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第12話

Penulis: 甘寧
last update Terakhir Diperbarui: 2025-09-29 13:00:00

(最近、柚に会えない……)

奏はテーブルに置かれたスマホを眺めながら、考えを巡らせていた。

ここ数週間、連絡をしても返ってくる言葉は断りの返事ばかり。仕事理由にされたら黙って引くしかない。

(嫌われた……?)

最悪な事態が脳裏を掠める。

彼女の予定を鑑みずに誘いを入れていた自覚はある。それでも、彼女に会いたいと自分の気持ちを抑えられなかった。

もし、このまま会えなくなったら?

7年前あの時の記憶が蘇り、いてもたっていられなくなった奏は部屋を飛び出した。

***

「遅くまで悪いな」

「いいえ。このぐらいしか恩返し出来ないから」

「お前はいつもそれ言うな。別にいいんだぞ?」

「私がしたいの」

そんな他愛のない話をしながら煌と一緒に会社をでる。時計を見れば22時を回ったところ。これならまだ電車に間に合うとホッとしていると、肩をポンと叩かれた。

「付き合わせた礼に飯奢ってやるよ」

「えぇ?でも、電車の時間あるし…」

「電車なんて、俺ん家泊まればいいだろ?」

現に何度か煌の家に泊まった事がある。元々同じ屋根の下に住んでいた事があるので、気兼ねも心配もなく泊まることが出来る。

いつもなら即答で「行く」と答えているところだが、今日に限っては奏の顔がチラついて返答が出来ない。

別に、私が他の男の家に泊まっても気にしないんだろうけど。

(本物の彼女じゃないし……)

呪いのようにその言葉が縛りついてくる。その度に胸が痛くなるのを必死に誤魔化して……

「そうね。行こうかな」

久しぶりに煌とゆっくり話すのいいかもし
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