Lahat ng Kabanata ng 許すとでも?私を15年愛す極上の夫を選ぶわ: Kabanata 41 - Kabanata 50

168 Kabanata

第41話

二宮家の人々はもう全員集まっていた。凪が入ってくると、皆が一斉に憎しみのこもった視線を向け、ひそひそと噂を始めた。「やっぱり疫病神ね。百年も続いてきた、先祖代々の場所が、こんなに燃えてしまうなんて初めてよ」「まったく家の恥だわ。この親子を家にいれたせいで、二宮家はめちゃくちゃよ」人たちからの非難を浴びても、凪は背筋をまっすぐ伸ばしたまま、大地の正面へと歩み寄った。大地は腕を後ろで組み、鋭い目で凪を冷たく睨みつけた。「言え、この火事は君がやったのか!もし違うというなら、君の母親をここに迎えることを神様がお許しにならなかったんだ。天罰が下ったんだ!」凪は、臆することなく堂々としていた。「火をつけたのは、別の人なのよ」彼女の視線は、部屋の隅にいる明里へと向けられた。明里は怒るどころか、凪を挑発するように、にっこりと笑い返した。すると、明里と親しい年配の親戚が立ち上がり、もっともらしい口調で言った。「他に誰がいるって言うんだ?あの場所には君一人しかいなかった。君がやらなきゃ、神様がやったってことだ。言い訳はやめろ。ちゃんとお坊様にも見てもらったんだ。君の母親は不吉で、ここに迎え入れたから天罰が下ったんだよ!」彼はそう言うと、凪の顔を指さしながら続けた。「二宮家の大事な場所が、君たち親子のせいで台無しになったんだ!」大地が頷く。「そうだ。二宮家のみんなで決めたことだ。君が意地を張ったせいでこうなったんだからな。修繕費の4億円は、君が払え!」4億円は、決して安い金額ではない。凪にその金が払えないわけではない。ただ、濡れ衣を着せられて払うなんてごめんだった。火をつけたのは、明里だ。なぜ自分が払わなければならないのか?凪は鋭い目で明里をまっすぐ見つめ、鼻で笑った。「私が火をつけたわけでもないのに、どうして私がお金を払うの?それにしても、4億円なんて誰が言い出したの?私のお嫁入り道具がいくらだったか知っていて、この火事を理由にそっくり取り返そうなんて、魂胆が見え見えだね」彼女は意味ありげに明里を見た。多くの人が、その視線を追って明里に注目した。凪の母親は早くに亡くなった。空との結婚は、すべて継母である明里が取り仕切ったのだ。お嫁入り道具がいくらだったか、明里はもちろん知っている。み
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第42話

明里は一瞬、呆気にとられた。そんな理屈、あり?周りの者たちは一瞬で黙り込んだ。凪に金を出すことと、黒崎家に金を出すことでは、意味がまったく違うからだ。明里はこの2億円を出したところで、黒崎家が感謝してくれるはずもないと分かっていた。そんな馬鹿な話に乗るわけにはいかない。しかし、凪の言うことは妙に筋が通っており、とっさに言い返す言葉を見つけられなかった。二人がにらみ合い、空気が張り詰めたその時。葵が勝ち誇ったような顔で外から入ってきた。集まった人々の顔ぶれを見ると、にっこり笑ってサングラスを外し、ブランド物のショッピングバッグをこれみよがしに掲げてみせた。「あら、皆さんお揃いで。もしかして、私が今日、大輔さんとデートしてきたこと、知ってる?」一同は驚きの声を上げた。葵が、もうあの黒崎家の跡取りである大輔に取り入ったというのか!?娘の帰宅に、明里は助け船が来たと言わんばかりに、急いで駆け寄り葵の腕を取った。「本当なの?彼はあなたによくしてくれた?」「もちろんよ。すごく紳士的で、食事に連れて行ってくれただけじゃなくて、こんなにたくさんプレゼントまで買ってくれたの。彼の心を射止めるのも、もう時間の問題だわ」葵は得意げに顎を上げ、凪を蔑むように挑発的な視線を送った。「お姉さんはいつも一人で帰ってくるのね。空さんは、あなたをエスコートするっていう気遣いもできないのかしら?」明里もここぞとばかりに口を挟んだ。「葵、そんな言い方しちゃダメよ。凪があなたみたいに可愛がられるタイプじゃないんだから。空さんも、そこまで彼女に夢中じゃないみたいだしね」この機に乗じて凪を貶め、黒崎家から切り離そうという魂胆なのだ。そうすれば、もうややこしい板挟みになることもない。凪本人から直接、2億円をせしめることができるからだ。凪は薄く笑った。大輔のことは、噂で聞いたことがある。ただ、この前黒崎家を訪れたときには、会わなかった。空と比べれば月とすっぽんの、ただの遊び人間だ。しかし、それでも大輔は黒崎家のこの世代で唯一の跡取りだった。なるほど、狙いはそこだったのね。そう思うと、凪は鼻で笑った。「少なくとも私と空さんは、ちゃんと籍を入れているわ。大輔さんがちょっとお金を使ったくらいで、本気になったつもり?」葵は周りを見
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第43話

凪はこめかみを揉んだ。「あんでもありませんよ。ちょっとぶつけちゃっただけです」大地たち三人は、ほっと息をついた。空の指先は、まだ慎重に凪の額の傷に触れたままだった。そして、彼の声はさらに冷たくなった。「ほんとのこと、教えて」「これが本当のことですよ」凪は目を細めた。視界の端で、明里が口元を歪めて笑っているのが見えた。凪はわざと気分が悪いふりをして、体を前に傾けた。そして空の胸に頭をもたせかけ、こう続けた。「全部、彼らに言わされたんです……あなたに、葵のことで怒ってほしくないからです」こいつ……大地は心の中で悪態をついた。冷や汗をだらだら流しながらも、表向きは愛想笑いを浮かべるしかなかった。空は腕の中の凪を優しく抱きしめ、そして氷のように冷たい視線を大地に向けた。「どういうことだ?」「姉妹でふざけてて、ついぶつけちまっただけなんだ。どこの姉妹だって、喧嘩しながら大きくなるもんだろ?大したことじゃない」空は少しの間、黙り込んだ。ほんの数秒だったが、大地たちにとっては、耐えがたい時間に感じられた。「何でぶつけたんだ?」空は、凪のうなじに指を滑らせ、優しく撫でた。「湯呑みですよ」凪は、空が自分をなだめようとしているのを感じた。少し慣れなかったけど、彼が芝居に付き合ってくれていると分かっていたので、その演技に乗り続けることにした。空は眉を上げた。「隆、中から湯呑みを一つ持ってこい」「はい」隆はすぐに、小さな湯呑みを一つ持ってきた。空はそれを受け取らず、代わりに凪の手を取って受け取らせた。「姉妹の冗談なんだろう。君も冗談を返してやれ」「え?それは……」凪は言われるがままに湯呑みを受け取ると、手の中でもてあそびながら言った。「もし彼女の顔に傷でもつけちゃったら、どうしますか?」「姉妹のじゃれ合いだ。大したことじゃない。さっき二宮社長はそう言っていたな?違うか?」空は意味ありげに大地をちらりと見た。まさに、墓穴を掘ったな。大地は、やばいと思った。葵は、自分の顔が傷つけられると聞いて、慌てて明里の後ろに隠れた。これから大輔とデートなのに、顔に傷なんてつけられない。それを見た明里も、すぐさま大地の袖をつかんだ。そして、ぶんぶんと首を横に振った――だめ、絶対だめ。「
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第44話

凪の顔から先ほどの弱々しさが消えているのを見て、空はひとまず安堵した。だが、彼女の腰に手を置いたまま、大地からの送金を確認してようやく、その表情が和らいだ。「話は済んだな。じゃあ、凪を連れて帰るぞ」「は……はい……」大地は、自らの愚かさを呪った。しかし、空はもう凪の肩を抱いて、その場を去って行った。車に乗ると、空の手が不意に凪の腕に触れて、凪は小さく声を上げた。空はとっさに彼女の手首を掴んで腕を確認すると、そこは赤く腫れ上がっていた。「敬慈堂の火事の時の怪我か?なんで病院に行かなかったんだ!」空の目に、一瞬、心配の色が浮かんだ。凪はきょとんとした。「どうして、火事のこと知っていますか?」聞いてから、なんて馬鹿なことを聞いたんだろうと思った。だってこの人は空なのだから。このK市で、彼の知らないことなんてあるわけない。「病院に行くぞ」空は凪の手首をしっかりと掴んでいたが、火傷の部分は慎重に避けていた。凪は、あの時、母親の位牌を守るのに必死で、自分の怪我なんて気にする余裕はなかったのだ。さらに、その後渉に騒がれたせいで、怪我のことなどすっかり忘れてしまっていた。空の不機嫌な顔を見て、彼女は慌てて手を振りながら言った。「ちょっと火傷しただけですよ。帰って薬でも塗っておけば大丈夫ですから」「ダメだ。病院に行く」空は譲らなかった。運転手は、言われるがままにアクセルを強く踏み込み、病院へと急いだ。凪は空の強引さに逆らえず、大人しく彼について病院へ行った。空が薬を取りに行っている間、凪は廊下のベンチに一人で座って休んでいた。自分の腕の傷を眺めていると、ちょうど隣の診察室から渉と直美が出てくるのが見えた。直美が、渉の腕に自分の腕を絡ませていた。「心臓が少し苦しかっただけなのに、渉さんにわざわざ病院まで付き添ってもらっちゃって、ごめんね」「検査で異常がなくて良かったよ」渉が優しい声で彼女をなだめ、顔を上げたその時、ちょうど凪と目が合った。渉の視線が下に移り、赤く腫れた凪の腕が目に入った。すると彼は、思わず直美の腕を振りほどき、凪の方へ歩み寄った。「その怪我、まだ手当てしてなかったのか!?」渉は、赤く腫れた腕と額の傷を心配そうに見つめた。そして昔のように、痛みが和ら
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第45話

一階に降りると、ちょうど空が薬を受け取っているところだった。「どうして降りてきたんだ?」凪がうろついているのを見て、空は不快そうだった。凪は面倒なことになるのを避けようと、適当な理由を口にした。「消毒液の匂いが苦手です」彼女がうつむいているのを見て、空はそれ以上なにも聞かなかった。「じゃあ、送っていく」夜の帳が下りた。凪はブリーズ・ガーデンズに戻った。シャワーを浴びて出てきたところで秘書の宮崎泉(みやざき いずみ)から電話があった。「副社長、提携したいというプロジェクトの話が来ています。設立されたばかりの新興企業なんですが、明日の朝9時に二宮グループへ伺いたいと急かしてきまして。担当者名も伝えられておらず、かなり性急です。ですが、プロジェクトの規模は大きいようでして……少しリスクを感じるのですが、現時点でお断りしましょうか?」葵が退任したことで、彼女の秘書だった泉が、そのまま凪につくことになった。泉はとても仕事ができて、二宮グループにありがちな、口先だけで実力の伴わない社員たちとは違った。常に問題の核心を的確に突いてくるため、凪にとってこれほど頼りになる右腕はいなかった。凪は、彼女が心配する気持ちも分かった。ただ今のところ、青林グループとの提携以外に事業拡大のあてはない。二宮グループで自分の立場を固めるためには、実績となる提携先は一つでも多いほうがいいのだ。それに、相手はまだ新しい会社だ。きっと、規模もそれほど大きくないだろう。会って話を聞くだけなら問題ないし、相手の要求が法外なものでない限り、二宮グループが大きな損害を被ることもない。「明日の朝9時、会議室を確保して。対応をお願い」「承知いたしました。明日は私が直接対応します」泉はすぐに電話を切り、資料を送ってきた。……朝9時。泉から連絡が入り、相手の担当者2人を会議室へ案内したとのことだった。「担当者は男女一名ずつです。ただ、女性の方はブランド品でお洒落をしていますが、書類は何も持っていません。商談に来た、という感じではないですね。主導権は、グレーのスリーピースを着た男性の方にあると思われます」「分かったわ。丁寧にもてなしておいて」車を降りる頃には、凪は送られてきた資料に目を通し、プロジェクトの概要をだいたい把握し
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第46話

「泉!あなたは何様のつもり?私のお父さんを止めるなんて!彼は二宮グループの社長なのよ!」葵は目を吊り上げ、怒りを露わにした。渉が来た瞬間、葵はピンときていた。渉と凪が、絶対に大喧嘩になるって。そうでなければ、凪があんなに突然結婚を受け入れるはずがない。そして、あんなに急いでK市に戻ってくることもなかったはずだ。今日ここに来たのは、凪がどうやって捨てられるのかを見るためだ。元カレにこっぴどくプライドを傷つけられる様を、この目で見るためだった。それなのに、たかが秘書が自分たちを止めようとするなんて。泉は、顔色ひとつ変えなかった。「会社は誰か一人の思い通りになる場所ではありません。私は、ただルールに従っているだけです」「ルール?なんのルールだ!この二宮グループでは俺がルールだ!これ以上どかないなら、今すぐお前をクビにできるんだぞ、分かっているのか!」大地は、冷たく鼻で笑った。まさか、凪が古株の泉を手なずけただけじゃない。社長である自分の行く手を阻むほど、忠実な部下にまで育て上げるとはな。それでも泉は、びくともしなかった。彼らがなおも言い争おうとしたその時、会議室のドアが開けられた。凪は、目の前の人たちを冷たい目で見つめた。「お父さん、いい年して、子供みたいに廊下で騒ぐのはやめて。お客様が中にいるよ。こういう時、社員と揉めてる場合なの?二宮グループと二宮家の面子を潰したいの?」彼女の言葉は、どれも相手の痛いところを突くものだった。子供扱いされた大地は、恥ずかしさのあまり逆上した。葵が、ぷりぷり怒って叫んだ。「お父さんに対して、なんて失礼な口の利き方なの!」「失礼だって?お父さんの会社に迷惑をかけて、恥をかかせるのはもっと『失礼』なことでしょ?私もあなたみたいに、家で親のすねをかじって、仕事もせずに、人に噛みつくだけの生活を送ればいいのかしら?」凪は、ふんと鼻で笑った。葵は返す言葉が見つからなかった。ドアの内側で、渉は少しだけ安堵していた。二宮家では、凪はいつも爪を隠していると思っていた。でも、ちゃんとやり返すこともできるんだな。一方、直美は怖がるふりをして、渉の胸にすり寄った。「私たちは揉めに来たんじゃないのよ、渉さん。凪さんは、あんなふうに家族たちと喧嘩して、大丈夫なのかし
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第47話

「ずいぶん自信があるんだな?」「私の実力は、あなたが一番よく知ってるでしょ」凪は一歩も引かない。渉は、彼女の自信に満ちた目を見て、思わず口角を上げた。その様子を見ていた葵は、服の裾を強く握りしめた――渉は、凪に文句を言いに来たんじゃないの?どうしてここで二人でいい雰囲気になってるの?だめ、このまま凪にプロジェクトを取らせて、得意がらせるわけにはいかない。葵はわざと咳払いをした。「お姉さんの実力はみんな認めてるよ。二宮グループに来てまだ間もないのに、もう副社長の座まで上り詰めたんだから。実力で言ったら、お姉さんに敵う人なんていないよね」「……」渉は一瞬、黙り込んだ。直美は、もともと渉の様子を心配そうに見ていた。でも、葵の言葉を聞いて、ふと気が楽になった――なるほど、凪の敵は、案外たくさんいるのね。凪は冷たい顔で言った。「仕事の話をしないなら、黙ってて」これを聞いて、隣にいた大地は眉をひそめた。すぐに軽く咳払いをして言った。「彼は君の元カレだろう。私的な感情が絡む。たとえ提携するとしても、君が話すべきじゃない」「私が取ってきた仕事は、当然私のものよ」凪は鼻で笑った。なるほど、ここで待ち構えていたわけね。「二宮家の人は、人の手柄を横取りするのが好きなのですか?」渉が冷たく言い放った。渉は、板挟みになっている凪の姿を見て、胸がちくちくと痛んだ。自分と別れてK市に戻っても、彼女は幸せじゃなかったんだな。大地も言葉に詰まり、一瞬黙り込んでしまった。傍らにいた直美は、形勢が悪いと見るや、そっと渉の肩にもたれかかった。「渉さん、なんだかここの換気、よくないみたい。息が、苦しい……」渉ははっと我に返り、急いで直美の肩を抱いた。呼吸が乱れているのを見て、すぐに立ち上がり、彼女を横抱きにした。「救急車を呼んでくれ!とりあえず外に出て空気を吸おう!」「でも、凪さんとのお仕事が……」「そんなの、後でいい!」医師から言われていた。直美がまた喘息の発作を起こしたら、すぐに処置しないと取り返しのつかない後遺症が残る、と。渉は凪に一言もかける暇なく、直美を抱いて会議室を出ていった。直美が自分に向けて、勝ち誇ったような視線を送ったのを、凪にははっきりと見えた。まったく、つまらない手を使う
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第48話

「行くわ。でも先に言っておくけど、渉は甘く見ないほうがいい。あなたたちが彼の前で場をわきまえなかったから、きっと怒ってるはずよ。もし今日の商談がダメになったら、もう二度と彼とは組まないからね」そう言うと、凪はまっすぐ外へ向かった。大地が突然、彼女を呼び止めた。「下の受付に贈り物がある。二宮家が空さんのために用意したものだ。君はこの後で黒崎グループへ寄って届けてくれ。ついでにプロジェクトのことも……」楽なこと言うね。凪は返事をせず、そのままドアを押して出て行った。バタンという音で、大地の言葉は遮られた。葵が不機嫌そうに言った。「お父さん、今の態度見た?なんて失礼なの!」大地は鼻を鳴らした。「君は早く大輔さんの心を掴みなさい。いずれ代替わりすれば、あいつの顔色をうかがう必要もなくなる!」ドアの外では、渉が直美を介抱しながら、中の様子も聞いていた。彼が今回ここに来たのは、凪への埋め合わせが目的だった。だから当然、この提携話を無駄にしたくはなかった。「凪ちゃん、まずは病院だ。それが終わったら……」「凪さん、ごめん。こんな時に発作を起こして、あなたと渉さんの提携話の邪魔をしちゃって。渉さんが心配しすぎなのよ……」「あら、喘息の発作中でもそんなに喋れるのね。医学の奇跡だわ」凪は彼女の演技に、思わず拍手を送りたくなった。渉も、深く眉をひそめた。「あなたはピンピンしてるみたいだし、病院に付き添う必要はなさそうね。他に用事があるから、これで失礼するわ」凪はもう彼らを相手にするのも面倒で、ハイヒールを鳴らしてその場を去ろうとした。渉が後を追おうとすると、直美に袖口を強く掴まれた。「息ができないの、渉さん、助けて……」「直美!」渉は驚き、急いで彼女を抱き上げるとエレベーターに向かって走り出した。エレベーターの中では、凪が、渉が直美を抱きかかえて何か叫びながらこちらに走ってくるのを見ていた。「待ってくれ、閉めないで!直美が……」凪は平然とボタンを押した。ドアは一足早く閉まり、エレベーターは下降し始めた。泉はギョッとした。「副社長、先ほどの女性、かなり緊急のようでしたが……」「大丈夫よ。渉がいるんだから、死にはしないわ」直美が喘息を口実にするのは、これが初めてではなかった。
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第49話

「私が二宮葵だよ」「二宮さんでいらっしゃいますね。大輔様はまもなくお時間が空きますので、どうぞこちらへ」受付の女性はにこやかに笑いながら、案内係を呼んだ。葵は得意げに顎を上げると、凪を冷たく一瞥した。「お姉さん、黒崎家の人たちにはあまり好かれてないみたいね。中に入れてももらえないなんて。部外者の私にさえ劣るのね」凪は絶句した。たかが上の階へ行くだけで、何を偉そうに。凪はそんな些細なことを気にしなかった。葵と大輔の間に何があっても興味はないので、そのまま隣の休憩スペースへ向かった。葵は目を吊り上げた。「ふん、強がってね。下でいつまで待たされるか見ものね。私は、お先に失礼するわ……」「二宮さん」エレベーターの方から、男の人の声がした。葵はますます得意げに顎を上げ、軽蔑するように笑った。「はい。さっさと案内して」「どちら様ですか?人違いですよ」隆は冷たい顔で彼女の横を通り過ぎた。そして、凪の前までまっすぐ進むと、穏やかで丁寧な態度に変わった。「まさかいらっしゃるとは。次回は直接私にご連絡ください。すぐにお迎えの者を手配しますので」「いえ、大丈夫。空さんはいるの?」「彼は会議中ですが、二宮さんをお迎えするよう、私に特別に命じられました。どうぞ、上の階へ」凪は彼についてセキュリティゲートを通り、社長専用エレベーターへとまっすぐ向かった。葵は悔しさで目を赤くし、受付を睨みつけた。「まだ私を中へ案内しないの!」隆は凪を丁寧にエレベーターへ案内しながら、冷たい声で受付に命じた。「素性の知れない人を中に入れるな」そう言うと、エレベーターのドアが閉まった。受付の女性ははっとすると、慌てて葵の行く手を遮った。「社長の秘書の西村さんから直々にご指示がございましたので……よろしければ、大輔様にお電話されてみてはいかがでしょうか?」葵は腹を立てながら大輔に電話をかけたが、向こうはずっと通話中だった。「もう――」やっぱり凪に会うと、ろくなことがない。凪が空の社長室に足を踏み入れるのは、これで二度目だった。前回は、彼女が初めて空に会った時。それは、愛情なんてない、ただの政略結婚のためだった。でも今回は、自分の意思でやって来た。ただ、今回もやっぱり、少し打算も含まれてはいたが。
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第50話

空は会議中だったが、凪が自分のオフィスに来ていると聞き、わざわざ途中で顔を出した。まさか、彼女があの写真に見入っているとは。空は少し真顔になり、さっとドアを閉めた。「入籍した時の記念写真なんて、そんなに真剣に見るもんじゃないだろ」「なんとなく見てただけですよ」凪は見つかってしまい、気まずそうにごまかし笑いをした。空は、さらに意味ありげな眼差しを彼女に向けた。彼は、有無を言わせぬ様子で凪へと歩み寄った。「何の用だ?」凪はテーブルの上のギフトボックスを指さし、「二宮グループを代表して、あなたに賄賂します」と言った。空は思わず笑みをこぼした。まるで彼女の目的などお見通しだと言わんばかりだった。「じゃあ、今夜一緒に食事でもするか?」凪には、自分の持ってきた手土産と食事がどう関係あるのか、さっぱり分からなかった。「仕事、忙しいんじゃないですか?」空は彼女の前のデスクを指で軽く叩き、注意を促すように言った。「じゃあ、まさか俺のオフィスで賄賂を渡すだけか?食事の一つもおごってくれないのか?」コン、コン――「空さん!」大輔がすごい勢いで書類を抱えて飛び込んできた。「こちらは?」部屋に入るなり、大輔の目は空の後ろにいる、ひときわ目を引く女性の姿に釘付けになった。声に気づいた凪がそちらを見ると、大輔の視線とぶつかった。失礼な感じではないものの、どこか不快にさせる視線だった。空の声が一段低くなった。有無を言わせぬ威圧感を込めて、「君の叔母だ」と言った。「二宮家の方?」大輔の目には、驚きと残念そうな色がほんの一瞬浮かんだ。彼は、凪が階下のロビーで空と隆の名を借り、葵の顔を潰して最上階まで上がってきたと、聞いたばかりだった。もともと、大輔は可愛らしくて綺麗な葵と遊びの関係を持つのも悪くないと思っていた。しかし、簡単に人に踏みつけられるような女が、実力のある女に敵うわけがない。「挨拶しろ!」抜け目のない空が、大輔の獲物を狙うような視線に気づかないはずもなかった。大輔は、はっとした。我に返ると、彼の顔色がわずかに変わった。そして、とても不本意そうに「おばさん」と呼んだ。空はすでに隆を呼んでいた。「この後の会議は明日に延期だ。それと、車を用意させろ」「はい」隆
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