「今、あんたのことなんて言ってないだろ。――心配しなくても、一癖も二癖もあるヤクザに見える」 ぼそぼそと応じると、衿を整えながら賢吾が満足げに頷く。片手を差し出してきたので、今度は帯を渡す。「遊撃隊は、必要に応じてどんな仕事でもやる。最近は、縄張りの管理や、情報収集を担当しているようだが、裏で……な。俺のオヤジのお気に入りだから、総和会の幹部連中も把握してないことを、いろいろと任されているみたいだ」「……なんだか、危ないところみたいだな。中嶋くんだけを見ていると、そういうイメージを抱かなかったんだが」「手っ取り早く総和会で出世したかったら、ルートは限られる。中嶋はよく調べてるようだな。総和会会長のお気に入りの男に近づき、ちゃっかり第二遊撃隊に潜り込んだ。ただし、野獣みたいな連中揃いの中で、ホスト上がりの中嶋の経歴は、澄ました二枚目ぶりもあって、少し浮いている」 それは和彦も感じた。元日に出くわした一団の中で、中嶋の存在は目を引いたのだ。「中嶋が心配か?」 帯を結びながら賢吾に問われ、思わず苦い表情を浮かべた和彦は、首を横に振る。「そういうんじゃない。彼は一人で行動しているイメージが強かったから、ああいうふうに、いかにもヤクザらしい集団の中にいるのを見て、少し驚いた。中嶋くんが、頭の切れるヤクザだと、理解しているつもりだったんだけど――」「現状、先生の周りにいるのは、ヤクザか、ヤクザみたいな男ばかりだ。善良な人間はいない。もし仮にいたとしても、そういう奴は、今の先生には指一本触れられない。怖い連中が先生を守っているからな。つまり、先生に近づくのは、ふてぶてしくて食えない男ばかりだということだ。見た目に関係なくな」 賢吾としては、中嶋に対して生ぬるい感情を抱く必要はないと言いたいのだろう。 笑みをこぼした和彦は、ああ、と短く答えた。その返事に賢吾は満足したようで、手慰みのように和彦の頭を撫でてくる。 なんだかくすぐったくて、同時に、照れくさい。和彦は大きな手を押し戻そうとしたが、反対に手を握られた。「――ちょっと着物を着てみないか」 意外な賢吾
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