王宮の大広間は、ゴシック調の尖頭アーチやリブ・ヴォールトが天井に広がり、巨大なシャンデリアが無数の蝋燭で輝いている。 華やかな楽団が音楽を奏で、招待された貴族や貴婦人たちがおしゃべりに花を咲かせ、また優雅にダンスを踊っていた。 年に一度開かれる王宮での大規模な舞踏会。 その中で誰よりも注目を浴びている二人。 エルミニオ・ヴィスコンティとリーア・ジェルミである。「まるで夢のようです。 まさか私が、エルミニオ様とこんな大きな舞踏会で踊る日がくるだなんて。」「何を言う、リーア。 俺のパートナーとして誰よりも相応しいのは君だ。 分かっているだろう?」「ですが……」会場の中央。 普通の貴族なら一生着られない、王家専属のデザイナーが製作したローズゴールドの煌びやかなドレス姿で、エルミニオとダンスを踊るリーア。 一方のエルミニオの方も、金糸でヴィスコンティ王家の紋章が刺繍された真紅のダブレット、黒のホーズ、革製の靴、肩には毛皮の縁取りがあるマントという気合いの入った格好をしている。 まだ婚約者ではないリーアをパートナーとして扱うのは異常なことだったが、これは社交界では暗黙の了解だった。 人々の称賛と羨望を受け、二人はまるでこの世の中心であるかのように振る舞っている。「あんなことがあったのに……」気の毒そうに足元に視線を落とすリーア。 その顔はなに? つい1週間ほど前、エルミニオの陰で私を嘲笑っていた女とは思えないほど可憐に見える。 そうだ。 あの日私は、薄れゆく意識の中ではっきりと見た。 死にそうになっている私を、リーアが嘲笑っていたあの瞬間を。 もしかしてこの世界のヒロインって、それ系なのだろうか? 私が言うそれ系とは、『悪役令嬢』の私よりヒロインの方が性悪のパターンかもしれないということ。 ううん。でもまだ分からない。 ロジータがあまりにも陰険ないじめを繰り返していたから、さすがのリーアも「ざまぁ」って思っていた可能性も。「今全力であの女の行方を探してるから、何も心配するな、リーア。 君は俺に守られながら、堂々としていろ。」「エルミニオ様……」熱く見つめ合う二人。 それ会場で話す内容? よく他の客たちに聞こえないものだ。 (逆に私にはなんでよく聞こえてるの?) 人をあんな目に合わせておいて呑気ね。 しかし考
Last Updated : 2025-09-22 Read more