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last update Last Updated: 2025-11-19 06:00:17
 綾音は言葉を失い、扇子を握る手が震えていた。

 紅い唇が震え、目尻がぴくりと跳ねる。

(どうして……わたくしの心が、全部見透かされてるの……!?)

 そんな綾音の心の叫びが聞こえるくらい、顔が歪んでいる。

 一成は一歩、綾音へ歩み寄った。

 その動きは優雅なのに、獲物を追い詰める猛獣のように静かだ。

「ねえ、綾音嬢。気に入らないからと言って、他人の人生を壊していいわけではありませんよ。特にあなたと美桜は親戚関係に当たるのでしょう?」

「わ、わたくしは……っ!」

「あなたはさっき言いましたね? あの子は桐島京の妻でしたと」

 綾音の息が止まる。一成は微笑んだ。けれど優しさは一滴もない。

「綾音嬢こそ知らなかったのですか? 桐島京は私の妻に結婚を持ち掛けておきながら、婚姻届けも出さずに屋敷に閉じこめて冷遇し、他人のように扱い、籍すら入れず、都合よく利用しただけの男ですよ。それに腹を立てた僕の姉が、美桜を殺そうとした。れっきとした殺人未遂に、結婚詐欺ですよ」

 会場中にどよめきが走る。桐島京の顔がみるみる崩れ、こめかみが震えた。

(や、やめろ……! これ以上言うな……!)

 そんな顔をしていたが、帝都一の富豪には逆らえない。一成は続けた。「かつて、桐島君が美桜をどれほど雑に扱ったか……僕はすべて聞いています。結婚もしていなかった男のところに嫁いでいたと噂をされても、事実はなかったというしかありません」

 綾音の膝ががくりと落ちかけた。カタカタと肩が震えている。

 まんまと罠にはめ、美桜を失脚させようとしたつもりが、浅野一成に一蹴されたどころか、桐島家の醜聞を晒してしまった。今後、西条家がどうなるか――……桐島家からの報復を考えると、立っていられなくなった。

 一成はそこで、ふっと笑みを変える。美桜の腰にそっと手を回し、引き寄せた。

「美桜はね、僕の大切な妻なんです。過去なんて関係ない。誰がなんと言おうと、僕が愛している。……それがすべてです」

 美桜は一瞬で顔が熱くなった。

(ひ、人前でそんなこと言わないで……)

 でも嬉しくて胸がぎゅっとなる。この感情を、なんと呼べばいいのだろうか。

 甘く切ない、この感情を――

 一成は美桜の肩越しに綾音を見下ろし、静かに告げる。

「綾音嬢。あなたは自分より幸せそうな美桜が許せないだけだ。自分より光を持つ者を見ると、どうして
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