紗夜は今日はシルクのロングドレスを着ていた。薄い生地越しに、文翔の手が触れた瞬間、くすぐったさが走る。紗夜はそっと身を引いたが、文翔の手は彼女の脚に置かれたまま動かず、「そんなに距離を取ってどうする。ただ薬を塗るだけだろ」と言った。「それとも長沢奥様は――俺に何かしてほしいのか?」文翔が眉を上げ、からかうように問いかける。「そ、そんなことないわ!」紗夜は反論し、頬がわずかに熱くなる。彼女のその戸惑いぶりを見て、文翔は口元をわずかに弧にし、腕を彼女の脚に横たえた。「なら包帯を巻くぞ」同時に、中島が車を発進させ、京浜へ向かう。窓の外の景色は後ろへ流れ、林を抜けたあたりで陽光が遮られ、車内が一気に薄暗くなった。文翔の顔は半分ほど影に沈み、鋭い線の形がより浮き立つ。整った顔立ちに深い陰影。ジャケットは無造作に脇へ置かれ、黒いシャツの第一、第二ボタンが外されているせいで、品の良さの中に気だるい色気が混ざり、まるで見る者を底なしの深みに引きずり込むような引力を纏っていた。美しい人間は、みんな危険だ。紗夜はそっと唇を噛み、すぐに視線を反らす。薬箱を開け、綿に消毒液を染み込ませ、乾いた血を拭いながら治療を続ける。だが、うっかり傷口に触れてしまった。「っ......」隣の男が鋭く息を飲む。紗夜は慌てて力を弱め、手早く薬を塗り、包帯を巻き、最後に小さなリボン結びを作った。そのリボンを見た文翔は、鼻で小さく笑う。「ガキかお前」「嫌なら自分でやれば」紗夜が小声でぼそり。「今なんて?」文翔が横目で見る。紗夜は返事をせず、薬箱を片付けようとしたが、文翔が手を伸ばして蓋を閉め、そのまま彼女の手首を掴んで一気に自分の方へ引き寄せた。その瞬間、前方で大きくカーブ。紗夜はそのまま勢いよく文翔の胸に倒れ込んだ。「っ......!」額が彼の硬い胸にぶつかり、紗夜は思わずお腹を庇うように手を添える。しかし、彼女の手が触れたのは文翔の手の甲だった。文翔が彼女より先に、その腹を守るように手を当てていたのだ。温もりが掌越しに伝わり、紗夜のまつ毛がわずかに震える。車はカーブを抜け、動きが落ち着いた。紗夜が顔を上げると、文翔もまた彼女を見ていた。視線が絡んだ一瞬、彼の手が彼女の腹に触れた
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