**** ソファに腰掛けた和彦の顔を見るなり、無表情が売りである男は、わずかに目を丸くしたあと、微苦笑を浮かべた。「――これからパーティーに出かける人間の顔じゃないな、先生」 三田村の言葉に、和彦は眉をひそめてから、自分の顔に触れる。「そんなに嫌そうな顔をしているか?」「ヘソを曲げた子供みたいな顔をしている」 三田村が冗談を言うのは珍しいと思ったが、もしかすると本当に、そんな顔をしていたのかもしれない。今の和彦は、少々の機嫌の悪さと、釈然としない気持ちを引きずっていた。 髪に指を差し込もうとして、セットしたばかりなのを思い出す。一応、スーツも下ろしたばかりのものを着込んでいるのだ。気軽なパーティーだと言われはしたが、さすがにラフな格好で出かけるのは気が咎める。 そう、和彦はこれから、パーティーに出かけなくてはならない。しかも、秦に招待されたパーティーに。 秦から誘いを受けたことは、すぐに三田村に、そして賢吾にも報告したが、その賢吾から返ってきたのは、意外な言葉だった。 出席しろ――。 和彦が悩み、考え込む様を楽しむ、嫌な性向を持ち合わせている賢吾としては、このときから今この瞬間まで、和彦の反応は非常に満足のいくものだったろう。和彦はずっと、賢吾だけでなく、秦の意図を考え続けていた。 その結果が、三田村に『ヘソを曲げた子供みたい』と言われた顔だ。 そろそろ時間だと示すように、三田村が腕時計をこちらに見せる仕種をする。仕方なく和彦は立ち上がった。「本当は、こういうときこそ先生についていてやりたいんだが……」 玄関に向かいながら、ぽつりと三田村が洩らす。夕方から、仕事の関係で本宅に詰めることになっている三田村は、出かける時間をギリギリまで延ばして、こうして和彦の見送りにきてくれたのだ。 和彦はちらりと笑みをこぼし、三田村の腕を軽く叩く。「有能なヤクザっていうのも、大変だな」「……堅気にそう言われたら嫌味だが、先生に言われると…&hel
Last Updated : 2025-12-16 Read more