……き、気まずい。 なぜなら体勢を崩した私が、ルイスにしっかり抱き止められているから。 しかも、彼の膝上にまたがる形になってしまったから。 本当に信じられないし、心が悲鳴をあげている。 ありえないこの状況に、ルイスも目を見開いて固まってる。 やはりチェニックの上からでも、ルイスの腕も胸も本当に逞しいというのが分かる。 それに薔薇の香水のようないい匂いまでする。 両膝も石みたいに硬い。 ルイス、もしかして鍛えすぎなのでは? 見た目は華奢なのに、反則でしょう。「〜〜ったく、だから、何をやっているんだ?お前は。気をつけろと言っただろう!」「ご、ごめんなさい、ルイス!」ルイスの照れながらも呆れ顔、といったものが視界に入ってくる。 私の方も結局、また敬語に戻ってしまうが今はそれどころではない。 とにかく私は慌てて体勢を立て直そうとした。「私だってわざとじゃありません、ただ、なぜかこう体が……っ」だが、ぐんと何かに引っかかり、また体がルイスに近づいてしまう。 なんと今度は、私が着ているチェニックの前止めの紐が、ルイスのチェニックのボタンに絡まっていた。 そのせいで服が引っ張られ、胸元が露見する形に。 今度こそ完全に墓穴を掘った。 もう!この失態は、本当にどうしたらいいの!「待て、ロジータ、動くな!」ルイスの口調が強くなる。 目の前で肌を露出した私を叱りつける。「俺が取るから、お前は動くな。いいな?」「わ、分かりました。」「よし。」半分は呆れ顔。 もう半分は照れ隠しといった、ルイスの表情がたまらない。 顔を紅潮させながらも、ルイスはチェニックに絡まった紐を解こうとしていた。 ……本当に恥ずかしい。 だってルイスに私の開いた胸元が見えてるから。 手当のために包帯が巻いてあるし、胸が直接見えてるわけではないのだけれど。 しばらく気まずい沈黙が流れ、ようやくルイスが紐を解いてくれた。 慌ててルイスの膝の上から降りると、彼がぽそっと呟いた。「刻印は、まだ痛むか?」「刻印ですか?刺された時のーー」ルイスにそう尋ねられた瞬間、エルミニオに刺されたあの時の記憶が蘇ってきた。 今思えば、本当に馬鹿なことをした。 『奴隷になった私が、王太子の最愛になるまで』は、前世で私が好んで読んでいたロマンスファンタジー小説だった。
Last Updated : 2025-09-12 Read more