砦の廊下を進みながら、私は心臓の音が聞こえそうなほど緊張していた。 カイルはここにいる。 でも、どの部屋にいるのかしら。 「あちらから声が聞こえます」 ソフィアが耳を澄ませて言った。 確かに、奥の方から人の話し声が聞こえる。 私たちは慎重に近づいた。 角を曲がると、大きな扉があった。 その隙間から、光が漏れている。 「中を覗いてみましょう」 私はそっと扉の隙間から中を見た。 広い部屋に、数人の男性がいる。 そして—— 「カイル!」 心の中で叫んだ。 彼がいた。椅子に座らされて、手足を縛られている。 でも、無事そうで安心した。 「どうですか?」 ソフィアが小声で尋ねた。 「います」 私も小声で答えた。 「でも、縛られています」 「何人ぐらい?」 「五人ほど」 多すぎる。私たちだけでは、どうすることもできない。 でも、諦めるわけにはいかない。 「作戦を考えましょう」 ソフィアが提案した。 「何か、気を引く方法を」 気を引く方法…… そうだ、指輪の力を使えばいいのね。 「少し待ってください」 私は指輪を見つめた。 「心を静めて、石に意識を集中」 母の教えを思い出しながら、深呼吸する。 石がほんのり温かくなってきた。 「見せて……」 小さく呟いた。 「この部屋の構造を」 頭の中に映像が浮かんだ。 部屋の見取り図のようなもの。 扉は一つだけじゃない。 裏口があった。 「ソフィア」 「はい」 「裏口があります」 「本当ですか?」 「ええ。向こう側に回れば、別の入口があるはずです」 「分かりました」 私たちは裏口を探しに向かった。 指輪で見た通り、確かに小さな扉があった。 「ここですね」 「はい」 私はそっと扉を開けた。 幸い、音はしなかった。 部屋の中が見える。 カイルが、私たちに背を向けて座っている。 男性たちは、カイルの正面にいるようだった。 私たちの存在には気づいていない。 「どうしましょう?」 ソフィアが困った顔をした。 「五人は多すぎます」 確かに、正面から戦うのは無理ね。 でも、別の方法がある。 指輪の力を使って、彼らの注意を逸らすのよ。 「私が何かします」 「何を?」 「指輪の力で、幻影を見せるんです」 「そんなことができるのです
Terakhir Diperbarui : 2025-08-17 Baca selengkapnya