個室で食事ができるよう事前に予約していた。着席すると。加賀美先生はすぐに本題に入った。「宇宙衛星を今年中に完成させる必要があるが、主任技術者が一人足りないんだ」加賀美先生は机を軽く叩き、向かい側に座る真衣を深く見つめた。「君は衛星軌道の計算が得意だね。私のところに戻ってプロジェクトに参加しなさい」「安浩、お前に主任技術者を務めてほしい。遅くとも年末までに衛星を軌道に打ち上げる予定だ」真衣の胸がざわめき、まだ反応できずにいる。加賀美先生は自分を起用するつもりなのかな……「加賀美先生、私は……」真衣は湯呑みを握る手に思わず力を込めた。航空分野ではそれほど大きなプレッシャーはなかったが、宇宙開発分野では、より精密な計算と多くのエネルギーが必要になってくる。「どうした?」加賀美先生は鋭い視線を真衣に向けた。「何か言いたいことでもあるのか?」「長く宇宙開発分野から離れていたので、無事業務をこなせれるかが心配です」「いつからそんなに自信がなくなったんだ?安浩がついているじゃないか」加賀美先生は静かにお茶を啜り、重々しい口調で言った。「大したことではない。我が国は毎年多くの衛星を打ち上げている。安浩と一緒に手慣らしをして、少しずつ慣れていけばいい」「お前の専門は宇宙開発分野だ。いつかロケットを打ち上げるときには、君が主任技術者になるかもしれない」加賀美先生は真衣に常に大きな期待を寄せている。「もちろん、お前たちには九空テクノロジーの方にも集中してほしい。真衣は子供の面倒も見なければならないし。千咲は頭が良いから、真衣が忙しい時は私が面倒を見よう」「最近千咲は数学オリンピックの勉強をしているそうだな?」真衣はハッとし、頷いた。「はい」「千咲を第五一一研究所に連れてきなさい。私が教えるから、お前は衛星の仕事をしっかりやってくれ。ただ、お前の立場が特殊だから、プロジェクトには安浩と第五一一研究所の名前しかのらないけど、それで不満や不公平に感じることはないか?」加賀美先生は真衣の不安を前もって取り除き、安心させようとしている。真衣は今、不満を持っているどころか、ただ恐縮しているばかりだ。加賀美先生がここまで自分を重宝してくれるとは思ってもいなかったから、こればかりは感謝してもしきれない。多くの学生
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