真琴が幼い頃からその成長を見守ってきた由紀夫と幸子は、彼女の物静かな性格も、その賢さも愛していた。本来は克典と結婚させるつもりだったのに、この娘はあえて反骨精神の塊である信行を選んだ。もしあの時、自分の言う通りにしていたら、彼女と克典はきっとうまくやっていただろうし、今頃曾孫は「パパ、ママ」と呼べるようになっていたはずだ。由紀夫の繰り言を聞き、真琴は慌てて遮った。「お爺様、その話は今は置いておきましょう。手続きが終わったら、数年間は実家に戻って祖父のそばにいてあげたいですし、仕事も頑張りたいんです」ようやく泥沼から這い上がろうとしているのに、また別の沼に飛び込むわけにはいかない。それに、もし再婚するとしても、克典はありえない。片桐の祖父母たちが世間体を気にしなくても、真琴自身が気まずい。元夫の兄と再婚し、信行に「義姉さん」と呼ばれるなんて……想像しただけでぞっとする。それに……克典は怖い。彼のあの厳格さが、どうにも苦手なのだ。結婚の話を振ると、まるで蛇に睨まれたかのように怯える真琴を見て、由紀夫もそれ以上は言わず、ただ感慨深げに昔話や、真琴の祖父の話をした。気持ちが落ち着いてきた頃、由紀夫は言った。「……わしの気は済んだ。ただ、今日は少しやりすぎたから、信行の様子を見てやってくれ。もし本当に離婚するなら、お前の性格からして、あいつとはもう二度と会わないつもりだろう?幼馴染なんだ。最後くらいはきちんと別れを告げて、話をつけてきなさい……信行がお前に渡すべき財産は、一銭たりとも減らさせんから」由紀夫の言葉に、真琴は黙って頷いた。今や、離婚の手続きに少しでも障りそうなことには、口も出さないし、態度も表明しないと決めている。例えば財産分与について。「いらない」と言えば由紀夫がねじ込もうとして揉めるだろうから、何も言わず、片桐家の好きにさせるつもりだ。手続きが済んでから、いらないものは返せばいい。由紀夫の言葉に従い、真琴はしばらく彼に付き添った後、母屋へと向かった。信行の部屋に着くと、ちょうど医者が処置を終えたところだった。点滴がつながれ、背中の薬も塗り終わっている。美雲と紗友里が付き添っていたが、健介の姿はなかった。「真琴」「真琴ちゃん、お爺様はどう?まだ怒ってる?」二人の問いかけに、真
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