天音は涙を流しながら、声を詰まらせて言った。「ううん」何かを言おうと動かした唇は、すぐに要の唇で塞がれた。激しく深いキスは、今までとは全く違っていた。天音はただ、それを受け止めるしかなかった。要のキスは、天音の心をかき乱す。突き放そうとした手は、要に捕らえられてしまった。天音は耐えきれずに、甘い吐息を漏らした。要は唇を離すと、天音の額に自分の額を押し当てた。荒い息遣いが、熱を帯びた空気と共に彼女の吐息を奪った。要の圧倒的な存在感が彼女を包み込む。車内には、甘さと冷たさが入り混じった空気が漂っていた。それは優しさのようでいて、どこか冷ややかでもあった。要のこんな姿は、初めてだった。いつも静かな瞳に、情熱と怒りの炎が揺らめいている。彼の体は、まるで火照っているように熱い。天音が恐ろしくなって後ずさると、要はさらに一歩近づいてきた。「はっきり言え。何をしに行くつもりだったんだ?」そう問い詰めると、天音は視線を逸らした。そして、再び唇を塞がれ、息が詰まる。要の腕の中で、天音はもう抗う力もなかった。要が好きにするのを、ただされるがままになって、ぼんやりと見つめていた。車が停まると、天音は要に抱きかかえられて外に出た。そこは香公館だった。想花が由理恵と遊んでいて、彩子が食事の支度をしていた。天音が想花の小さな頭に触れようとした瞬間、その手を要に掴まれた。要は天音を三階まで抱えていくと、ソファの上に座らせた。涙を拭おうと手を伸ばすと、天音は顔を背けてそれを避けた。「行かせて」天音は低い声で言った。強引に顎を持ち上げられ、甘い口付けが落とされる。彼女は彼の唇を噛み切りそうなほど強く噛みついた。たちまち血の味が口の中に広がった。要は唇を離すと、大きな手で天音のお尻を軽く叩いた。まるで、いたずらっ子を罰するみたいに。天音の小さな顔は、一瞬で真っ赤になった。「風間と一緒になるつもりか?」要は尋ねた。天音はきょとんとして、首を横に振った。「食事が終わったら、行かせてやる」天音は驚きに目を大きく見開き、その冷たい眼差しと目が合うと、涙がどっと溢れてきた。要は天音を抱きしめ、その小さな顔を両手で包み込んで涙を拭ってやった。「行かせてやるって言ってるのに、どうし
Read more