慎がわざとやったのだということは、紬にはとっくにわかっていた。わざわざ、会議の邪魔をしたのだ。紬はため息をついて立ち上がり、ベッドへ歩み寄った。慎の呆れた要求はひとまず横に置いておき、身をかがめて彼の襟元をそっと引き、背中と胸の傷口を確認した。異常はなかった。今はもうそう頻繁に薬を替える必要もなく、あとは傷跡が薄れるよう、塗り薬をしっかり続ければいい状態だ。「お風呂に入るんじゃないの?立たないの?」紬の表情は特に変わらず、恥ずかしがる様子も一切見せなかった。慎はわずかに目を細めた。「……本当に入るのか?」「あなたが言い出したんじゃないの」慎は軽くため息をついてから、涼しい顔のまま枕にもたれ直した。「まさか。大病明けの体のお前に、俺の風呂の世話をさせるほど非道じゃない。お前が仕事で遅くまで起きているのが気になったから、少し休めと言いたかっただけだ」なるほど、もっともらしい言い訳だ。それが彼の不器用な気遣いから出た行動だということも、紬にはわかった。時計を確認して、慎の方へ顎をしゃくった。「じゃあ、寝室に戻る?」慎は本を置き、そのままごろりと横になった。「気遣いはありがたいが、いい。お前に合わせて、俺もこっちで寝る」「…………」屁理屈もいいところだ。テコでも動く気はないようだ。今夜は自分が家のどこにいようと、慎は必ずついてくるのだと、紬にもはっきりとわかった。彼にこんなに粘り強くて子供っぽい一面があるとは、以前はまったく気づかなかった。本当のところ、紬も眠かった。ただ、どうにも落ち着かない気持ちが胸に残っていた。ぼんやりと考えていると、ふいに手首を引かれた。体がそのまま、強い力でベッドへと引き倒される。慎の痛む体の上に倒れ込まないよう、とっさに身を傾けたが間に合わず、彼の肩のあたりにそれなりの重みがかかってしまった。「慎!怪我人という自覚はあるの!?」紬は少し声を荒げて、両手でベッドをついて体を起こそうとした。慎はその瞬間、後ろの傷に当たったのか、薄く息を吸い込んだが、構わず素早く手を伸ばして紬の細い腰を抱え込み、ぐっと自分の胸元へと引き寄せた。目を落とし、不満げな紬と至近距離で視線が絡んだ。慎は目尻を少し面白そうに上げた。「ご機嫌斜めだな、温
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