信行がスクリーンを覗き込んでいることに気づくが、悪びれる様子は全くない。真琴は何も言わず、顔を正面に戻した。右手にマウスを握り、ファイルをスクロールしながら、信行は穏やかな声で言う。「資料に問題はない。後期施工の時は、品質検査にもっと目を光らせるよう指示しておけ」ふわりと漂ってくる微かな香りと、低く心地よい声に、真琴はまた彼に目を向ける。こんなに穏やかに話すことは滅多にない。「分かりました」彼女は頷いて答える。言い終えると、また問いかける。「設計面で、さらに改善すべき点はありますでしょうか?」興衆実業が手掛ける投資プロジェクトは多岐にわたり、実体産業、科学技術、不動産などがある。昔、信行の父は不動産で興衆実業を築き上げたのだ。「まず、ざっと目を通そう」信行は彼女に応え、パソコンのファイルを見続ける。ただ、この近さはどこか艶めかしく、真琴の思考を少しずつ乱していく。彼の横顔を見つめながら、まさに神の造形だと思う。何の欠点も見つけられない。周りからは綺麗だと言われるが、自分は信行の方がよほど綺麗だと思っている。その時、信行が口を開く。「設計は合理的だ。予算管理もうまくやっている」信行が褒めるなんて……真琴は驚いた。その反応に、信行も彼女を見つめ返した。二人の目が交差し、真琴は彼に微笑みかける。「では、今後もこの調子で続けます」かすかな微笑みに、信行はじっと見つめている。その視線があまりにも直接的で、見られているうちに少し恥ずかしくなってくる。唇をきゅっと結び、気まずさを紛らわすために何か言おうと考えあぐねていると、不意に信行が顔を寄せ、何の兆候もなく彼女の唇にキスをした。一瞬にして、真琴の体が固まる。どうしてまたキスを……?理解できずに信行を見つめる。彼が目を閉じ、自分にぴったりと寄り添い、求め続けているのを見て、真琴は眉をひそめ、背中を後ろに引いた。両手も彼の胸に当て、これ以上近づけないようにする。離婚するというのに、なんて不謹慎な……その様子を見て、信行は右手を伸ばし彼女の後頭部を掴むと、ぐいと引き戻す。しばらくキスをした後、後頭部を掴んでいた右手を彼女の首筋に滑らせ、ゆっくりと服の襟元を押し開いていく。温かい照明が、雰囲気をさらに艶めかし
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