真琴が梱包材を片付けていると、貴博も自然に手を貸してくれた。間もなく一明が食事の準備ができたと声を上げ、真琴も慌てて配膳を手伝いに行った。二人とも気が利く若者で、言われなくてもテキパキと動く。貴博が二人にジュースを注ぐ。一明には何の変哲もないガラスのコップ。真琴には、ピンクと黄色が混じり合った、可愛らしいマグカップが出された。あまりに露骨な待遇の差に、一明は思わず真琴のカップを二度見した。だが、すぐに視線を外し、気づかないふりをした。料理が並ぶと、一明と真琴が並んで座り、貴博がその対面に座った。貴博は真琴に料理を取り分けながら言った。「辻本さん、遠慮しないで食べてください」そして一明に視線を移すと、ニッコリと笑って言った。「石本くんも遠慮するなよ。男同士だ、取り分けは自分でやってくれ」一明は背筋を伸ばして答えた。「はい、お構いなく。自分でやります」そして、場の空気を和ませるように言った。「それにしても、まさか五十嵐さんが自炊されるとは驚きました」「たまにね」貴博は笑って答え、不意に尋ねた。「ところで石本くん、いくつだ?」一明は答えた。「もうすぐ三十です」貴博は軽く「ああ」と頷いた。自分とそう変わらない。年齢は変わらないが、貴博が纏っているオーラはあまりに強大で、圧倒される。どれだけ丁寧に話していても、隠しきれないプレッシャーがそこにある。一明は本能的に察知し、すぐに付け加えた。「実は先日、彼女と入籍しまして。来月、式を挙げる予定なんです」その必死な釈明に、貴博の目が和らぎ、口元に笑みが浮かんだ。――賢い奴だな。……食後、帰りの車中にて。ハンドルを握りながら、一明は隣の真琴を見て、真顔で言った。「辻本さん、五十嵐さんは間違いなく君に気があるぞ」助手席で携帯をバッグにしまっていた真琴は、一明を見て苦笑した。「何言ってるんですか?」一明は力説した。「絶対に好きだ」真琴は笑い飛ばした。「変なこと言わないでくださいよ。他人に聞かれたら笑われます」信じようとしない真琴に、一明は証拠を並べ立てた。「本当だって。いいか、彼は君を丁寧に『辻本さん』と呼ぶのに、俺には『石本君』呼びだぞ。入社は俺の方が先だし、年齢だって俺の方が上なの
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