「正直、がっかりしたんです。朝比奈先生の妹さんだっていうから、もっとしっかりしていると思ってたんですけど、期待外れだったみたいですね。……って、ああ、ごめんなさい。本当の妹さんじゃなかったんでしたっけ」「っ、どうして、それを?」 前半の言葉だけでも十分きつかった。妹失格の烙印を押され、胸に鋭い刃を突き立てられたみたいだ。 だけど後半を聞いた瞬間、意識を全部そちらへ持って行かれる。 なぜそのことを知っているのか。私は思わず訊ねていた。 アイラインを強めに引いた目元を細め、新庄さんがふふっと笑う。「さぁ、どうしてかしら?」 挑発するような声音。 ――なぜ? 私と兄が実のきょうだいでないことを知っているのは、親戚を含めたごく限られた人たちだけのはずだ。 両親も兄も、混乱を避けるために、私が里子であることを他人に言ったことはない。それなのに。 困惑する私を楽しむように、新庄さんはさらに瞳を細める。「血がつながっていないんじゃ、不出来でも仕方ないですよね。でも、この病院のスタッフは、みんなあなたを『本当の妹』だと思ってる。だからお兄さんの顔に泥を塗らないように気を付けることね」 丁寧な口調なのに、言葉の棘は鋭かった。ぐっと肩に手を置かれた瞬間、ぞくりとする。「――みんなが『本当の妹』だと思ってるうちは、それに見合う努力が必要でしょ?」 耳元で低く囁く声は氷のように冷たく、それでも顔は柔らかく微笑んでいる。その矛盾に背筋が凍りつく。 新庄さんは優雅に踵を返すと、何事もなかったように廊下を去って行った。 あまりの衝撃で、私は立ち尽くしたまま動けないでいた。 鼓動が乱れ、呼吸が浅くなる。「瑞希~? あれっ、先に行ってたんじゃなかったの?」 背後から翠の声。慌てて振り返る。「あっ、うん……ごめん、ちょっと考えごとしてて」 必死に笑顔を作る。 まだ心臓がバクバク
Last Updated : 2025-08-22 Read more