静奈がドレスの裾を軽く持ち上げ、更衣室から歩み出てきた瞬間、その場の空気が静まり返った。少し離れた場所に立っていた湊の視線は、彼女の姿に完全に釘付けになった。その黒い瞳には、隠しきれないほどの深い感嘆と見惚れるような色が満ちていた。周囲の景色がすべて色褪せ、彼の目には、この純白で優しいシルエットしか映っていなかった。その瞬間、彼はふと我を忘れ、頭の中に一枚の映像がコントロールを失ったように浮かび上がった。純白のウェディングドレスを身に纏い、優しい微笑みを浮かべた彼女が、一歩、また一歩と自分に近づいてくる。自分の生涯ただ一人の花嫁として。ドレスサロンの店長が、たまらず感嘆の声を漏らした。「神崎社長、彼女さん、本当にお綺麗ですね。私が今まで見た中で、一番お美しい女性です」湊はゆっくりと歩み寄り、ごく自然な動作で静奈の柔らかい手を取り、目元に浅い笑みを浮かべた。当然だ。俺の静奈は、この世で一番美しい。誰にも比肩できない、世界でただ一つの存在だ。湊が車を運転し、静奈を乗せてクルーズ船の晩餐会会場へと向かった。夜の帳が下り、海は果てしなく広がっている。巨大なプライベート・クルーズが海上に停泊し、船体は眩いばかりの光に包まれていた。黄金色のイルミネーションが波打つ海面に反射し、砕けた光の欠片がキラキラと揺らめいている。宴会場内は名士や権力者たちで溢れかえり、至る所にトップクラスのコミュニティならではの高級感と威厳が漂っていた。湊が会場に足を踏み入れるや否や、彼は瞬く間に全場の注目の的となった。彼は神崎グループの若き実権者であり、若くして巨大なビジネス帝国を統べ、冷徹な手腕と揺るぎない地位を持ち、この地に根を下ろしてわずか半年で大きな嵐を巻き起こした男だ。ただ、彼は普段から非常に控えめで、公の場に姿を現すことは滅多になかった。ビジネスの知人や取引先の上層部たちが彼を見つけると、次々とグラスを片手に挨拶にやってきた。「神崎社長、ようこそおいでくださいました。今夜は一段と華やかになりますな!お噂はかねがね伺っておりました。今日こうしてお目にかかれて光栄です!」中には、彼に寄り添う静奈に視線を向け、その清らかで浮世離れした美しさと、上品で気高いオーラに気づき、笑顔で持ち上げる者もいた。「神崎社長、そ
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