บททั้งหมดของ 禁愛願望~イケメンエリート医師の義兄に拒まれています~: บทที่ 51 - บทที่ 60

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【13】⑤

「お兄ちゃんが、愛莉さんを死なせた……? どういうこと?」「……愛莉は脳の病気だったんだ。子どもが発症すると発見が遅れることが多くて……愛莉もそうだった。ある朝、食卓で突然倒れて、そのまま救急車で運ばれて……前日まで普通に学校に行っていたのに」 記憶をたぐるように話していた兄の声は、次第に掠れていった。「で、でも、それならお兄ちゃんのせいじゃないよね?」 容体が急変したのなら、誰にも防げなかったはずだ。 しかも当時、兄はまだ中学生。責任があるはずがない。けど兄は首を横に振った。「亡くなる少し前から『頭が痛い』『気持ち悪い』って訴えていたんだ。でも俺は軽い風邪だと決めつけて、まともに聞かずに流してしまった」「そんなの……仕方ないよ。当時のお兄ちゃんは医師じゃなかったんだから。お父さんだって気づけなかったんでしょ?」 見つけにくい病気を、中学生の兄に見抜けるはずがない。現役の医師だった父ですら、気づけなかったのだから。「でも俺は、誰よりも愛莉と一緒にいたんだ。ぐずって『学校を休みたい』って言った日もあった。本当はつらかったんだろうに……それを『ズル休みしたいんだ』なんて思って取り合わなかった。今でもずっと悔やんでるよ」 兄の声が強まり、早口になる。 愛莉さんにとって、兄は私と同じように第三の親のような存在だったのだろう。 多忙な両親を気遣って深刻に受け止めなかった自分のせい――そう思い込んでいるのかもしれない。 後悔に満ちた声に、胸が締めつけられる。「もし学校を休ませて病院に連れていってたら……助かったかもしれない。俺が医師を目指したのは、父の影響もあるけど、一番は愛莉への償いのためなんだ」 潤んだ瞳で私をまっすぐ見つめながら告げる兄。「それから少しして、瑞希が来た。愛莉と同じ七歳で、似てると聞いていたけど&h
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【13】⑥

 するとその直後、兄がゆっくりと目を開け、再び顔を上げて私を見た。「瑞希は『置き換え』とか『代償』って聞いたことある? 心理学の用語なんだけど」「え……あ、ちゃんと勉強したことはない、かも」 唐突な問いかけに戸惑いながら、必死に記憶を探る。 医療系の本で目にした気もするけど、意味を説明できるほどの知識はない。 正直にそう答えると、兄は小さくうなずいた。「対象に向けられた心のエネルギーを、別の対象に向けかえることを言うんだ。……俺はきっと、瑞希をかわいがることで、愛莉を亡くしたつらさや負い目を忘れようとしたんだと思う。つまり」 一拍置いて、震える声で続ける。「俺が瑞希を好きだと思ったのは、自分を守るための錯覚なんだ」 言葉が胸に突き刺さり、場の空気が重く沈む。 兄の「好き」が一瞬で「錯覚」に変わり、持ち上げられた直後に突き落とされたみたいだ。 私の心情を察したのか、兄がさらに口を開く。「綾乃とのことを説明するには、自分の気持ちを隠したままじゃ難しかった。……俺は綾乃も傷つけた。絶対に結ばれない相手を好きになって、その現実から逃げたくて……綾乃と付き合うことにしたんだ。彼女が、たまたま俺にアプローチをしてくれたから。……最低だよな」 自嘲気味の声。私に向けられたのか、ただの独り言なのかはわからない。  けれど、彼の言葉には新庄さんへの後悔がにじんでいた。「直接伝えたことはないけど……なにかの拍子に、俺が想っていたのが瑞希だと察して、攻撃したのかもしれない。俺から綾乃に話をしてみるよ。……迷惑をかけて、本当に悪かった」 深く頭を下げると、兄はソファから立ち上がり、そのまま扉のほうへ歩き出す。「待って!」 兄が立ち去ろうとしたのを止め、私は思わず立ち上がった。「まだ話は
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【13】⑦

 兄は私のまなざしから逃げるように目を逸らし、すまなそうに眉を下げた。「さっきも言ったけど……俺の気持ちは愛莉への罪悪感から始まってる。愛莉に償いたいって思いが、瑞希を好きだと錯覚させてるだけなんだ」「わかんないよ。そんなの知らない。私は、愛莉さんの代わりじゃない!」 堪えてきたものが一気に溢れ出す。   実の妹の名を繰り返し突きつけられるたび、胸が押しつぶされそうに苦しくて、思わず声を荒らげた。「私は私だよ。『砂原瑞希』だよ。朝比奈家の長女でも、お兄ちゃんの妹でもない。戸籍上では他人同士なんだよ? 好き同士なら……許されるはずなのにっ……!」 愛莉さんの身代わりになったことなんて、一度もない。 彼女のことをほとんど知らなかったし、家族も私の前では語らなかった。 だからこそ、今さら「重ねて見ていた」と突きつけられるのはあまりにつらい。 言葉を重ねるうちに、目頭が熱くなり、涙がこぼれ落ちる。堪えようとしても止まらない。 兄も私を傷つけた自覚があるのだろう。視線を逸らしたまま、さらに低く言葉を継ぐ。「……瑞希への気持ちは、弱い自分を守るために作り上げた虚構なんだ。それを認めるのは、自分の弱さを認めることになる」  「私への気持ちが……虚構?」   ショックのあまり、かすれた声しか出なかった。兄は小さくうなずく。 「それに、瑞希だってわかってるだろ。俺と瑞希が想いを貫けば、周りにどれだけの影響を与えるか」  脳裏に、両親の顔が浮かぶ。   兄は覚悟を決めたように両肩に手を置き、強く呼びかけてきた。「父さんと母さんは――瑞希を本当に愛している。最初は愛莉に似ていたからかもしれないけど、今は関係なく『瑞希』を大事にしてるんだ」 肩をつかむ兄の手に力がこもる。   見上げれば、苦しげに眉根を
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【13】⑧

 大好きな兄と想いが通じ合うことで、不幸になると決めつけられたくない。「両親や周りにいやな思いをさせて、咎められたとしても?」「だとしても、私は」 ――たとえ受け入れてもらえなくても、兄と結ばれることだけは諦めたくない。「俺たちだけじゃなく、両親まで後ろ指を差されるかもしれないんだぞ?」「っ……」 反射的に「それでも」と返そうとしたけれど、冷静な兄の言葉に胸を突かれて声が出なくなる。 ……そうだ。これは私と兄だけの問題じゃない。 想いを貫けば、非難の矛先が両親にまで及ぶかもしれない。 そこまで考えていなかった自分に気づかされて、唇を噛んだ。 兄は小さく息を吐き、私の肩から手を離すと、少し寂しげに笑った。「そのためらいが答えだ。やっぱり、俺たちは忘れるべきなんだよ」「お兄ちゃ……」「これ以上は堂々巡りだ。……綾乃のことは俺からちゃんと話す」 そう告げると、最後に温もりを残すように私の頭を軽く撫で、兄は今度こそリビングを出て行ってしまった。 残された私は力なくソファに沈み込む。「っ……う、ううっ……」 涙が溢れて止まらない。両手で顔を覆い、声がもれないように必死に堪える。 けれど、さっき交わした言葉が何度も脳裏をよぎった。『……瑞希への気持ちは、弱い自分を守るために作り上げた虚構なんだ。それを認めるのは、自分の弱さを認めることになる』 兄は繰り返し「錯覚だ」「虚構だ」と言った。 ――私にとっては、「興味がない」と言われるよりもずっと悲しい。 今までの兄の優しさは、愛莉さんへの負い目からだったの? 私は、ただの代わりにすぎなかったの? ……そんなの、あんまりだ。
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-08-26
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【14】①

『私は、愛莉さんの代わりじゃない!』『私は私だよ。砂原瑞希だよ。朝比奈家の長女でも、お兄ちゃんの妹でもない。戸籍上では他人同士なんだよ?』 一昨日、瑞希に突きつけられた言葉を思い出すと、どうしようもなく苦しい。 ――俺は、確かに愛莉への罪悪感を抱いている。だが、そのせいで瑞希自身を愛莉の「代わり」だと思ったことは一度もない。 敢えて否定しなかったのは、そう思わせて幻滅されたほうが、瑞希にとっても俺にとっても楽だろうと打算したからかもしれない。 ……あんな言葉を言わせるなんて、ひどい兄だ。 いや、それ以前に。俺は自分に立てた誓いを自ら破ってしまった。 本当は、この想いは胸のなかに閉じ込めておくはずだった。けれど瑞希の悩みに綾乃が深く関わっていると知ったとき、黙っていられなくなったのだ。 新庄綾乃――実習の窓口を担う彼女は、普段は外科病棟の看護師。 彼女と付き合ったのは二年前。循環器内科から異動してきたのがきっかけだった。『朝比奈先生のこと、ずっと前から素敵だなって思ってました。先生さえよければ、お近づきになりたいです』 同僚からのアプローチ自体は珍しくない。 だが、綾乃ほどまっすぐに好意を示してきた人は初めてだった。 当時の俺は――瑞希以外の女性とのつながりを無理にでも作ろうとしていたのかもしれない。 ありがたいことに気持ちを伝えてくれる人もいたし、直感で「この人なら」と思えば付き合うこともあった。それでも、半年も続かずに別れてしまう。 理由は多忙によるすれ違い、そう説明してきた。本音は違う。   どうしても瑞希以上に大切に思える相手に出会えなかったのだ。 綾乃のときも「この人なら好きになれるかも」と思った。だから誘いに応じた。 食事を重ね、明るく前向きな人柄に好感を抱き、やがて交際に至った。  けれど半年も経たずに終わりを迎えた。切り出したのは、やはり俺からだった。 綾乃は悪くない。ただ、不誠
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【14】②

「……仕事のあとに急に呼び出してごめん。新庄さんに、聞きたいことがあって」 いたずらっぽく名前を呼び直された瞬間、彼女と恋人同士だったころを思い出す。 けれど俺はあえて一線を引いた呼び方をし、遠回しに拒絶の意を示した。「よそよそしいなぁ。プライベートなんだから、綾乃って呼んでほしい。あのころみたいに」 カフェオレに口を付け、小首をかしげて笑う綾乃。 本題に入ろうとする俺を、からかうように引き止めてくる。「俺たちはとっくに別れてる。今は、この距離感で接したい」 別れてから一年半。俺自身、綾乃に恋愛感情を抱いたことはなかった。それなのに馴れ馴れしくするのは違う。「でも、『気が済むまで想い続けてもいい』って認めてくれたのは漣でしょ?」「…………」 笑っていながらも、目の奥は鋭く光っている。まるで「それが条件だったはず」と告げるように。  たしかに了承したのは俺だ。勝手に別れを切り出した以上、彼女の希望を突っぱねられなかった。 別れてしばらくは近況を尋ねる連絡もあったが、返事を控えるうちに数も減り、気持ちは整理されたのだと思っていた。 ……瑞希から話を聞くまでは。 こうして面と向かってみれば、俺の思い込みだったのかもしれないと痛感する。「で、呼び出した理由は? あなたのかわいい妹ちゃんのこと?」 どう返すか言葉を探していると、綾乃のほうから核心を突いてきた。「……君を傷つけたことは申し訳なく思ってる。でも、瑞希に報復するのは違う」 なぜ綾乃が瑞希を攻撃するのか、確信はまだ持てていない。  一昨日までは「俺の想い人が瑞希だと気づかれたのかもしれない」と思ったが、そんなことを綾乃に伝えるはずがない。 だとすれば、やはり俺への恨みか。結果として瑞希まで巻き込まれたのなら、本当に申し訳
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【14】③

 わかっててやった――というのは、どういう意味だ。「そんなおどろいた顔しないで。いけないことだってわかってる。でも、私がずっとほしくてたまらないものを持ってる子なんだもの。いじわるくらいしたくなるよ」 考えが顔に出ていたのだろう。綾乃が意味ありげに笑い、目を細める。「ほしくてたまらないもの……?」「漣の気持ち。漣がずっと好きだったのって、瑞希さんでしょ?」 ズバリ言い当てられて心臓が跳ねた。 可能性は予想していたはずなのに、真正面から告げられると動揺を隠せない。 だが、これは俺だけでなく瑞希にも関わる話だ。認めるわけにはいかない。「……なに言ってるんだ。俺たちはきょうだいだよ」「『血はつながってない』って教えてくれたのは、あなた自身でしょ?」 確信を得ているような強い口調。綾乃は「もうすべてわかっている」と言わんばかりに笑った。「隠さなくていいよ。瑞希さんと話してるときのあなたの顔、本当に優しくて、眩しかった。心底うれしそうで――あんな表情、私の前では見せてくれなかったよね」 確かに、瑞希と綾乃が一緒にいた場面に俺が通りかかったことはあった。彼女にはそう映ったのかもしれない。「ずっと不思議だったの。『好きな人がいる』ってフラれたのに、どうしてその人に告白しないんだろうって。漣なら想いを伝えられるはずだし、振り向かない人なんていないだろうにって」 ソーサーを指でトントンと叩きながら視線を落とす綾乃。 やがて顔を上げ、射抜くように俺の瞳を見据えた。「――できなかったんでしょ。妹だから。血はつながってなくても、家族だから」「…………」「否定しないのは、事実だからね」 そこまで察されては、言い訳など無意味だ。 沈黙する俺に、綾乃がさらに念を押す。俺は小さくうなずくしかなかった。 すると、彼女の表情
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【14】④

「…………」 綾乃はしばらく沈黙した。 俺の懇願をどう受け止めるか――受け入れるか、それとも憤りを抑えているのか、そのどちらとも取れる沈黙だった。「……本当に、瑞希さんが大事なのね」 やっと口を開いた声は、怒りというより感心に近かった。 考えてみれば当然だ。綾乃はずっと俺に好意を示してくれたのに、俺は応えられず一方的に別れを告げた。 そのうえ今こうして、彼女の感情を顧みることなく「瑞希に手を出すな」と求めている。「新庄さん、君を振り回して傷つけたのは本当に――」「いつまでも他人行儀な呼び方はやめて!」 謝罪の言葉を口にしかけた瞬間、彼女は弾かれたように声を張り上げた。「絶対に結ばれないってわかってるなら、早く忘れたらいいじゃない! そうでしょう? 叶わない相手を想い続けるなんて、不毛すぎるもの」 顔を上げると、濃いアイメイクに縁どられた瞳が強く俺を射抜いていた。その奥が、一瞬だけ寂しげに揺れる。「……ねぇ、私じゃだめなの? 好きじゃなくてもいい。それでも、この先少しでも好きになってくれるかもしれないなら……もう一度、私を選んでよ」 それは怒りではなく、哀願の響きだった。胸を締めつけられる。 交際していた頃も、彼女がここまで真正面から気持ちをぶつけてきたことはなかった。俺が「別れてほしい」の一点張りで、言葉を封じてしまっていたからだろう。 申し訳なさを覚えながら、俺はゆっくりと首を振った。「それはできない。君と別れたのは、自分にうそをつけなかったからだ。戻っても、同じことを繰り返す」 瑞希以外を心から想うのは難しい。それが理由で綾乃と別れた。 たとえ彼女の願いを受け入れても、結局はまた彼女を傷つけるだけだ。「……はっきりしてる。でも、あなたのそんなところも好きなの」 
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【14】⑤

 綾乃の言う通りだ。  もし瑞希が理不尽に追い詰められるとしたら、到底見過ごせない。 しかもその原因が瑞希自身の未熟さではなく、俺という存在に端を発しているのだとしたら――なおさら。「漣のこと、誰よりもしっかり見てるんだから、どう考えるかぐらいわかるよ。……で、どうするの?」 挑発というより確信めいた声音で綾乃が問う。 にこやかな口元とは裏腹に、その瞳は俺の一挙手一投足を見逃さない鋭さを帯びていた。 選択肢は二つしかない。 承諾するか、断るか。 どちらを選んでも、結局は瑞希が傷つく。 もし受け入れれば、瑞希は俺と綾乃の関係を知って傷つく。拒めば、綾乃の矛先は再び瑞希に向かうだろう。 それならば――俺が背負うしかない。「……本当に、瑞希への執着をやめてくれるんだな?」「約束は守る。もちろん、漣が守ってくれるならね」 慎重に確認すると、綾乃はあっさりとうなずいた。 その笑顔はやけに晴れやかで、駆け引きの末に優位を得た者の余裕が滲んでいる。 本当に約束を守ってくれるのだろうか、という不安は消えない。 だが一度は特別に親しかった相手だ。彼女を信じられないと言い切るのは、自分のこれまでを否定するようで苦しい。「……わかった。君がそれで納得するのなら」 結局、俺は綾乃の提案を受け入れた。これが今、瑞希を守るために選べる最善の道だと思ったからだ。 どちらにせよ瑞希を傷つけるのなら、せめて矛先を自分に集めればいい。 俺が静かにうなずくと、綾乃はぱっと花が咲くような笑顔を見せ、大げさなくらい明るい声で言った。「じゃあ交渉成立ね! またあなたの彼女になれるなんて、うれしい」 その言葉に胸がちくりと痛む。 俺にとっては取引でしかなくても、彼女にとっては「やり直し」なのだろう。「……でも
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【15】①

「はぁ~、今日も疲れたね」「そうだね」 生理検査室での実習が続く週の半ば。 夕方、ロッカーで着替えを終えた私と翠は、それぞれバッグを抱えて職員用通用門へ向かう廊下を歩いていた。 翠がオーバーにため息をつく横で、私がうなずく。 すると突然、彼女がぴたりと立ち止まり、くるりとこちらを向いた。「もうっ、瑞希。ここ最近ずーっと顔が暗いよ! どしたの?」 ちょっと怒ったような顔で言うと、小首を傾げて覗き込んでくる。「えっ」「私が気づかないと思う? 今週は新庄さん、静かだけど……実習以外のとこでなにか言われたとか?」「ううん、そういうんじゃないよ」 ――そんなに暗かったのかな、私。 落ち込んだ様子を見せないよう気をつけていたはずなのに。 改めて翠の鋭さに驚きつつ、私はなんでもない風に首を横に振った。 言われてみれば、たしかにここ数日は新庄さんから指摘されていない。巡回に来ても、私の班には目もくれずに別へ行ってしまうくらいだ。「じゃあ亮介のこと?」 不意に出された名前に、胸がちくりとした。 実習が始まってからは班が分かれ、彼とはほとんど顔を合わせていない。  お互い実習に追われていて、キャンパスと違い昼休みを合わせることもできなくなった。 廊下ですれ違うことはあるけれど、交わすのは挨拶くらい。会話らしい会話は、ここしばらくなかった。 それでも彼は気遣ってくれていて、夜や休日に「実習どう?」「元気?」とメッセージをくれる。 最後に届いたのは日曜の朝。ある実習の感想を綴った内容だった。 ……でも、私は返せていない。正確に言えば、返す気力がなかった。 あの夜の兄とのやりとりで、心をすり減らしてしまったから。「それも違う。ただ……ちょっと疲れてるだけ」 返していないメッセージ
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