「それに、爺さんたちへの根回しも俺がしなきゃならない。そうしないと、また大騒ぎになるからな」真琴の手を無意識に揉みながら、信行は諭すように言った。「今年で二十三だろ。離婚は二人だけの問題じゃないって、分かってるはずだ」信行がここまで譲歩し、しかも穏やかに相談を持ちかけてきている以上、真琴もこれ以上追い詰めるわけにはいかなかった。手を引くこともしない。信行に手を握られ、指を遊ばれていることに気づいてすらいないようだった。信行を見つめ、真琴は静かに答える。「……分かりました」承諾しつつ、やはり聞かずにはいられなかった。「法務部はどれくらいかかるんですか?だいたいの時間は分かっているんでしょう」信行は言った。「月曜以降、法務部に確認してくれ」離婚の話になると、信行は特に頭が痛くなる。その様子を見て、真琴は頷くしかなかった。「分かりました」即答し、ためらいもしない真琴を見て、信行は思わず笑ってしまった。諦めにも似た、無力な笑みだった。真琴の手を放し、信行は彼女の顔を撫でた。この数年、彼も疲れていた。真琴によく考えろと言ったのは、自分自身にも考える時間を与えるためだった。衝動的に決断するのは好きではない。どんなことでもそうだ。頬に添えられた手が離れない。真琴が手首を掴んで外そうとしたその時、信行が身を乗り出し、腰をかがめて彼女の額に口づけを落とした。キスの後、顔に触れていた右手の親指で、そっと彼女の頬を撫でる。「早く休め」真琴は無意識に尋ねた。「こんな時間なのに、お出かけですか?」信行は薄く笑った。「ああ。拓真と飲みに行く」今日の午後、真琴が見せた悲しみと絶望が、棘のように胸に刺さったまま抜けない。さっき話し終えても気は晴れず、澱のように溜まっている。だから行き先を告げ、車のキーと携帯を持って部屋を出た。ベッドの端に座り、信行の去っていく背中を見つめ、真琴は長い間動けなかった。久しぶりに信行の行き先を聞いた気がする。いや……出かける前に行き先を報告されたのなんて、結婚してからの三年間で初めてのことかもしれない。そう思うと、真琴はふっと笑ってしまった。少しやるせない、乾いた笑みだった。結婚して三年。一番まともに会話ができたのが、離婚間際だなんて。自分と
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