FAZER LOGIN敷き直した毛布の上に仰臥した南郷は、傍らに座り込んでいる和彦に向けて手招きをしてくる。鷹揚な動作に反発する余裕もなく、毛布に包まった体を小刻みに震わせる。
逃げ道を探すように、どうしても視線を扉に向けてしまいそうになるが、それだけで南郷の機嫌を損ね兼ねないと思い直し、渋々――嫌々、横たわる逞しい体に目を向ける。隠す必要はないとばかりに南郷は、脇腹から下腹部にかけて這う百足の刺青だけではなく、興奮が鎮まる気配のない欲望を見せつけてくる。 そうやって、和彦の反応を楽しんでいるのだ。その証拠に、揶揄するように声をかけられた。「いつまで、そうやっているつもりだ。俺の体が冷えちまう」 南郷の肌を汗が伝い落ちている。それがひどく生々しく感じられ、和彦は咄嗟に顔を背けた。「やっぱり――」「嫌だというなら、さっき言ったが、あんたをこの場で犯すだけだ。暴れられて、思わず手を上げるなんて事態にはしたくないから、申し訳ないが縛らせてもらうが。尻さえ突き出してもらえば、用は済む」 卑猥で下劣な言葉に、煽られているとわか敷き直した毛布の上に仰臥した南郷は、傍らに座り込んでいる和彦に向けて手招きをしてくる。鷹揚な動作に反発する余裕もなく、毛布に包まった体を小刻みに震わせる。 逃げ道を探すように、どうしても視線を扉に向けてしまいそうになるが、それだけで南郷の機嫌を損ね兼ねないと思い直し、渋々――嫌々、横たわる逞しい体に目を向ける。隠す必要はないとばかりに南郷は、脇腹から下腹部にかけて這う百足の刺青だけではなく、興奮が鎮まる気配のない欲望を見せつけてくる。 そうやって、和彦の反応を楽しんでいるのだ。その証拠に、揶揄するように声をかけられた。「いつまで、そうやっているつもりだ。俺の体が冷えちまう」 南郷の肌を汗が伝い落ちている。それがひどく生々しく感じられ、和彦は咄嗟に顔を背けた。「やっぱり――」「嫌だというなら、さっき言ったが、あんたをこの場で犯すだけだ。暴れられて、思わず手を上げるなんて事態にはしたくないから、申し訳ないが縛らせてもらうが。尻さえ突き出してもらえば、用は済む」 卑猥で下劣な言葉に、煽られているとわかっていながらも反応せざるをえない。屈辱感に唇を噛み、怯えを押し殺しながら南郷を睨みつける。どこまでも和彦を甘く見ているのだ。だからこそ無防備に、こうやって体を曝け出せるのだ。 いくら非力とはいっても、爪で肌すら傷つけることができなくても、目を狙うことぐらいはできるというのに。「――怖いことを考えている顔だな、先生。普段は優しげなんだが、あんたはときどき、ゾッとするほど冷たい顔をする。感情が一気に欠落して、人間から人形になったような感じに……」 我に返った和彦が身構えようとしたときには、腕を掴まれ引っ張られる。抵抗する間もなく、分厚い胸元へと倒れ込み、間近から南郷と目が合っていた。さきほどまで皮肉げな色を湛えていたはずの両目に情欲の気配を感じ取り、和彦は息を呑む。 身じろごうとして、自分が南郷の右脇腹に手を置いていることに気づいた。そこから毒に侵入されたように、なぜか体が動かなくなった。 後頭部に南郷の手がかかり、ぐいっと引き寄せられる。「んっ……うぅ」
和彦は最後の抵抗とばかりに、抱えられた両足を振り上げ、なんとか南郷の顔か肩を蹴りつけようとする。南郷は煩わしそうに顔をしかめると、柔らかな膨らみに手を伸ばした。「暴れると痛い目をみるぞ、先生」 手荒く揉みしだかれて甲高い声を上げる。的確に弱みを弄られて、ささやかな抵抗は完全に封じられてしまった。 南郷が、指にたっぷり垂らした唾液を内奥の入り口に施してから、再び欲望を押し当ててくる。濡れた肉をわずかにこじ開けられたところで、堪らず和彦は細い声を上げる。無意識に片手を伸ばしてさまよわせると、その手を掴まれ、南郷の脇腹へと導かれていた。 ごつごつとして硬い腹筋を指先でまさぐると、逞しい体がブルッと震える。 気味の悪い百足の刺青になんとか触れまいとしたが、それを南郷は許さなかった。しっかりとてのひらを押し当てることを求められ、今にも内奥を犯されそうになりながら和彦は、百足を撫でた。 ああ、と南郷が吐息を洩らす。この瞬間、和彦の中で湧き起こる感情があった。 ある意味、馴染み深い感情ではあるが、南郷に対して持つべきものではない。和彦は必死に自分の中で否定しようとするが、その間にも南郷の行動は淫らさを増していく。「んんっ――」 欲望の先端で内奥のごく浅い部分をこじ開けられはするものの、深く押し入ってくることはなく、ただ擦られ、突かれ、浅ましい肉が自ら蕩けていくのを待つように刺激される。「美味そうな肉だ。真っ赤に充血して、濡れて、蠢いて……。先生は、百足が肉食だってことぐらいは知ってるだろ。昆虫だけじゃなく、小さな動物にだって喰らいつく。そんな百足だが、喰われることもある。天敵ってやつだな。例えば――蛇だ」 再び反り返った和彦の欲望の先端から、透明なしずくが垂れ落ちる。内奥に先端を浅く含ませたまま、南郷が片手で欲望を扱き始める。堪え切れず和彦は喘ぎ声を上げながら、腰を揺らしていた。「が、一方的に喰われるだけじゃない。蛇だろうが油断すれば、百足は容赦なく餌にする。獰猛でふてぶてしいんだよ。地面を這いずり回るどころか、湿った暗い場所に身を潜めているような嫌われ者の生き物だが、だからこそ俺にぴったりだ。極道の世
南郷が思わせぶりな手つきで、着ているワイシャツのボタンを上から外し始める。浅黒い肌が露わになっていくにしたがい、強い匂いが和彦の鼻先を掠めた。南郷自身の体臭に、汗だけではなくコロンや煙草の匂いも混じっている。 不快なほど強烈な雄の匂いだと思い、反射的に顔を背けようとしたが、南郷がワイシャツを一気に脱ぎ捨てる。 そこで姿を現したものを目にして、和彦は動けなくなった。 まさに筋骨隆々という言葉がふさわしい体つきに圧倒されたからではない。そんな南郷の引き締まった右脇腹から下腹部にかけて、不気味な影が這っていたからだ。 影の正体を知った途端、総毛立つ。本能的な忌避感と嫌悪感が、全身を駆け巡っていた。 瞬きもしない和彦に見せつけるように、南郷がわずかに体の向きを変える。「――こいつが俺のとっておきだ。立派なもんだろう?」 南郷が身じろぐたびに、浅黒い肌に彫られた刺青が、まるで生きているように蠢く。和彦はおぞましさに顔を強張らせながら、詰めていた息をわずかに吐き出す。 南郷の肌に棲んでいるのは、大きな百足だった。 艶々とした黒く長い体にはいくつもの節があり、そこから左右対となる無数の足が生えている。触覚を伸ばす頭と足は毒々しい赤色が使われ、それが気味の悪さに拍車をかけている。 ただ、彫った人間の腕は確かなものだろう。精緻に彫られた百足はあまりに生々しく、身をくねらせている姿に卑猥さすら感じる。「見惚れてくれてるのか、先生?」 南郷がのしかかってきて、己の高ぶりを和彦の下腹部に擦りつけてくる。いや、刺青を擦りつけているのだ。意図を察した和彦は全身を使って南郷を押し退けようとするが、びくともしない。 覆い被さってきた南郷と、汗で濡れた素肌同士が重なり合う。南郷から立ち昇る雄の匂いがますます強くなり、和彦は眩暈にも似た感覚に襲われる。そこに、まるで甘い毒でも注ぎ込むように、南郷が囁きかけてきた。「あんたなら、俺の刺青とも仲良くなれると思っていた。長嶺の男たちですら甘やかしているあんただ。俺の百足も、同じように甘やかしてくれ」「な、に、言って……」
胸の突起を吸われ、舌先で弄られながら、不意打ちで軽く歯を立てられる。そのたびに和彦は声を上げ、身を震わせる。怯えと、背筋を駆け抜けるゾクゾクするような感覚のせいだ。 執拗に胸元への愛撫を続けながら、南郷の片手が当然のように和彦の欲望を握り締めてくる。腰を跳ねさせて暴れようとしたが、先端を爪の先で弄られて、機先を制された。「暴れるなよ、先生。いつもみたいに、よくしてやるから」 感じやすい敏感な部分を、爪の先でくすぐるようにして苛められ、我知らず和彦は間欠的に声を上げていた。 賢吾によってささやかに〈開かれて〉から、感じ方が変わってきていると自覚はあった。疼痛とも快感ともいえる感覚の波はあまりに強烈で、もう一度味わってみたいと心のどこかで思っている。 だがそれは、相手が賢吾であるからだ。「――濡れてきたな」 和彦の動揺を誘うようなことを南郷が口にする。先端に少し強めに爪が立てられて、ジンと腰が痺れた。和彦は無意識に、南郷の手を押し退けようともがく。「あっ、嫌……。そこ、怖い、です」「心外だな。こんなに優しく、苛めてやっているのに」 南郷らしくない、こちらの機嫌を取るような真摯な声音で囁きかけてきながら、爪の先で掻くように刺激される。声を詰まらせて和彦は腰を引こうとするが、南郷にしっかりと片足を抱え込まれていた。 ひどいことをされるのではないかと、咄嗟に顔を強張らせる。そんな和彦を一瞥して、南郷は楽しげに喉を鳴らした。「よほど俺は信用されてないんだな。――まあ、まだ先生は、こっちを弄られるほうが好きということか」 南郷の指が柔らかな膨らみへと伸び、ゾッとするほど丁寧な手つきで撫でられる。新たな刺激に和彦は、爪先を毛布の上で滑らせた。「うあっ、あっ、あっ、ああぁっ――」 弱みを指先で探り当てられ、まさぐられる。いくら嫌だと思っても、触れられた時点で体は言うことを聞かなくなる。 南郷に見つめられながら体を波打たせ、無防備に両足を開いて腰を揺らす。じっくりと嬲るように柔らかな膨らみを揉みしだかれているうちに、いつ痛みを与えられるのかという恐れだけではなく
もっとも、それで南郷が満足するはずもなく、脇腹を思わせぶりに撫でられながら、トレーナーを押し上げられる。素肌に触れるぬるい空気に、反射的に和彦は首を竦める。子供の機嫌をうかがうように、やけに甘い声で南郷が問いかけてきた。「寒いか、先生?」 暖房が効いて暑いというのは、大げさな表現ではなかったのだろう。いつの間にか南郷の額にはうっすら汗が浮いている。極度の緊張から、体が冷え切っている和彦とは対照的だ。そんな和彦を暖めようとするかのように、腹部に大きなてのひらが押し当てられる。 さきほどまで冷たかった南郷の手は、今はもう戦くほど熱くなり、和彦の肌すら温めていく。何かよからぬものに自分が侵食されていくような不気味さを感じ、和彦は身を捩ろうとしたが、その反応が南郷を刺激したらしい。いきなり胸元までトレーナーを捲り上げられた。「うっ……」 露わになった胸元に、両てのひらが這わされる。 覚えのある状況だった。明かりの下、南郷に押さえつけられて体をまさぐられ、和彦は震える。「いい加減、俺の感触にも慣れてきただろう。そうなってもらわないと、困るんだが。なんといっても、長いつき合いになる。慣れないと、あんたがつらいだけだ」 どういう意味かと、眼差しで問いかける。南郷は、今のは失言だというように、おどけた仕種で肩を竦める。和彦は食い下がろうとしたが、強引にトレーナーを脱がされ、それどころではなくなる。 覆い被さってきた南郷の体の重みに声を洩らしたときには、また唇を塞がれていた。「んっ、んんっ」 スウェットパンツのウェストに手がかかり、引き下ろされる。口腔に押し込まれた舌に粘膜を舐め回され、逞しい体の下でもがくが、南郷に下着ごとスウェットパンツを腿の半ばまで下ろされていた。 足をばたつかせた拍子に、誤って床に踵をぶつけてしまう。痛みに呻き声を洩らし、身を強張らせると、さすがに南郷が唇を離した。「今ので足を痛めたか?」「……なんでも、ないです」「気をつけてくれよ。風邪を引かせるのはもちろん、あんたの体に青痣を残すなんてしたくないからな。――あんたの体
声を上げようとして再び唇を塞がれた挙げ句、引き結んだ歯列を舌先でこじ開けられる。恐慌状態に陥った和彦は、本気で南郷の舌に歯を立てようとしたが、その気配を察したように後ろ髪を乱暴に掴まれ、さらに両目を覗き込まれる。 凄んではいない。それどころか、和彦の反応を楽しんでいるような、余裕すら湛えた南郷の眼差しに、心底震え上がる。「寒いなら、まずはキスで暖めてやるよ、先生。嫌いじゃないだろ。俺とのキスは」 強張った唇を柔らかく啄みながら、南郷が囁きかけてくる。顔を背けたい和彦だが、後ろ髪を掴まれたままのうえに、腰に回された鋼のような腕の感触に怖気づく。無意識のうちに南郷の肩に手をかけていたが、押し退けるどころか、小刻みに震えていた。「そう、怯えなくてもいいだろ、先生。俺はこれまで、手荒なことはしていないつもりだ。長嶺の男たちにとって宝物みたいな存在を、俺ごときが傷つけるはずがない。……少しばかり、意地の悪いことはしたが」 ここでまた、南郷にしっかりと唇を塞がれる。口腔に舌を押し込まれ、堪らず和彦は、南郷の顔を押し退けようとしたが、上唇に軽く噛みつかれる。頑丈そうな歯は、いつでも自分の唇を食い千切る凶器となりうる。和彦に一度も手荒なことはしていないという南郷の発言はウソではないが、今この瞬間もそうだとは限らない。そう思わせるものが、この男にはあるのだ。 ふいに唇を離した南郷が苦笑めいた表情を浮かべ、呟く。「……今思い出した。今晩、俺の前に、あんたにキスした男がいたんだったな」 和彦は激しく動揺し、そして強い怒りに支配される。自分でも意外な力を発揮して南郷に体当たりをすると、後ろ髪を掴んでいた手が離れる。しかし、腰に回された腕の力が緩むことはなく、南郷は、和彦の反撃をおもしろがるように目を細めた。「艶やかだな。あんたの怒りの表情は。どうして今怒ったのか理由はわからないが、聞いたところで教えてはくれないだろうな」 残念だ、と洩らした南郷がベッドに片手を伸ばし、枕代わりに使っていた毛布を掴む。一体何をするのかと思って見ていると、乱雑に床の上に広げた。 あっという間だった。前触れもなく足元を払
外から男二人のにぎやかな話し声が聞こえてくる状況で、求められるまま、やむをえず舌を絡め合い、唾液を交わす。引き出された舌を痛いほど吸われると、たまらず和彦は鷹津の肩にすがりついていた。 ますます鷹津の腕の力が強くなり、和彦の中で奇妙な変化が起こっていた。鷹津のことがどうしようもなく嫌いで、嫌悪しているのに、そんな男にねじ伏せられるように口づけを交わしていると、高揚感に襲われ、体の奥深くから強引に官能を引き出される。 官能に形を借りた、サソリの毒かもしれないと、ふとそんな考えが脳裏を過る。鷹津の毒を注入され、体も心も侵されていくのだ。 思わず身じろごう
さすがの賢吾も、和彦の心を煩わせるものすべてを見通すことは不可能らしい。「……最初にぼくを狙って、あんなことをした人間が、どんな顔をして、そんなことを言うんだ」「俺はいい。俺は、許されるんだ」 さすがに図々しい発言だと思って和彦が顔を上げると、待っていたようなタイミングで唇を軽く吸われた。「先生を狙って自分のものにして――見事に、骨抜きにされたんだ。そんな哀れなヤクザを、愛情深い先生なら、たっぷり甘やかしてくれるだろ?」 本当に図々しいと思いながらも、和彦はつい笑みをこぼしてしまう。 自
「不愉快どころか、やけに楽しそうでしたよ、秦さん。いい店を先生に紹介しないと、と張り切ってもいましたし」「ならいいんだ。あの人、職業柄なのか知らないけど、よく気をつかってくれるから。ぼくみたいな人間につき合って、迷惑をかけても悪いしな」 和彦が、長嶺父子のオンナであることは、すでに知られている事実だ。いまさら千尋と甘い会話とキスを交わしていたからといって、他人に喜んで報告するような悪趣味なまねを、秦がする必要もない。 和彦が心配していたのは、そんなことではなく、純粋に今言った通りのことだった。 大きく息を吐き出しながら、中島がマシンをゆっく
「――先生」 呼ばれて、おずおずと振り返ると、そこに真剣な賢吾の顔がある。何か言われたわけでもないのに、和彦は小さく喘いでから賢吾の唇にそっと自分の唇を重ねた。すると、賢吾のもう片方の手に、和彦の柔らかな膨らみは包み込まれる。 「ひっ、あぁっ」 泡で滑る手に柔らかく揉みしだかれ、たまらず和彦は、ビクッ、ビクッと腰を震わせ、背をしならせる。下肢が、甘く溶けてしまいそうだった。 「あとでたっぷり、ここを揉んで悦ばせてやる。最近、弄られるのがよくなってきたみたいだからな。今は、洗うだけだ」 賢吾の的確に動く指は貪欲に、和彦の官能を刺激する







