入院中の二日間、詩織は付きっきりで彼女に寄り添い、親身に相談に乗った。その時になって初めて、智也は自分の教育方針が間違っていたのだと気づかされた。その後、詩織は自ら紬を心療内科に連れて行き、勉強の面倒まで見てやった。紬は詩織の支えによって少しずつ元気を取り戻し、最終的には志望校に見事合格したのだった。紬自身も、この心優しいお姉さんである詩織がすっかり大好きになり、どんな悩みも打ち明けるようになった。当然、詩織のプライベートなことも、いくつか知っていた。詩織に恋人がいること。そして、その相手が彼女の上司であることも。兄である智也が詩織に抱く密かな想いも、もちろん、紬にはお見通しだった。だからこそ彼女は、「お兄ちゃんは一歩遅かったね。ご縁がなかったんだよ」と、兄のために何度もため息をついていたのだ。智也は実直な男だった。詩織に想い人がいると知ってからは、己の気持ちを律し、決して一線を越えることはなかった。だがつい先ほど、柊也が他の女性と親密な様子であるのを目にし、さらに詩織がエイジアを退職したと聞いた。この二つの事実から、智也は彼女と柊也が破局したのだと結論づけた。その瞬間、彼の心は歓喜に打ち震えた。そしてその吉報を、真っ先に妹の紬に知らせたのだ。その頃、紬は寮の二段ベッドの上で寝転がりながらドラマを見ていたが、兄からの知らせを聞くやいなや、勢いよく飛び起きた。ゴンッと天井に頭を強打し、思わず悲鳴を上げる。しかし彼女は頭の痛みなど気にも留めず、ひたすら兄を急かした。「ぐずぐずしてどうすんの!早く告っちゃいなさいよ!!!私、詩織さんにお義姉さんになってほしい!!!」……詩織は、智也の信頼を裏切らないため、三日三晩徹夜して、非の打ち所がない事業計画書を書き上げた。そして意気揚々と、かつて人脈を築いた投資家たちに連絡を取り始めた。もちろん、断られることは覚悟の上だった。今の自分には、リソースも、人脈も、後ろ盾もない。相手が自分の顔を立ててくれる保証など、どこにもなかった。だが現実は、詩織の想像以上に過酷だった。何十件とかけた電話は、その全てが空振りに終わった。それでも詩織は、くじけなかった。事業計画書を携え、一社一社自分の足で訪ね歩き、説いて回った。数日間駆けずり回
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