Beranda / BL / 血と束縛と / 第17話(45)

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第17話(45)

Penulis: 北川とも
last update Tanggal publikasi: 2026-03-01 17:00:49

 勝手な言い分だと思ったが、あながち間違ってもいないので、反論できない。それに、本宅で過ごす時間は嫌いではなかった。

 和彦は鼻先を掠める香りに気づき、視線をある方向に向ける。応接間の一角には、華やかなスペースができていた。クリニックの開業祝いに贈られた胡蝶蘭たちだ。寒さも直射日光も避けられる場所が、長嶺の本宅にはたくさんある。その一つが、この応接間というわけだ。

 和彦も組員から育て方を聞いて、恐る恐る鉢の一つの世話を始めたところだった。

 書類すべてに署名を終えると、賢吾が組員にコーヒーを運ばせてくる。書類をまとめてテーブルの隅に置いた和彦は、さっそくコーヒーにミルクを注いだ。

「先生、明日もクリニックは休みなんだから、本宅に泊まっていったらどうだ」

 さりげなく賢吾に切り出され、コーヒーを混ぜた和彦はちらりと視線を上げる。返事は決まっているとばかりに、賢吾は薄い笑みを浮かべていた。

「……ついこの間、たっぷり世話になったばかりだと思うんだが……」

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  • 血と束縛と   第40話(28)

     秦と中嶋の関係にこれ以上立ち入っては、単なるお節介だなと見切りをつけ、和彦は帰り仕度を始める。まだ飲み足りないし、弱音も吐き足りないのだが、秦をつき合わせるのも気が咎めた。 秦なりに今夜は傷心のようで、いつものように甘ったるい台詞は期待できないだろう。――別に聞きたいわけではないが。 立ち上がり、コートに袖を通す和彦を、驚いたように秦が見つめてくる。「もうお帰りですか?」「ぼくは、中嶋くんと飲みたかったんだ。せっかくの機会を潰した罰として、ここの支払いは君が持ってくれ」「それはもちろんです。でも、もう少しわたしにつき合ってもらえると嬉しいのですが……」「今夜は、他人の愚痴を聞ける精神状態じゃない。それに、中嶋くんの同行があって、護衛なしでの夜遊びを許可されているのに、肝心の彼がいなくなったんだ。それが組にバレると面倒だ」 引き止めようとする秦の声を振り切って、個室を出ようとした和彦だが、ふとあることが気になって足を止める。思い切って秦を振り返った。「――……あの男から、連絡はないのか」「聞きたいことは、一つでは?」 和彦が唇を引き結ぶと、秦は気障な仕種で肩を竦める。そして、緩く首を横に振った。それを見届けてから、今度こそ和彦は個室をあとにした。 きちんと四人分の飲み代を支払って店を出ると、エレベーターホールに向かいながらマフラーを首に巻く。 期待したわけではないので、失望はなかった。ただ気まぐれに、行方をくらました男――鷹津のことを尋ねただけで、それ以上の意味はない。和彦はそう自分に言い聞かせながらエレベーターに乗り込んだ。 ビルのエントランスまで降り、外の通りを眺める。寒そうに肩を竦めて歩く人たちの姿を見て、帰りはどうしようかと考えていた。この時間帯、すぐにタクシーが捕まるとも思えないが、だからといって長嶺組から迎えを寄越してもらうわけにもいかない。 ひとまず中嶋に、一人で帰るとメールだけでもしておこうと、携帯電話を取り出す。簡単な文章を打ち込んでから和彦は顔を上げ、再び通りに目を向ける。何げない一連の動作だが、数瞬遅れて強烈な違和感に

  • 血と束縛と   第40話(27)

     秦に厄介な火を灯した元凶ともいうべき中嶋は、加藤と寝ていると打ち明けたことをどう感じているのだろうか。加藤だけではなく秦まで、自分の思惑から外れた行動を取ったことに、戸惑っているのか、苛立っているのか。 和彦は、瞬く間に頬が上気した中嶋を、そっと盗み見る。自分だけ先に帰ってしまおうかと考えなくもなかったが、三人それぞれと関わりを持っているだけに放っておけない。善人ぶるつもりはなく、自分が去ったあとの事態を危惧したのだ。「――加藤くん、仕事は大丈夫なのか?」 声をかけると、伏せがちだった切れ長の目がまっすぐ和彦を捉える。腹が決まったような顔つきになっていた。「はい……。夕方から明日の午前中いっぱい、休みをもらっていますから」「貴重な休みなら、こんなところで胡散臭い男……たちにつき合ってないで、早く帰ったらどうだ」 加藤は毅然とした表情で、首を横に振った。「いえ。俺も……、この人――秦さんと話をしてみたいので」 次の瞬間、バンッと大きな音が個室内に響く。中嶋が乱暴にテーブルを叩いたのだ。 中嶋は立ち上がると、憎々しげに秦を睨みつけた。「……怒って、いるんですか?」「どうして、〈おれ〉が怒るんだ。お前が先生と寝ていても、嫌だと思ったことはない。むしろ、羨ましい――」「とぼけないでください。俺と加藤のことです。こんな、あなたらしくないことまでして……」「お前の言いたい秦静馬らしさとは、お前が打算含みで誰と寝ようが、他人事のように涼しげに笑っていることか?」「俺相手には、どんなふうに振る舞ってもいいです。だけど、こいつを……加藤を巻き込むのは違う」「どう違う? お前は先生を利用して、足場を固めようとしている。加藤くんのことも、手駒にしようとしているんだろ。おれは先生と親しくしているんだ。加藤くんとも親しくしたいと思っても、おかしくはないはずだ」 中嶋が返事に詰まったのは、傍らで見ていてもわかった。咄嗟に和彦が秦を窘

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     毛皮特有の上品な光沢を帯びたロングコートにセカンドバッグという出で立ちは、美貌の怪しい青年実業家という肩書きを実によく演出しており、似合ってはいるものの、いつも以上に胡散臭く見える。 おやっ、と思ったのは和彦だけではなく、中嶋も軽く眉をひそめていた。「部屋を出たとき、そんな格好はしてなかったでしょう。……なんだか、ホストをスカウトしていた頃のあなたに戻ったようですよ」「人と待ち合わせをするのに、目立つ格好のほうが都合がよかったんだ。このコートは、うちの店のホストに借りた」「……面倒くさいことを……。それで、野暮用は片付いたんですか?」 呆れたように問いかける中嶋に対して、秦が一瞬ドキリとするような鋭い笑みを向けた。華やかだが、同時に胡散臭さもつきまとう男を、その笑みはまったくの別人のように見せた。 和彦がよく知る、独占欲と執着心の強い、厄介な男たちのような――。「まあ、片付いたと言えば、片付いたな。予定通り、連れて来ることができたから」 和彦と中嶋は同じタイミングで首を傾げ、数秒後には驚きの声を上げていた。秦に続いて、遠慮がちにカーテンを開けて個室に入ってきたのが、まったく予想外の人物だったからだ。「加藤……」 ぽつりと中嶋が呟く。 トレーナーの上からライダースジャケットを羽織った格好の加藤は、状況がよく呑み込めない様子ながら会釈をしたあと、その場にいる三人を見回す。一体なんの集まりかと問うように視線を向けたのは、中嶋だった。一方の中嶋のほうは、困惑したように秦を見た。 和彦は不穏な空気を感じ取り、ソファの上で動けなくなっていた。秦の鋭い笑みを目にしたあとで、突然の加藤の登場だ。〈偶然〉によって作られた状況のはずがなかった。 秦は悠然とロングコートを脱ぐと、空いているソファに腰掛け、居心地悪そうに立ち尽くしている加藤にも座るよう促す。我に返った中嶋が口を開こうとしたが、秦は片手をあげて制すると、二人を案内してきたスタッフに注文を頼む。 スタッフが立ち去ったあと、今度こそ中嶋が秦に問い

  • 血と束縛と   第40話(25)

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  • 血と束縛と   第40話(24)

    「二神さんは、何か気になることがあるのですか? ……火曜日の夜のことで」 自分で口にして、なんとなく見当はついた。そして、外れてはいなかった。「――伊勢崎組長との食事会では、わたしは隊長の護衛は外れていました。副隊長という立場上、四六時中、隊長についていることは不可能で、今日も別々の場所でこうして仕事をこなしているわけですが……。火曜日は、隊長に休みを申しつけられて、動けませんでした」「ああ……、そういえば、姿が見えませんでしたね」 我ながらぎこちない台詞回しに、和彦の視線は泳ぎそうになる。二神は何かを察したように、ふっと口元を緩めた。「食事会の様子は、護衛についていた隊の者でもわかりません。佐伯先生と隊長と……伊勢崎組長の三人だけで楽しまれていたということですから。――そのあとのことも。せめて、食事会はどうだったか、一緒にいた佐伯先生からお聞きできないかと思ったんです」「御堂さんは、なんと?」「肉ばかり勧められて、佐伯先生が四苦八苦されていたとだけ。つまり、はぐらかされたわけです」「御堂さんも苦労されていましたよ。伊勢崎さんは、ずいぶん御堂さんの体調を気にされていて。……和やかな雰囲気で食事をしていたと思います。会話も弾んでいましたし。ぼくは、お二人の詳しい事情は知らないので、能天気にそう感じただけかもしれませんが」 慎重に言葉を選んで話す和彦に、二神はいきなり頭を下げた。驚いた和彦はソファから腰を浮かせる。「二神さんっ?」「申し訳ありません。佐伯先生に気を使わせてしまって。それに、つまらないことで引き止めてしまいました」 気にしないでくださいと、もごもごと応じた和彦だが、ただ、これだけは言わずにはいられなかった。「……御堂さんのこと、本当に大切にされているんですね。二神さんの気持ちも、しっかり十分伝わっていると思います。あくまで、ぼくの勘ですけど」 頭を上げた二神が穏やかな表情で頷いてくれたので、和彦はほっとする。

  • 血と束縛と   第40話(23)

     第一遊撃隊の詰め所前まで来たところで、なんとか平常心を取り戻し、自分の頬を軽く撫でる。ドアをノックすると、少し間を置いて、御堂の護衛として見かけたことのある男が顔を出した。御堂に会いたい旨を伝えると、数瞬、困惑の表情を見せたあと、一旦中に引っ込み、すぐに今度は二神が出てきた。「申し訳ありません、佐伯先生。隊長は今、総本部のほうに行ってまして。今日はもう、こちらには顔を出さないと思います」 本部を訪れて短時間の間に、二人の男から謝罪されてしまったと、和彦は心の中で苦笑する。「こちらこそ、申し訳ありませんでした。事前の約束もしていないのに、図々しいお願いをして」「図々しいなんて、とんでもない。隊長がここにいたら、喜んでお会いになっていましたよ。よろしければ、今から連絡を取って――」 それこそとんでもないと、和彦は首を横に振る。すると二神が、ふっと眼差しを和らげた。隙がなくて、どことなくとっつきにくい雰囲気が漂う二神だが、こうして相対してみると気さくな人柄をうかがわせる。実際、総和会の中では、数少ない話しやすい相手ではあるのだ。「御堂さんと少しお話ができればと思っただけなので、わざわざ連絡を取ってもらうほどのことではないんです」「伝言がありましたら、遠慮なくおっしゃってください。伝えておきますから」 せっかくなので、御堂への礼を託けようとした和彦だが、ここであることに気づく。火曜日の龍造との食事会のとき、御堂の護衛の中に二神の姿はなかった。そこに御堂の配慮めいたものを感じるのは、あてにならないオンナの勘か、考えすぎなのか。 ひとまず、自分から食事会の話題は出さないほうがいいと、和彦は判断した。「大丈夫です。本当に大した用事があるわけではなかったので」 ふと、奇妙な沈黙が二人の間を流れる。 二神は室内を振り返ったあと、慎重な口ぶりでこう切り出してきた。「佐伯先生、お時間があるなら、少し話せませんか」「ぼくと、ですか……?」 一体何を言われるのかと身構えつつも、微笑を浮かべる二神から厳しく叱責されるとも思えず、和彦は頷く。 応接室に通されソファに腰掛け

  • 血と束縛と   第11話(22)

     さすがの賢吾も、和彦の心を煩わせるものすべてを見通すことは不可能らしい。「……最初にぼくを狙って、あんなことをした人間が、どんな顔をして、そんなことを言うんだ」「俺はいい。俺は、許されるんだ」 さすがに図々しい発言だと思って和彦が顔を上げると、待っていたようなタイミングで唇を軽く吸われた。「先生を狙って自分のものにして――見事に、骨抜きにされたんだ。そんな哀れなヤクザを、愛情深い先生なら、たっぷり甘やかしてくれるだろ?」 本当に図々しいと思いながらも、和彦はつい笑みをこぼしてしまう。 自

    last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-27
  • 血と束縛と   第6話(22)

    「不愉快どころか、やけに楽しそうでしたよ、秦さん。いい店を先生に紹介しないと、と張り切ってもいましたし」「ならいいんだ。あの人、職業柄なのか知らないけど、よく気をつかってくれるから。ぼくみたいな人間につき合って、迷惑をかけても悪いしな」 和彦が、長嶺父子のオンナであることは、すでに知られている事実だ。いまさら千尋と甘い会話とキスを交わしていたからといって、他人に喜んで報告するような悪趣味なまねを、秦がする必要もない。 和彦が心配していたのは、そんなことではなく、純粋に今言った通りのことだった。 大きく息を吐き出しながら、中島がマシンをゆっく

    last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-21
  • 血と束縛と   第4話(27)

    「――先生」  呼ばれて、おずおずと振り返ると、そこに真剣な賢吾の顔がある。何か言われたわけでもないのに、和彦は小さく喘いでから賢吾の唇にそっと自分の唇を重ねた。すると、賢吾のもう片方の手に、和彦の柔らかな膨らみは包み込まれる。 「ひっ、あぁっ」  泡で滑る手に柔らかく揉みしだかれ、たまらず和彦は、ビクッ、ビクッと腰を震わせ、背をしならせる。下肢が、甘く溶けてしまいそうだった。 「あとでたっぷり、ここを揉んで悦ばせてやる。最近、弄られるのがよくなってきたみたいだからな。今は、洗うだけだ」  賢吾の的確に動く指は貪欲に、和彦の官能を刺激する

    last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-19
  • 血と束縛と   第11話(20)

     外から男二人のにぎやかな話し声が聞こえてくる状況で、求められるまま、やむをえず舌を絡め合い、唾液を交わす。引き出された舌を痛いほど吸われると、たまらず和彦は鷹津の肩にすがりついていた。 ますます鷹津の腕の力が強くなり、和彦の中で奇妙な変化が起こっていた。鷹津のことがどうしようもなく嫌いで、嫌悪しているのに、そんな男にねじ伏せられるように口づけを交わしていると、高揚感に襲われ、体の奥深くから強引に官能を引き出される。 官能に形を借りた、サソリの毒かもしれないと、ふとそんな考えが脳裏を過る。鷹津の毒を注入され、体も心も侵されていくのだ。 思わず身じろごう

    last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-27
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