「長沢奥様の誕生日パーティーでオープニングダンスを踊るなんて、よほどあの女性のことを気に入っているのね」「本当よ。長沢奥様のあの眼差し、まるで宝物を見るみたいだったわ」「しかも一緒に踊るのが長沢社長なんて、二人の関係がただならぬことを証明してるようなものでしょ?」「長沢社長には息子がいるって聞いたけど、その母親が誰なのかはずっと明かされてなかったわよね。もしかして、あの人がその母親で、将来の正式な『長沢家の若奥様』なんじゃ......」「あんなに綺麗で優秀な人だから、長沢社長が人目に触れさせたくない気持ちも分かる。羨ましいわ......」......周囲のそんな憶測めいた声を耳にしても、紗夜の表情はほとんど変わらなかった。けれど、満晴はもう我慢できなかった。女がどんな見た目だろうが才能があろうが、既婚者の家庭に手を出すなんて絶対に許されない!それなのに今、その女は文翔と一緒にオープニングダンスを踊ろうとしている。まるで「自分こそが本物の長沢家の若奥様」だと、皆に誤解させようとしているようなものじゃないか!「厚かましいったらないわ!絶対に一発お見舞いしてやる!」満晴は拳を握りしめて前に出ようとしたが、紗夜が彼女の腕を掴んで止めた。「お義姉さん?なんで止めるの?」満晴は不満そうに言った。彼女は正義のために立ち上がろうとしているのに。「落ち着いて。ここは一応、長沢家のパーティーよ。あちこちから注目されてるんだから」紗夜は静かに諭した。もし本当に満晴がここで彩に詰め寄って騒ぎを起こせば、雅恵の誕生日会を台無しにするだけでなく、長沢家全体の面子にも傷がつく。そんなことになれば、長沢家の実権を握っている隣一が黙っているわけがない。隣一は何よりも家名を重んじる人物で、地位も影響力も絶大。彼に睨まれれば、たとえ満晴でも無事では済まない。だからこそ、「穏便に済ませるに越したことはない」と紗夜は判断し、満晴にもそう伝えた。その言葉に、満晴もようやく冷静さを取り戻した。何が起こるか分からないまま突っ走るのが良くないことは彼女も理解していた。ただ、どうしても納得がいかなかった。裏切られたのは紗夜の方なのに、どうして彩が堂々と表舞台に立って、勝ち誇ったような顔をしていられるのか。しかもその
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