どこかに出かけるとき、和彦には必ずといっていいほど護衛がつき、外で一人になることはほとんどない。この生活に入ったばかりの頃は、比較的自由だったのだが、今となっては、その頃の解放感が懐かしい。 長嶺組での和彦の重要性が増したうえに、ある男の登場によって、自由は侵食されつつあった。 そんな状況下で、夜のコンビニにふらりと出かけることは、和彦のささやかな楽しみとなっていた。もちろん、組員たちはいい顔をしないが、賢吾が何か言ったのか、黙認される形となっている。 マンションからコンビニまで、片道ほんの数分ほどの道のりをのんびりと歩きながら、濡れた髪を掻き上げる。秋めいてきたとはいえ、日中は陽射しの強さによっては暑いぐらいのときもあるのだが、さすがに夜風はひんやりと冷たくなってきた。ただ、シャワーを浴びて火照った頬には、その風が心地いい。 このまま夜の散歩といきたいところだが、さすがにそれは自重しておく。 和彦は、昨夜、三田村から聞かされたことを思い出し、そっと眉をひそめていた。 結局、警察による手入れはなかったが、風営法違反の際どいサービスを行っている店もいくつかあったため、警察に踏み込まれるのを恐れて臨時休業したらしい。手入れがあるという情報がもたらされた以上、しばらくは警察の動きを警戒して、まともな営業は望めないそうだ。 情報に振り回されたと、三田村は淡々とした口調で電話で話していた。警察内で何が起こっているのか和彦には知りようがないが、〈誰か〉は、長嶺組がこの状態に陥ることを狙っていたはずだ。この程度で組が危機に陥ることはないが、煩わされるのは確かだ。 落ち着くまで長嶺の本宅で過ごしたらどうかとも三田村に言われたのだが、さすがにそれは断った。一日、二日をあの家で過ごすのはかまわないが、何日ともなると、和彦の精神が参りそうだ。 そもそも和彦は、人と一緒に暮らすことに慣れていない。これまで何人かの恋人とつき合ってきたが、同棲にまで至らなかったのは、そのためだ。 コンビニで牛乳とガムを買い、まっすぐマンションに戻っていた和彦だが、ふと足を止めて振り返る。三田村と交わした会話のせいではないが、さすがに和彦も、自分の危なっかしさを自覚し、最低限の自衛手段
最終更新日 : 2025-12-20 続きを読む