法を、略式で展開した事実に驚きを隠せないレイ。  今までの戦闘の様子を見るに、彼にそんな高等技術も、魔力量も備わっていないと思っていた。  しかし今それが可能という事は、先程の神性付与とやらの恩恵だろう。  恐らくこの能力は、特定の魔法の略式発動を可能とし、更に魔力消費量も少なく出来る能力なのではないか、と考察するレイ。(不味いわね……)  レイの中で焦りが積もる。  何とか全身に力を込め、全力で後退する。  するとある程度離れた所で、全身の重さは嘘のように無くなった。  ベルリの重力魔法は彼を中心に、数メートル範囲内の敵の重力を増す様だ。  更に遠距離攻撃も重力の影響を受ける。  何とか打開策を、と考えたレイの目の前に映った光景に思わず絶句した。 恐らく幻影であろう分身し3人に増えたベルリが、更に全員略式で様々な魔法を展開していたのだ。  パッ
last updateLast Updated : 2025-06-24
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師匠としての矜恃

 ベルリが声のした方へ顔を向けると、そこには若い男が立っていた。  白混じりの黒髪という珍しい髪色をした男で、全身黒の軽装をしている。(どう見ても前衛職に見えない、魔法師か?)  更に奥を見るとフードを被った2人組が控えている。  こちらは完全に顔も性別も分からない。(不気味だな)  警戒しながらベルリはその3人に話しかける。 「なんだあんたら?今ちょっと忙しいんだ。すぐ終わらせるから用があるならちょっと待っててくれねぇか?」 その言葉に中央のニイルが答える。 「いえ、私達が用があるのはそちらの娘でしてね?返してもらいに来たのですよ」  そう言いながら青年が指を鳴らした直後、ベルリの足元に居たはずのレイが消え、後ろのフードの1人に抱き抱えられていた。「は?」 「はい、ありがとうランシュ。さて、どうやら無事の様ですね?如何でしたか?強敵との戦いは」  惚けるベルリを置き去りに、これまた惚けているレイに質問をするニイル。「ニイル、なんでここに?」  質問に質問を返してきたレイに、ニイルは呆れながら答えた。 「言ったでしょう?そちらに向かうと。我を忘れるから師匠の言葉も忘れるのです、この馬鹿弟子」 その言葉にうっ……と唸りながら縮こまるレイ。  そんな様子に苦笑しながら同じ質問を繰り返す。 「で、彼はどうでしたか?彼も復讐対象だったのでしょう?それと戦い、貴女はどう感じましたか?」 その問に悔しそうに、涙を堪えながら、震える声でレイは答える。 「強かった。勝てなかった。悔しい……悔しいよぅ……」 「よろしい。ならばその気持ちと今日の反省点を一生忘れない様に。生きてさえいれば強くなりますよ。貴女はまだ人間なんですから」  そう言って頭を撫でられ、堪えきれず涙を流してしまうレイ。 この10年奴らを殺す為に生きてきた。  この力が奴らに届くのは立証されたが、彼らを殺すにはまだ及ばなった。  それでも良いのだと言う。  次に活かせと。  私はまだ強くなれるのだとバケモノが言うのなら、信頼出来る。「オイオイ!俺を置いてけぼりにしないでくれよ!そいつは俺の獲物だぜ!?返してくれなきゃ俺の気が収まらねぇよ!」  そんな様子に、イライラとした感情を隠すこと無く露わにするベルリ。「それと
last updateLast Updated : 2025-06-25
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新たなる門出

 ベルリとの戦いから4日が経過した。  現在レイ達4人は、かつてザジとレイが住んでいた家に居る。  ザジが死んでから誰も手入れをしていなかったのだろう。  家具等は埃を被り、傷んでいる所も多数。  周囲も雑草が生い茂り、荒れ果てていた。  1日かけて4人で手分けをし、人が住める様になったのが昨日の事である。  そして今日、今まで居た宿から荷物を全て持ち出し、当分の拠点として一先ずの完成を見たのであった。「さて、それでは今後の事について話をしましょう」  一段落し、ランシュが入れてくれたお茶を飲みながら、ニイルが切り出した。  それを受け、レイは何故ここに居るのか、その原因であるここ数日の事を思い返していた。 あの戦闘の直後、レイは魔力枯渇で意識を失い、いつもの宿屋に運ばれた。  治癒魔法にて体の怪我は治ったが、魔力の方は完全に戻らず、翌日も安静を余儀なくされたのだった。  その夜、合流したニイルがレイにこんな事を言ってきた。  曰く。 「この国、と言いますかルエルですね。彼が私達を探している」  と。「あの時、あの周辺には私達しか居ませんでした。更にダンジョン外から中に干渉できる魔法は存在しません。盗聴や監視も出来ない状況で考えられる可能性は1つ、恐らくあの戦闘の生き残りでしょう。そいつが戻り、ルエルに報告したと思われます」 その言葉を聞き、レイは1人の可能性に思い至った。  それはあの3人の内の1人で、1番最初に切り伏せたダルと呼ばれた男だった。  確かに彼は、もう1人の様に『雷装』で倒した訳では無い。  強化魔法で強化していたとはいえ、普通に剣で斬っただけである。  完全に殺したと思っていたのだが、どうやら一命を取り留めていたらしい。  自分の不甲斐なさに唇を噛み締めるレイ。 そんな様子を見てニイルは言う。 「まぁ相手が宰相なだけに、遅かれ早かれこうなる事は予期していましたから、そこまで焦る事はありません。ただ今の貴女ではまだルエルには勝てないのでね。少しこの地を離れようと思います。幸いにも、私達はこの地での目的は一旦は果たしましたし、行先にも当てがある」 そうして昨日、魔力が完全に戻ったレイを伴ってここにやって来たのであった。  意外と早く帰ってきちゃったなと感慨深く思っていたレイの隣で…… 「か
last updateLast Updated : 2025-06-26
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幕間〜暗躍する闇〜

聖暦1590年「ではこれにて失礼致します、陛下。」 ここはセストリア王国の首都セスト、その中心にそびえ立つ王城。  その奥、厳重な警備が敷かれた執務室からこの部屋の、というよりこの王城の主に挨拶をして出ていく金髪の男の姿があった。  何故謁見室では無く、こんな私的な部屋に呼ばれているかといえば、国の細かい作業の殆どをこの国の王はこの男に一任しているから、というのが理由である。  大人数の前では、あたかも優れた為政者として振舞っては居る王だが、実際はもう国のほぼ全ての決定権を握っているのは、この男なのである。  故に、第三者の目が届かない場所での会議は、常に執務室と数年前から相場が決まっていた。 10年前のあの日、男が連合軍を率いて、かの悪逆非道の国を滅ぼしてから徐々に信頼と実績を重ね、こうして現在この地位にまで上り詰めた。  今では王は思考するのを止め、男の言いなりとなっている。  有り体に言ってしまえば…… 「傀儡だな」  と、吐き捨てるように男は呟いた。 いくら男が望んだ事とはいえ、流石にここまで来ると苦労が絶えない。  かつて、最も厄介なのは賢者な敵では無く愚者な味方である。  と、言っていた偉人が居るそうだが。  全くもってその通りだと首肯せざるを得ない。  今では国政のみならず、小さないざこざ、果ては国王の夕飯に迄意見を求め出す始末。  これではまるで赤ん坊の世話ではないか。  いや、もう高齢だと考えると老人介護が妥当か。 などと下手をすれば極刑物の不遜な事を考えつつ、そうして溜飲を下げながら、急ぎ足で自室へと戻る男。  彼は今、そんな些細な事に煩っている暇は無いのだ。  そろそろ、自分が1番信頼を置ける部下からの報告が来る頃なのだから。 「もう一度、言ってくれますか?」  自室に戻り、早速やってきた自分の直属の部下に、怒りを抑えながら言う男。「で、ですから。遺物調査に向かっていたベルリ様とザジ様が死亡、ダル様が一命を取り留め、回収されました」  その様子に、恐怖で震えながら報告する部下を尻目に、報告内容を反芻する。 意味は分かるが理解が出来ない。  そんな報告内容に苛立ちを募らせる男。  そもそも失敗どころか、死ぬ事すら有り得ない
last updateLast Updated : 2025-06-27
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建国記念日

聖暦1592年 この日、セストリアのほとんどでお祭りが催されていた。  首都のセストは勿論の事、その他の地域でも大半が大なり小なり今日という日を祝い、そして大いに盛り上がっている。  そう、今日この日はセストリア王国の、建国300年の記念すべき日なのであった。 300年というと、全国的に見ても比較的浅い歴史を持つ国に位置する。  そして当初は大国の反乱から生まれた小国と言われており、最近までは数ある小国の内の1つとしか認識されていなかった。 それが今ではズィーア大陸最大の国として領土、国力共に発展したのには理由がある。  それは約15年前、ルエルという男がこの国にやってきた事から始まる。 彼は様々な功績を残し、瞬く間にこの国の宰相へと成り上がった。  個人の戦闘力もさる事ながら知略にも長け、その手腕を持って隣国を取り込み、この短い期間で現在の国力を持つに至ったのだ。  驚愕すべきはその短期間での国力拡張にも関わらず、暴動や反乱の数が極端に少ないという事である。  戦争で侵略した国も少なくないが、敗戦国にも手厚い保護を施し、瞬く間に国を平定したのだった。 そんな経緯が有るからこそ、彼の支持層は多く、王族でも無いのに次期国王に、との声も上がる程だ。  しかし、そんな彼でも全てを平定出来る訳も無く、多少のいざこざは現在も続いている。  それでもこの短期間で国力を拡大し、それを多少のいざこざで済ませている時点で素晴らしい指導者と言わざるを得ないだろう。  そんな訳で一部の国民を除き、ほとんどの民がこの日を喜び、幸福を享受していた。 ここセストも例外では無く、寧ろ首都という事もあり1番の盛り上がりを見せていた。  街には屋台が所狭しと並び、大道芸人等の見世物の数も多い。  そして本日は1番の目玉が控えているという事もあり、国内外から様々な人間が集い、溢れかえっていた。  その目玉とは序列大会である。 本来序列大会は2年に1度開催される大会である。  しかし前回開催後、この建国300年に合わせるとの事で、今回3年ぶりの開催と相成ったのだ。 この祭りは建国記念日の今日から1週間続くが、序列大会が開催される今日が特に、様々な理由から1番注目が集まる日でもあった。 参加者による他の参加者への観察、単純な観戦者、そして他国からの偵察etc…
last updateLast Updated : 2025-06-28
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第1回戦

「さぁ皆様お待ちかね!遂にこの時がやって参りました!3年の時を経て本日開催されます序列大会!司会進行は私、いつもお馴染みバラン・ラーバンが務めさせて頂きます!」 数多の観客が詰め掛ける中、遂に始まったこの国最大の武闘大会。  司会が高らかに謳い、それに呼応する様に周りの客席から歓声が飛び交う。「今回の会場も例年通り、騎士団の皆様が日々鍛錬に励まれている修練場をお借りしています!ですのでこの場を借りて、常に私達の安全を守ってくださっている騎士団の皆様と、そしてここにお越し下さっているセストリア王国の王、デューレル・ド・レブン・セストリア陛下に感謝の意をお伝えしましょう!ありがとうございます!」 その声に呼応し客席の1番高い位置、そこに用意された玉座に座する老人が立ち上がり、他の観客に手を振る。  もう80歳を超えている身でありながら、軽やかに立ち上がり手を振るデューレル王に、更に会場は盛り上がりを見せた。「では盛り上がって来た所で!早速選手達の入場と行きましょう!今回は凄いですよ!何と今回の参加人数は過去最高の500人越え!それだけの強者が集まり繰り広げられるバトルに、私も今から楽しみでなりません!では参りましょう!選手!入場!」 観客の大歓声を受けながら入場してくる選手達。  それぞれ思い思いに、観客に手を振る者も居れば、耳障りだと言わんかのように、怪訝な顔をしている者も居る。  そんな中現れた2人の男に観客中の視線が集まり、歓声が飛んだ。「おぉっと!?ここで現れたのは前回大会優勝者のゴゾーラム選手、そしてその後ろには準優勝者のダリウム選手だ!やはり今大会でも優勝候補のお2人に目が離せません!」 そんな紹介を受けたゴゾーラムとダリウムだが、ゴゾーラムは気だるそうに欠伸をしながら、ダリウムは脇目も振らず真っ直ぐに歩いて行き、ファンサービスは皆無であった。 そうして続々と選手が入場し、有名選手の紹介がされている中、ダリウムは目の前のゴゾーラムに話しかけた。 「どうだ?先程の2人組は見えるか?」 「あぁ、俺達の前方、他の選手に紛れるようにして居やがる。今はさっきの様な嫌な気配をさせていないから誰も気付いて居ないがな」  そう答えるゴゾーラムはただ一点を見据えていた。 先程見かけたフードの2人組、その時は2人とも白いフードだったのに、今では白
last updateLast Updated : 2025-06-29
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陽動作戦

 時は少し遡り、序列大会の前日。  レイ達4人は序列大会に向けての最後のミーティングを行っていた。「さて、この2年間の間で完璧とは行かないまでも、出来うる限りの仕上がりには持ってこれました。よく諦めずにここまで来れましたね」 労いながら純粋に感心するニイルに、やる気に満ちた顔で答えるレイ。 「当然よ、今更諦める訳無いじゃない。言ったでしょう?強くなる為なら何だってするわ」 今、4人は潜伏場所として選んだザジの家に滞在している。  ここは他国どころか大陸すらも別なので、ニイルの予想通りここまで追っ手が迫る事は無く、修行に専念する事が出来た。「度々セストリアに潜入し調査しましたが、明日はかなりの人数が序列大会に参加するそうです。ほとんどの参加者には後れを取る事は無いでしょうが、恐らく強敵も混じっているでしょう。決して油断しない様に」 この2年でレイは常人よりも大幅に成長した。  体も成長し、知識も増え、何より経験値と生まれついての類まれなセンスにより、今や人類の中でも上位の強者と呼べるだろう。  しかし、神性付与保持者やそれに準ずる力を持つ者には苦戦を強いられるだろうし、何より…… 「ルエルを相手取るには荷が重すぎる。正面切って勝利するのはまだ難しいでしょうね」  と、忌憚のない意見を述べるニイル。 それに対し、苦虫を噛み潰した様な顔で、しかし反論せず頷くレイ。 「そうかもしれないわね。今だからこそ分かるけど、彼と本気で戦ったなら今の私では歯が立たないと思う」 そう、強くなったからこそ相手との力量差をハッキリと自覚出来るようになった。  恐らくルエルの実力は、ニイルレベルの化物だろうとレイは想像していた。 2年ではどうしてもそのレベルに迄引き上げるだけの時間が足りなかった。  相手の実力を認め、自分との差を明確に認める事もまた、強くなる為の秘訣という事はこの2年の間で痛い程学んだものだ。  しかし、レイも決して遊んでいた訳では無い。  この2年で新たな技を習得し、更なる力も得た。  これを用いて作戦がハマれば或いは…… 「奴を倒しうる可能性があるのも確かです」  ニイルは確信を持って言うのだった。「なので彼と戦う時の作戦ですが、以前にも説明した通りなるべく油断させた状態で彼の前に現れたいですね
last updateLast Updated : 2025-06-30
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第2回戦

 トーナメントが発表され、インターバルの後に第2回戦が始まった。  レイの対戦相手はこの街ではそこそこ有名な冒険者らしい男だったが、危なげなく勝利し次にコマを進める。 自分の試合が終わり控え室に戻る通路にて、次に出場するニイルを見つけるレイ。(お疲れ様でした。そこそこ強い相手だった筈ですが、今の貴女には相手になりませんでしたね)  労いの言葉を通話魔法にて投げ掛けてくるニイルに、他人のフリを貫きながらレイは言う。 (あの程度だとせいぜい準備運動位にしかならなかったわ。でも、今後も油断は出来ないわね) 少し見ただけだが、レイが敗北する相手は居ない様に思えた。  何人か苦戦しそうな相手は見受けられたが、負ける程では無いだろう。  しかし、今大会は裏の人間も多数出場しているという。  自分の実力を完全に隠している強者が居るかもしれない。  そう、例の彼女の様に。(さっきの話だけど、本当にあのスノウって子は神性付与保持者なの?)  恐らく自分と同年代であろう年頃の女の子が、実は人類最強格かもしれないとは、にわかに信じ難い。  レイはニイルに改めて質問する。  完全に自分を棚に上げているレイに、少し呆れながらもニイルは答えた。 (まず間違いないでしょう。何故そんな人間がこの様な場に居るのかは分かりませんがね) 神性付与保持者とは、ごく一部の人間しか知らず、その他の人間は言わば都市伝説の様な物として考えているのがほとんどである。  しかもそれは裏社会の人間だけで、表には話題にすら上がらない程の機密情報っぷりだ。  レイも自分で目の当たりにする迄知らなかった事から、一般人が知る事はまず無い事柄である。  そんな人間がこの大会に出場する意図が汲み取れず、不気味に思うのは仕方の無い事だろう。  下手をするとルエルの仲間の可能性や、他国からの侵略者等、様々な可能性が考えられる。 しかし何よりも不安なのが…… (貴女の次の対戦相手だという事です。第1回戦を見たところ、通常でもかなりの実力がありそうでした。使わないとは思いますが、もし仮に神性付与迄使われたら、この計画は破綻するかもしれませんね) 神性付与の前に敗北した2年前と違って、今では|神性付与保持者《セル
last updateLast Updated : 2025-07-01
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ダークホース

 前回大会優勝者のゴゾーラムが敗北し、観戦していた者達が動揺する中、会場では更なる衝撃が襲いざわめきが一段と増していた。  というのも同時に行っていた別の対戦カードでも、大番狂わせが起こっていたからである。「ハア……ハア……ハア……」  疲労困憊、深手は無いものの数多の傷を作り肩で息をしているのは、ゴゾーラムに次いで優勝候補であるダリウム。  相対するは、1回戦でゴゾーラムと激しい戦いを繰り広げていたスノウであった。  今にも倒れそうなダリウムに対し、スノウは多少の傷は有るものの、余裕の様相を呈している。(やはり……強い……)  これまでの人生、常に自分より強者が先頭に立つ環境に居た。  故に慢心も驕りも無く、常に研鑽を積んできた。  今回の相手も、強者と判断し油断無く挑んだつもりだった。  しかしこれ程実力に開きがあるなど、全くの想定外だとダリウムは歯噛みする。 お互い高速戦闘を主とする戦い方であり、開始直後は速度においてはほぼ互角であった。  しかしスノウが一撃の重さ、更に反応速度もダリウムを大きく上回っており、戦いが長引くにつれダリウムが押され始めたのだ。(私の剣すらも躱すあの反応速度。にも関わらずゴゾーラム並の力でもってガードの上からでも削られる、か。極めつけは……) ダリウムの予想ではあるが、恐らく彼女はまだ本気を出していない。  それに気付いたのはダリウムが押され始めた時だ。  一撃の鋭さはこちらに軍配が上がった様で、あの驚異的な反応速度を持ってしても躱しきれない攻撃を、何度か撃ち込むことには成功している。  にも関わらずスノウのスピードもパワーも、落ちるどころか上がってきているのだ。  一瞬の判断ミスが敗北に直結する、高速戦闘の最中であるにも関わらず。 これ程の強者はこの国、いや、世界で見ても中々居るものでは無い。  もしかしたら自分が目標とする騎士団長より強いかもしれないと、嫌な想像をしてしまう。 そんな妄想を振り払い、改めて集中するダリウム。  相手が強者だからと諦めるなど、他の騎士団員に示しがつかない。  そして何よりも相手に、そして自分自身に……「負ける訳にはいかないんでな」  そう呟き、呼吸を整えるダリウム。 その様子をじっと見ていたスノウだったが、満足気に頷くと剣を掲げ叫んだ。 「流石こ
last updateLast Updated : 2025-07-02
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第3回戦

 レイとニイルの両名が無事勝ち残り、少しのインターバルの後、3回戦目が開始された。  控え室にて自分達の出場を待つ選手達に混じり、レイとニイルも通話魔法にて作戦会議に勤しむ。 今回の議題は次の試合、レイとスノウの試合について、である。  今までは特に対策せずとも勝ち上がれたが、流石に今回の相手には入念な準備が必要だとのニイルの判断であった。  レイは自分の得物の手入れをしながら、ニイルの言葉に意識を割く。(先程の会話ではほとんど何も得られませんでしたが、2回戦目を見るに速度重視の魔法も使える剣士、という印象でしたね)  貴女と同じ戦闘スタイルですね、と、続けるニイルに同意するレイ。 (違いといえば私が雷魔法メインなのに対し、あの娘は水魔法、その中でも高等魔法の氷を使う事ね) スタイルが似ていても、使う魔法が異なれば戦略は全く変わってくる。  恐らくだが、レイは雷で自身を更に加速させるのに対し、スノウは氷による相手の動きへの阻害であろう。  どちらも速度を重視しているが、アプローチは真逆であった。(でもそれ以外はほとんど一緒よね。まさかこんな所で私以外にも多重発動が使える人間が居るとは思わなかったわ)  先程の試合の最後、スノウは身体強化魔法と魔法装填の多重発動を行っていた。  レイと全く同じであるが、ここに2人の差が有るとニイルは言う。(スタイルは一緒でも、内容の質がこちらの方が上だと思います。というのも、恐らくですが向こうは略式を使えないか、使えるとしても実践レベルには達してはいないと予想出来るからです。先程の試合でも魔法陣を描いていましたからね) その言葉に、レイも先程の試合を思い出す。  確かに、発動までのスピードは一流と呼ばれる者達と遜色ないレベルだったが、それでも魔法陣を描いていた。  この2年間で略式魔技を会得したレイと魔法陣を使用するスノウでは、その差は致命的な弱点足りうるかもしれない。 そこまで考えた所でニイルが続ける。 (もう1つ、魔法陣の書き換えです。あの魔技を使える者はほとんど居ない、失われた技術です。今ではごく一部の者しか使えず、私はその者達を知っています。故に、彼女がそれを使える可能性はほぼ無いでしょう) 確かに、あの魔技はニイルと出会い、初めて知った物だった。  独学で魔法を学んだ時も、武者修行と
last updateLast Updated : 2025-07-03
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