Masuk「これ以上は危険過ぎるわ!残念だけど今日のところは引き上げましょう!」 暴風雪の中、必死に声を荒らげて一同に提案するルヴィ。 最早至近距離でも、声どころか姿すら見失う程。 先程フィオが展開した魔法が、完全に意味を成していなかった。(魔法すら貫通してる!?やっぱり普通の天候じゃないわ!) レイはその状況に確信を得るが、今はそれどころでは無い。 魔法すら効かない吹雪なのだ。 この瞬間にも体温は奪われていき、手足の感覚は無くなりつつある。 完全に動けなくなるのも時間の問題だろう。 故に全員がルヴィに同意し、手を繋ぎ1列で元来た道を戻り始めた。 今や、自身が何処にいるのかすら分からない状況である。 しかし幸いな事に、天候が荒れだしてからほとんど移動していない。 記憶と感覚を頼りに、雪を掻き分けながら進むルヴィ。(呼吸をするだけで肺が痛い!その所為か意識も朦朧とし出している……このままだと魔法の発動に影響が……)「はえ?うぶっ!」「えっ?わっ!」「うわわわわっ!ぐえっ!」 移動してすぐに酸素が行き渡らなくなってきたのか、目眩を覚えるレイ。 これ以上は魔法の展開すら困難になると危機感を覚えた直後、前に居たルヴィがすっぽ抜ける様に前方へ転がる。 手を繋いでいた事もあり、突然の出来事に対応出来ず積み重なる様に倒れる3人。 最後尾に居たランシュだけは無事に着地を成功させたが、困惑しているのか首を傾げていた。「うぅ……重……」「く、苦しい……」「わぁ!?ご、ゴメン……ね……?」 下2人の怨嗟の声に、急いでその場を退くフィオ。 しかし、謝罪の声が途中で途絶えてしまう。「な、何よコレ……」「透明な、壁?それにこの天気は&hel
「くっ……!」 突然の眩い光が一行を襲う。 目も開けていられぬ程の閃光が、徐々に勢いを無くしていき…… そしてレイが再び目を開けると、そこには先程までと変わらない光景、いや、少しだけ変化した光景が広がっていた。 1番の変化は部屋の大きさだろう。 石碑が置かれているこの部屋が、先程よりも一回り程大きくなったと感じられる。「ここは……」「えぇそうよ!ここがノスエラ城の地下!セプテリオ大陸1の大国、ノスエラの王都よ!」 そのレイの違和感に答える様に、ルヴィが手を広げて言う。 あまり変化の感じられない見た目故に実感が薄かったのだが、どうやら転移は無事成功したらしい。 それに興味深げに周囲を観察していたレイだったが、確かに石碑に刻まれた紋様が、先程と少しばかり違っていた。「そうだ、フィオは?大丈夫?」「全然!これ位なら問題無いよ!」 感心して少し惚けていたレイだったが、今回の功労者を思い出し振り返る。 しかし当のフィオはいつもと変わらず元気いっぱいであり、その様子に安堵のため息を吐いた。「大丈夫そうならとりあえずここを出ましょう。話の続きは実物を見ながらの方が分かりやすいわ」 全員の状態を確認した後、ルヴィが先導する。 レイ達がその後に付いて行き部屋を出ると、外には門番であろう兵士達の姿が有った。「おや、ルヴィーネ様。随分お早い到着ですな?何事かと思い少々焦りましたぞ」 兵士達もルヴィに気付いたのだろう。 1人が駆け寄り話し掛けてくる。「ごめんなさい、予定よりも早く人手が集まってね。私は陛下にご挨拶してくるから、誰かこの人達を裏口まで案内してくれるかしら?」「ハッ!かしこまりました!」 ルヴィが謝罪しつつ手早く事情を説明すると、兵士は納得したのか敬礼し、レイ達を先導する様に歩き始めた。「という訳で先に行っててちょうだい?それとも一緒に国王陛下の元に行く?」
正式に依頼を受領した後、話し合いは解散となった。 その後すぐに食事が用意され、明日の準備を整えて就寝したレイ達。 残念ながらルヴィは夜遅くまで次の日の準備が有るとの事で、全く会話が出来なかったのがレイの心残りではあったのだが。 そんなこんなで翌朝。 召使いに起こされ、支度を済ませたレイ達が食堂へ赴くと、豪華な朝食とルヴィが待ち受けていた。「おはよう。昨日はよく眠れたかしら?」「おはよう。お陰様でね。今朝も凄い豪勢ね」 レイが並べられた朝食を見て苦笑する。 昨夜の食事の時にも思った事だが、辺境伯というだけあり、この家の食事はかなり豪華だとレイは感じていた。 別に迷惑という訳では無いのだが、あまりの品数に面食らってしまう。「そうかしら?まぁこれから危険な旅に出るんだもの。英気を養ってもらわなきゃ」 そう言いながらルヴィが席に着き、残りの面々もそれに倣う。 そこで意外な事実が判明する。 用意された料理は、頑張ってようやく食べ切れる程の量だった。 レイやフィオはもちろんだが、大食いで有名な獣人族であるランシュも、大変珍しいがそんなに多くは食べない。 唯一、男性であるニイルが女性陣より少し多めに食べるというのが、このパーティの食事風景だったのだが。 なんとルヴィは、レイ達の倍以上の量をあっさりと平らげていたのだ。 昨夜は忙しく一緒に食事を取れなかった為、その光景に思わず動きが止まる3人。 その間にもルヴィは用意された品を次々と平らげる健啖家っぷりを披露していた。(もしかしてディードに並ぶ程食べているんじゃないかしら?あれだけ食べてあのスタイルを維持しているのは、最早一種の異能ね……) レイが見てきた中で、1番食事量が多いと感じたのはディードだった。 その姿を幻視する程の光景に、思わず胸焼けしそうになるレイ。「ふぅ……ご馳走様。あら?もしかして口に合わなかったかしら?あまり進んでない様だけど…&hel
「お父様は出掛ける前に、ダンジョン調査に行ってくると言っていたのよ。ほら、ダンジョンって魔獣が出たり罠があったりするらしいじゃない?だから心配で」 ルヴィの言葉に、だから少数精鋭で向かう必要が有るのかと納得したレイ。 ダンジョン内なら、大人数で向かったとしても寧ろ動き辛くなる。 そう判断しての采配かと、感心していたのだが。「嘘……」 そう言って、思わず立ち上がったのはフィオ。 ランシュの方も、珍しく驚きの表情を浮かべていた。「ど、どうしたの2人共?ダンジョンに行くのが、そんな不自然な事?」 レイが宥める様に言うが、フィオは聞こえていないのかルヴィに詰め寄る。「ダンジョン?ダンジョンって言ってたの!?本当に!?」 その気迫に押されながら、ルヴィは答える。「え、えぇ……確かにそう言って……」「嘘だよ!だってこの大陸に、ダンジョンが有る筈が無い!」「え?」「フィオ?それってどういう……」 困惑するルヴィとレイを目の当たりにして、ようやく落ち着きを取り戻したフィオ。 座り直して深呼吸し、混乱している2人に語り出す。「2人は勘違いしているかもだけど、実はダンジョンってそんなに数は多くないの。だから私達もここ、北大陸に来た事は無かった」「そうなの?」 レイの問いに頷くフィオ。 そこで今度はルヴィが疑問を投げ掛けた。「で、でも……ダンジョンって誰がいつ作ったか分からないんでしょ?一説には、この星が生み出してるんじゃないかっていう説もある位だし。いつの間にか出来てるなんて事も有るんじゃない?」 しかし、今度は首を横に振り否定するフィオ。「ダンジョンはそんなん|
話は纏まったという事で、早速場所を移動するレイ達。 道中でもルヴィは沢山の住民に声を掛けられていた。 本当に、住民からの人気は高いのだろう。「ここが私の家よ」 そして歩いてほんの少しの距離。 船を降りた直後からでも見えていた、一際大きい屋敷へと案内される一行。 そこで何人かの召使いに出迎えられた。「おかえりなさいませ、お嬢様。そちらの方々は?」「ただいま、こちらは私の友人達よ。例の件はこの人達に手伝ってもらうから、もてなしてあげてちょうだい」 そうしてルヴィは数人に指示を出した後、レイ達に屋敷内の案内を始めた。「3人ならここの部屋を使ってちょうだい?それとも1人1部屋にした方が良いかしら?」「いえ、このままで良いわ。ありがとう」「そう?何かあれば屋敷の者に遠慮なく言って。必要な物とかも可能な限り用意するから」 案内された部屋はかなりの大きさを誇っており、3人が過ごすには十分な広さを有していた。 信用していない訳では無いが、バラバラにされると有事の際に動き辛くなる。 レイはルヴィの提案を断り、その部屋に荷物を置くのだった。「じゃあお互い急いでいる様だし、早速で悪いけど話をしましょうか。付いてきて」 それを確認したルヴィはそのままそう言い残し、部屋を後にする。 レイ達も疲れは残っているが、悠長にしていられる訳では無い。 特に反論することも無くルヴィに従い、部屋を出た。「ここよ。まずは座って?今お茶を用意するわ」 通されたのは、とある大部屋。 内装を見る限り、どうやら応接室として使っている部屋だろう。 そこに、先程の召使い達数人が控えていた。 各々が用意された椅子に腰掛けすぐ、部屋がノックされ召使いがお茶を持って現れる。 全員に行き渡り一息ついたところで、改めてルヴィが話を切り出した。「実は人探しを手伝ってほしいのよ。もちろんさっき言った通り、協力してくれるならこちらも援助はするし、報酬だって支払うわ」
「レイ!本当にレイなのね!?久しぶり!なんでこんな所に?」 お互い予想出来なかった再会に、レイの手を握り大はしゃぎするルヴィーネことルヴィ。 レイも同じく内心では歓喜していたが、それと同じ位に困惑しており、思わず口を開いた。「確かに久しぶりね。一目見た時分からなかった……」 そう言いながら改めてルヴィを見ると、ここ数年でかなり大人びた様に思える。 顔立ちは大人の女性という感じに育ちつつ、以前からあった可愛らしさはしっかりと残っている。 どちらかと言うと、綺麗というより可愛いという表現が似合う、そんな印象を受けた。 レイが可愛いよりも綺麗という印象を受けがちな顔立ち故に、それが少し羨ましく感じるのだった。 しかし何よりも羨ましい、いや、寧ろ妬ましく感じるのはその豊満に育った胸だ。 レイも決して小さくは無いのだが、ルヴィと比べると明らかに格差が見受けられる。(でも常に彼女達を見てるからか、そこまで驚きはしないわね) 内心でそう独り言ちて、横目でランシュとフィオを見るレイ。 族獣人だからか、ランシュはレイが出会った女性の中で2番目にスタイルが良く、フィオは人族森故に顔立ちがとても良い。 お陰で、美少女に対する耐性が付いていると自負していた。 まぁ、レイ自身もその美少女の内に入っているのだが……「レイ?」「あ、あぁごめんなさい。あまりに綺麗になってたから思わず見惚れちゃったわ」 しかし自分には無い物には目を惹かれるのが、人間の性というものだろう。 思わず胸に視線が釘付けになっていたレイが、ルヴィの声で我へと帰る。「と、突然何言い出すのよ。美少女が言ったところで皮肉にしか聞こえないわ」 いきなりの賛辞に思わず照れつつ、レイをジト目で見つめ返すルヴィ。 隣の芝生は青いという事だろう。 ルヴィもレイに対して、嫉妬の感情を抱いていたのだった。 そんな些細な事に少し嬉しくなりつつ
「神性付与?」 聞いた事のない単語に訝しむレイ。 だがハッタリで無い事だけは確かだ。 何せ先程までと明らかに重圧が違う。「裏の界隈じゃ有名だぜ?神に選ばれた方々から賜る特別な加護、それが神性付与だ。俺は偉大なるルエル様より賜ったのさ!」 確かにレイは裏社会に精通している訳では無い。 しかし、仮にも今まで生き抜く為に裏も利用してきた。 いわゆる善良な一般市民とは違うという自覚はある。 その自分すらも知らないという事は、余程重要な意味合いを持つのであろうという事は容易に想像が出来た。「これを使うのも随分と久しぶりだ!それこそ人間
段々と近付いてくる港の景色に、思わずため息を吐くレイ。 頭では理解していても、やはり無事に辿り着くまでは無意識に緊張していたのだろう。 心身共に、力が抜けていくのを感じるのだった。「あん?なんか騒がしくねぇか?」 しかし見慣れた風景だからこそ、ディードが1番に気付く。 港に居る人数と停泊してある船の数が普段より多く、そして慌ただしい。 急いでどこかに出立しようとしている、そんな雰囲気を感じられた。 何か問題が発生したのだろうか。 気が逸りそうになるレイだったが、呆れを滲ませたニイルの
「本当にそんな魔法あんのか?俺は魔法には詳しくねぇが、そんなのがあるならあの『傲慢』野郎が黙ってねぇぞ?」「残念ながら、その『傲慢』を追い詰めたのがこの魔法よ。だから威力も保証するわ」 ニイルから作戦内容を聞き、にわかには信じがたいと言うディードに、レイが反論する。 序列大会の時を思い出しながらレイが語ると、それに思わずといった様子でディードが吹き出す。「うはは!マジかよ!?そりゃあの腹黒もテンパったろうなぁ!その時の奴の顔を拝みたかったぜ!」 その様子に、ルエルの嫌われようを垣間見て笑みが溢れそうになるレイ。
「大昔、アタシ達がまだ子供だった頃、アタシ達はとある孤児院で育ったの」 フィオは静かに、そう語り出した。 その横顔をレイは眺め続ける。「その頃は今のアタシ達3人以外にも沢山の家族が居てね。見ての通りアタシ達は血の繋がりも無くて、種族すらバラバラだったけど、それでも皆仲良く暮らしてたんだ」 それでようやく合点がいったレイ。 何故ニイルや獣人族のランシュを、森人族のフィオが兄妹と呼ぶのか。 それは過去に、家族として本当に過ごしていたからなのだと。「その時は知らなかったんだけどね。実はそこは色んな所から様々な事情を持った子供達が集められ







