****〈総本部〉という仰々しい響きに、まず和彦は圧倒されていた。そのうえ連れてこられたのが、オフィス街に建っている立派なビルだ。 後部座席のシートの上で身じろいだ和彦は、ウィンドーに顔を寄せる。きれいなオフィスビルには、目立つ大型看板や袖看板は一切出ておらず、ただビルの出入り口のところに、『土門興業』というプレートがあるだけだ。 本当にここが、と思わず和彦は振り返る。隣に座っているスーツ姿の千尋が、緊張感のない笑みを向けてきた。「立派だろ。総本部ビル」「……やっぱりここが、総和会の総本部なのか」「何、信じてなかったの、先生」 こう話している間にも、車はビルの裏手へと回る。「いや、でも、総和会という名前が出ていない……」「総和会の看板を出しているオフィスは、別の場所にあるんだ。そこはこじんまりとしたビルで、その横に、でっかい倉庫があってさ。総和会名義で購入したものは、ビール一缶だろうが、車だろうが、そこを経由する。物を動かすためにあるオフィスだ。もちろん、警察の手入れがあっても平気なよう、あくまでヤバくないものに限って。だからかなー。総和会の名前を堂々と表に出してるけど、かえってそっちのほうが、いかにも会社経営やってます、って雰囲気がある」 ビルの地下駐車場の入り口には、重々しいゲートが設けられていた。そのゲートを守っているのは制服を着た守衛ではあるが、何も知らない警備会社の人間とは思えない。なんといってもこのビルは、暴力団組織の総本部なのだ。「ここは、総和会そのものだ。十一の組で成り立っている総和会を動かすには、いくつもの役目が必要で、それぞれの組から派遣された人間が、さらに委員に選ばれて、委員会を運営する。学校みたいだろ? 影響力を及ぼせる委員会の数が多い組ほど、総和会じゃ圧倒的な発言力を得られる。一方の委員会じゃ組同士が手を結んだり、別の委員会では反目し合っていたりと、まあ、いろいろあるよ」 中嶋から、総和会について簡単な説明を受けたことはあるが、どういう形式で運営がなされているのか、いままで誰も和彦に教え
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