天音が立ち去った後、要は部下に防犯カメラを調べさせていたので、彼女が来たことは確認済みだったのだ。天音がドアの前に立っていた時、自分はちょうど椿と電話していた。天音は何か電話の内容でも聞いたのだろうか?「忙しそうだったから。邪魔しちゃ悪いと思って」天音は要の胸に顔をうずめ、彼の力強い心音を聞いていた。要は大きな手で天音の後れ毛を優しく払い、耳元で囁いく。「君のためなら、いくらでも時間なんか作るさ」心臓実験室のことは、聞かれてないようだ。天音は思ったことがすぐに顔に出るタイプだから、もし聞いていたらすぐに何かしらの反応をしただろう。このことは天音に知られたくない。3Dプリンターで作る心臓はまだ成果が出ていないため、下手に希望を持たせて、がっかりさせたくないのだ。天音には、何の心配もなく毎日を過ごしてほしい。「数日、入院することになった。その間、子供たちの安全は大地が守ってくれるから。彼は俺の戦友だ。大地のことは、俺だと思って信じてくれればいい。要が天音の顔を上げると、そこには彼女の暗い表情があった。「心配するな。すぐに終わるから」天音はうなずくと、要に抱きつく。「今日、蓮司に会ったのは、仕事の協力をお願いするためなの」要はなんだか胸に温かいものがこみ上げてくるのを感じた。「うん」……天音が病室を出ると、暁と達也が山のような書類を抱えて入っていった。外にいた蛍は大地と何か話しているようで、大笑いしている。さっきまでの悲しそうな様子は、彼女からすっかり消えていた。しかし、天音の姿を見ると、蛍は笑い涙を拭い、真剣な表情に戻した。「天音さん、カフェでお話ししない?」天音はうなずく。蛍の自分に対する態度が、なにか違うのを感じた。病院の一階にあるカフェ。二人が向かい合って座ると、話す間もなく、突然黒い影が天音の隣に現れた。その大きな手が天音のコーヒーカップを包み込むように持ち上げ、写真を一枚撮った。二人がそちらを見ると、大地が二人のことなどお構いなしという顔で、携帯に向かって話している。「お前の奥さん、コーヒーの好みがお前と一緒だな。ブラックコーヒー。砂糖もミルクもなし」真っ白なアイコンが見えた天音は、大地がボイスメッセージを送っている相手が要だということに気づいた。大地の
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