砂時計が砕け散ったあと、砂漠の空は青く澄みわたった。 太陽がはっきりと姿を現し、熱を持った光が大地を照らす。 同時に、西の地平からは月が昇り始めていた。——昼と夜が戻ってきたのだ。「……やっと“時間”が流れ出したな」 『うん……風の匂いまで違う。これが、本当の“今”なんだね』集落に戻ると、人々は皆、戸惑った顔をしていた。「おはよう……で、いいのか?」 「いや、もう夜かもしれん……」 「でも、こんな空を見るのは久しぶりだ……」混乱しながらも、誰もが空を見上げていた。 太陽と月。その移ろいが、彼らにとってどれほど大切だったのかが伝わってくる。「おい! 子どもが!」叫び声に振り向くと、ひとりの子どもが急に背を伸ばし始めた。 昨日まで小さな子だったのに、あっという間に数歳分成長したように見える。「な、なんだこれは……!」『ナギ! 止まっていた時間が、一気に流れ出してる!』「……そうか。今まで“今”を失ってた分が、一気に戻ってきたんだな」驚きと混乱の中で、子どもの母親が泣き笑いしながら抱きしめた。「大きくなった……! でも、ちゃんと生きてる……!」周囲からも涙と笑いが溢れる。 人々は戸惑いながらも、確かに“今”を取り戻していた。——その光景を見て、俺はふと思う。「なあ、リィナ」 『なに?』「俺たちだって、未来のために戦ってるけど……結局は“今”を選び続けてるんだよな」リィナが少しだけ笑った。『そうだよ。私がナギと一緒にいるのも、“今”を選んだからだもん』「……そっか」銃身が小さく震える。 それは、心臓の鼓動みたいに温かかった。「よし。なら俺たちも、次の“今”を選
最終更新日 : 2025-09-24 続きを読む